第八話◆秘め事〜由弥〜前編◆
冬を迎え、藤乃とも順調な火邑。変わらぬ仲間。全てが順調だと思っていた。しかし、由弥だけは違っていた。誰にも打ち明けられぬ想いを、幼き頃から抱えていた……。それは火邑と由弥の出会いまで遡る。前編
出会いは秘密。
それは突然。
あの時からずっと貴方は、あたしだけの……
夜が怖かった。物心ついた時、それが誰にも打ち明けられぬ秘め事だと知った。
それでも、あたしは、あの部屋へと向かう……
「さぁ、お由雨おいで」
「……はい」
差し出された主の手を取るあたしの身体を、舌が這いずり回り、あたしの心は侵食されていく。
広いお屋敷に綿入れの布団。何一つ不便の無いこの空間を俯瞰に眺めては、全てを呪った。
両親を流行病で亡くし、孤児だったあたしに手を差し伸べてくれたのがこの人だった。
優しい人だと思った……
初めて触れられた時、戸惑い、それでも温かいと感じた。
まだ十二にも満たないあたしには、それがお妾奉公だなんて夢にも思わなかった。
愚かだ……
そんな事を思っているうちに、主はあたしの中で果てた。
あたしは汚れたままの身体に着物を羽織り、部屋を出る。
縁側では、溜め池に小さな波がたち、強い風に笹はざわめく。
夜空には大きな月が輝いて、明るくあたしを照らす。それを美しいだなんて思わない。
どんなに明るい光が照らしたって、あたしは汚れていて、その先に未来なんて無いのだから……
だったら
「お由雨、こっちへ……」
「…………」
今宵、あたしはこの人生に幕を降ろさねばならない。
だけど
「なんだコレは……」
右手を掴んだ主の、怒りで満ちた声があたしに投げられる
「まさか、お前は私を……」
「…………」
そう――
主があたしの首へと顔をうずめた瞬間、右手に忍ばせておいた小刀で、その喉を貫くつもりだった。
甘いのは承知。失敗した所であたしの計画に狂い等は微塵も無い。
あたしは静かに瞳を閉じた。
さぁ早く……
「貴様ぁ、恩を仇で返すかぁぁぁ!!!!」
あたしを殺せ。
ズシュッ――
次の瞬間、あたしの体を温かい物が汚した。
「――――!?」
目を開けた其処に転がるのは、変わり果てた主の体だった……
その向こう側では、ギラリと光るモノが血を滴らせている。
ゆっくりと見上げたその先には、朱い髪を靡かせ、自分の背丈程もある刀を握り締めた少年があたしを見下ろしていた。
「ひっ……赤……鬼」
それが
火邑との出会いだった――
出会いは突然
それはきっと、必然。