第三話◆背中◆
カキンッ…キィンッッ!!
『参りましたぁ!!』
強い力に弾かれた俺は、思わず尻もちをついた。
息を切らしたヨシュアが、汗を拭いながら、俺の前に座り込む。
「お前は、むやみに突っ込み過ぎ…」
そう言い、俺の額を小突く。
『…てぇッッ!!………へへ。やっぱり?』
と頭を押さえ、
悪戯っぽく笑う俺を、親友の手が引き上げる。
「………」
『―――…何!?』
そのシケた面。
「早く大人になれ…」
ヨシュアはそれだけ言うと、俺に背を向けスタスタ歩き出した。
『ちょっ…何だよ!?』
(わけわかんねーし)
俺は慌てて剣を拾うと、親友の後を追い掛けた。
「もたもたしてたら姫は貰うぞ…」
『!!!!』
思わず面喰らう俺。
そんな俺を見た親友は、
フッと笑うと、スタスタ歩いて行った。
『るせー…』
年上ぶりやがって…畜生。
今に見てろぉ…。
「どっちが先に帰るか競走な!!!!」
遠くでそう言うと、アイツは走り出した。
『うっわ…ズりぃ!!』
そう叫び、慌てて追い掛ける俺。
――いつもそうだ…。
親友はいつも俺の先を行く。
(悔しいなぁ…)
剣の腕だってアイツの方が上で…俺なんて、
一度も勝てなかった。
子供の頃から、いつも一緒だった俺達…。
毎日、森へと出掛けては、小さな木の枝で剣術の真似事をした。
ウイユヴェールはいつもソレを見ながら、傍らの花で首飾りを作る…。
この地方だけに咲き誇る、ブルーリーの花で…。
いつも一緒だった三人。
それも今では…、
――遠い思い出。