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君に届くは竜の声  作者: 月野安積
第一章 麓の村
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俺、赤竜に出会う

俺は一瞬、頭の中が真っ白になった。


持ち歩いていたのが悪かったのだろうか、何処かでぶつけた?

いやいや、ぶつけてはいない。危なそうな時はずっと抱えていた。


親父達の裸踊りのショックで?!

今夜も派手に盛り上がっていた。しかし、あの踊りにそんな破壊力があるとは思えない。


俺の鼻歌・・・。それが原因だとしたら悲しすぎる・・・。


ジジババに相談するか、いや、王族や兵士を呼ばれて大事になるのも困る。

すでに大事かも知れないが・・・。

何の根拠も無かったが、ふと俺はあそこに連れて行こうと思った。


そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。


ここら辺から俺の記憶は曖昧(あいまい)で。

これは後からジジババから聞いた話なんだが。


俺は物凄い勢いで自分の部屋から出て、暖炉の前にぺちゃんと座って。


「卵が・・・」

と言ったかと思うと、いきなり卵をペロペロ舐め出したそうだ。

何か、そういう妖怪いなかったか? 行灯の油舐めていたとか、どうとか・・・。

突然の異常行動だ。

覚えてない、本当に。


「ラギや、どうしたんだい」


ばあさんの問いかけに答えずに、ギラッと睨み付けて立ち上がり。

そのまま卵を抱えて外に飛び出て、竜体になって星空の中を神山の方向に向かって飛んで行ったそうな。


神山という場所は、俺のからだの中にある力と近いものに満ちている。

特に、あの初めて竜になって目覚めたあの場所は、その力が強い。


その時の俺は、もう自分がどうなっても構わなかったので。卵が孵るまであの場所に居続けるつもりだった。夜中だったが、迷わずに導かれるように飛んで、俺は縦穴の中に入る。

そして緑の苔の上にそっと卵を置いて、そのまま倒れるように眠ってしまった。

よくぞ卵を握り潰さなかったもんだ。


穴に戻ってきた辺りからは何となく覚えている。

竜の俺からしたら、小さな卵だったが腹の下が比較的柔らかかったので、少し寄りかかる感じで引っ付いて半日ほど過ごした。


そして、その時はやってきた。

卵が動いた。俺は何故かフラフラしていて、踏み潰しそうだったから、少し後ろに下がったが。

恐る恐る、首を伸ばして近づいた。

コンコンと卵の内側から必死で突く音がする。


「がんばれ、ほら、出ておいで・・・」


ヒビが入っているところが、比較的脆かったのか、そこからポロポロと卵の欠片が剥がれていった。

そいつはまだ目を閉じたままだったがチョコっと顔を出した・・・。


卵から人間生まれたらどうしようと、ちょっと考えないでも無かったのだが・・・。

竜だった。


む、紫?

紫竜?


俺は卵からコロンと転がりでたソイツをペロペロと舐めた。

小さいがしっかり竜だ、羽もあるし尻尾もある。

しかし、何と渋い色合いか。


俺、もっとこの時驚いてもよかったかと思うんだが、何だか気持ちは穏やかで。

ひっくり返って、手足をちょこちょこ動かすソイツに魅入られていた。

やがて疲れたのか、寝始めたソイツの(かたわ)らで、一緒に眠った。


俺が家を飛び出してから、実は一週間ほど経っていた。

穴の中は時間の感覚が無く、チビと俺は寝たり起きたりを繰り返した。


チビは確実に少しずつ大きくなっていて、生まれた時は小型犬位だったのが。

気がつけば大型犬位になっていた、竜の成長って一体どうなっているんだ?

特に何も食べて無いのだが、俺に引っ付いて寝るくらいで。

だんだん大きくなるうちに、行動範囲も広がって、水溜りくらいまではチョコチョコ行くようになっていた。


俺はと言うと、以前よりもヨロヨロになり、立って水を飲みに行くのが精一杯になってきた。

おかしい、確実に俺弱ってきている。でも腹は空かないんだよな、でもたまに喉が渇く。


もう何日経ったろう、この頃はもう寝ている時間の方が遥かに長い。

チビが俺の顔を覗いて、鼻の頭を舐めにきた。


『心配するな、大丈夫だから・・・』


もう声を出す元気も無かったから、チビの心の中に話かける事が多くなってきた。

分かってるかどうか、分からないけどな。





うつらうつらとしている中で、突然その声が俺の中に響いた。


『見つけた、こんなところに、居た。何ということ、力ほとんど残って無いじゃないの』

意識はあるが、目が開かない。誰?


『心話もかなり弱いが出来るようだね、私の名前はリンシェルン、君を探しに来たんだよ。オマケ付だけど許して』


うっすらだが王族の気配がする、俺は警戒した。

ソイツに向かって警告した。近づくなと。


「分かったよぅ、ここから動いたら、後で往復ビンタなんだね。了解、了解」


若い男の声がした。何やら無性ににイライラして気に入らない。

チビが俺の背中の方に、隠れたのが分かった。


『小さいのには、契約名を教えるなと今伝えた、どこまで分かっているか不安だが。小さいのを育てるために竜力を無意識に使ったか。本当なら我らが力を合わせて与えるべきものだった、君だけでよくぞここまでがんばったぞ』


『色々と遅くなってすまなかった、さぁ、竜力を少しだが分ける。動けるようになるだろうか』


額に何か暖かなものが流れ込んで、体が少し楽になったような気がした。


「リンちゃん、その仔、人型になれるなら、僕が抱っこするよ。おチビちゃんもつかまえて乗せて帰ろう・・・。あぁぁごめん、ごめんよ、そうだね。僕に裸の体を触られるのは辛いね、でも何とか耐えてもらえないかな」


何とも嫌な提案をしてきたぞ。そんなもん、気持ち悪くて耐えられるか。


「・・・大丈夫だ、飛べそうだ・・・」

えぇ、気合で飛びます。


『君・・・』「話には聞いてたけど・・・本当だったんだ」


俺は起き上がって、目を見開いた。


そこには真っ赤な鱗の俺より少し小さい竜と。

洞窟の壁ギリギリの所に、茶色い短い髪と、同じ色の瞳のプリシラに面影が似ている男が立っていた。













子竜の色は、銀、ピンク、白と悩みました・・・。

プリシラの兄登場、もう少しお付き合い下さい。

鳩は元気だろうか・・・。

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