第六話◆月光◆
もう会えないと言われ、親友を残し、一人森を後にしたジキル。別れた日の夢を見続けたジキルは、少しづつ自分の殻へと閉じこもっていく。そんな彼の元に訪れた人物とは……?
夢中で森を抜け、気が付けば家路についていた。
『……ぁ』
ジキルは思わず小さな声を漏らし、キョロキョロと辺りを見渡した。
此処までどうやって帰ってきたのだろう??
自分でも分からない位、上の空で……気付いたら自分の暮らす建物を見上げていた。
見るからに古く……ひびが入り、灰色に変色してしまっている壁。
しっかりとした木で出来ているであろう、色褪せた大きな扉……
建物は小さな柵に囲まれていて、古びた井戸の周りには小さな花が咲く。
山に囲まれた平原の、緩やかな小高い丘の上にある此処は、街から少し外れた場所に佇む小さな教会。
ここには、
両親を亡くしたり、事情があって預けられたりする子供達が、身を寄せるように暮らしている場所だ……
ジキルもここで育った。
勿論、両親の顔は知らない。
【ギィィィ】と
音のする重く古い扉を開くと、両端に並ぶ椅子の真ん中には、赤い絨毯が伸びる。
祭壇まで続くその先ではいつも、真っ白な女性の像が微笑んで迎えてくれる
はずなのに……
何でかな
今日は……
冷たい顔に見える。
たまらなくなったジキルは、像の前を足早に通り過ぎると、奥にある階段を駆け上がった。
幾つも扉が並ぶ廊下を、蒼冷めた月の灯りが照らす。
ジキルは奥にある部屋へ入ると、ベットに倒れ込んだ……
カーテンの無い大きな窓からは、満月が顔を見せる。
『……疲れた』
小さく呟き、そっと枕に顔を埋めた。
海底に沈むようなイメージで、深い眠りにつく。
その日からずっと……
誰とも会わずに部屋で一人過ごした。
毎日見る夢は苦痛だった。
“サヨナラ”が辛くて、辛くて……
誰にも会いたくなかった。
いつも一緒だった筈のヨシュアが、何日経っても訪ねて来ない事を心配に思ったが
アイツもきっと同じ気持ちなのだろう。
そう……思っていた。
あれから
(どれ位経ったのだろう)
ふと見上げれば、窓には真ん丸の月……
流れた周期は月の形が教えてくれた。
コンコン……
しん、とした部屋に響く遠慮がちなノックに、ジキルは顔を上げた。
『……誰』少し、緊張感のある声で問い掛ける。
「…………」
だが返事は無く、沈黙しか返ってこない。 こんな夜更けに部屋を訪ねる訪問者に、不信感よりもジキルは少し苛々した。
『……誰!?』
怪訝な顔で体を起こし、今度は少し強い口調で問い掛ける。
「…………」
『……クソッ』
いつまで経っても返事をしない訪問者に、
ジキルは痺れを切らし、勢いよく扉を開けた。
『頼むから今は一人に…』
そう言いかけて
瞳に映る訪問者の姿に、ジキルは言葉を飲んだ。
『……どうして』
そう言い終わるが早いか、
ウイユヴェールが、ジキルの胸へと飛び込む。
『……は!?』
ジキルは訳が分からず、固まったまま立ち尽くしていた。
ほんの数日前
「もう会えない」
と言ったのは彼女だ……
目の前に現れる筈が無い。 会いに来るなんて、有り得ないだろ……
ジキルは、
月明かりが照らす二つの影を、ただただ見つめた。
(どーなってんだ……)
抱き着かれ、回らない頭。
固まる体にそっと回される腕。
(勘弁……して)
理解不能な展開に、彼は青くなる。
今宵は満月……
何かが……起こる?
〜* 月光 *〜
またまたアドバイス有難うございます!!とても勉強になりました☆見直すと、確かに物足りない場面が多いです。そんな所も、これから少しづつ改善していきたいと思います。初めての作品&投稿の為か、最初にコケてしまい(シーン飛び飛び&説明不足)それを取り戻す為、結局物語が前後する形に…苦笑。