第一話◆視線◆前編
【カキンッ!!】
刃が激しくぶつかる音と共に、ジキルの手から剣が離れた。
静かにジキルの喉に剣を向けるのはヨシュア。
綺麗な金色の髪が揺れる少年。
彼の澄んだ青い瞳がジキルを見据え、静かに射ぬく…。
『…参った…』
ジキルの銀色の髪が風に靡き、淡い緑の瞳からは闘志が消えた。
【ワァァァ!!】
さっきまでの張り詰めた空気を切り裂くように、勝利を讃える民衆の歓声と、拍手が沸き起こる。
ヨシュアは座り込むジキルに、そっと手を差し延べた。
ジキルは俯き、その手を取り立ち上がると、膝をパンパンと両手で払い、ニカッと顔を上げ笑った。
死闘を終えた後だと言うのに、二人は子供のようにじゃれ合い、そして笑った。
“お互い強くなったな”と…。
その時だ。
ジキルはふと視線を感じた。
今の状況ならばそれは当然。
だが何故か、其れは他と違い、惹かれるような、懐かしいような……そんな感覚を彷彿とさせる。
不思議に思い、ジキルは視線の先を見上げた。
――それはまるで、“強い何か”に、導かれるような感覚だった。
民衆の舞いた花びらが風に乗り、ジキルの目の前を一瞬塞ぐ。
花弁が視界から消え落ちたその瞬間、ジキルは息を飲んだ……
視線の遥か遠くにある、姫の視線が……
“…ウイユ…ヴェール”
そっと
時間を
止めた……
まだまだ頑張ります!