第二話◆決別◆後編
もう、見つめ合う事すら許されないのだろうか……
ジキルは思う。
だってこの大会は、婿選びの為開かれたモノだから。
つまり、姫の王子様は自分ではない。親友であるヨシュアなのだ。
その現実は
密かに惹かれ合ってきた彼女とジキルの、二人の想いを、世界を一瞬にして剥がしていく。
決して、口に出す事を許されない二人の想い。
これが運命か。
でもこれで良かったのかもしれない。
ヨシュアはずっと彼女を慕っていたから。
わざと負けた訳じゃない。
そんな事をすればきっと、笑い合うなんて出来なかっただろう。
ヨシュアの想いが勝った、それだけの事……
親友が幸せならばそれもいい。
この胸の痛みもいつか、想い出に変わるだろうか?
『どうか…幸せに』
届く筈も無いその言葉は、花向けに。
戻らない想い出は、追憶の海にそっと沈め……
彼は一人歩きだす
想い出を弔うように、笑顔を見せて
壊れないよう、心に鍵をかけて……
親友の幸せをそっと祈りながら、早く自分の心からアナタを連れ去ってと願う。
どうか早く……
ジキルはそっと視線を外し、愛しい人へと背を向けた。
必死に唇を噛み締めていた事を、決して悟られぬようにと――。
幸福のうちに……連れ去って。