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Truth Over  作者: 柊 天音
13/37

第二話◆戦慄◆

帰らない友、虚無感に変化して行く気持ち。そんなジキルに、彼女は本心を打ち明ける……。彼の背後に迫る影、それに気付く時、何かが大きく崩れ始める……

 あれから……

 ヨシュアが城を後にして、二週間が過ぎた

            

 気がつけば

子供達が消えるという不可解な出来事は、いつの間にか無くなっていた。

            

 街の人々は安堵し、いつもの日常を送る。

            

 俺は、いつまでも帰らない親友の身を案じたが

 それは俺だけのようで、いつしか誰もその事を口にしなくなっていた。

            

 城と街を繋ぐ小さな橋を渡り、花壇に腰掛ける

 高い建物が無い此処からは、街の様子が良く見える

            

 高く頑丈な城壁に囲まれた、この国……

 まるで、隔離された世界のよう。

            

 談笑し合う女

 走り回る子供達

            

 そんな風景を見て思う。            

(まるで他人事だな……)

            

 平凡な日常を送れているのは、アイツの働きがあっての事なのに

 そう思った。

            

 きっと俺達の存在等、

 この国の人々にとっては取るに足らないだろう。

  俺の事も皆忘れて行くのだろうか……

            

 冷たくなり始めた風が、俺の髪を撫でる

 何だか急に、虚無感を感じた。            

 もうすぐ俺は、ヨシュアと、それ率いる少部隊の捜索にあたる。

            

 恐くないと言えば嘘になる。

 全員が消えたのだから、何が起こるか分からない。

            

 それに……

            

            

            

            

「ねぇ、ジキルは信じる?」

            

 “??”

            

『……何をです?』

            

            

 今日も今日とて、いつもの中庭……

 城壁に囲まれたそこにあるのは、噴水と

 彼女が世話する小さな花達。

            

            

「んー、前世とか運命とか」

 相変わらず子供っぽいなぁと、思う。

            

『……そう言うのは分かりかねますね』

 俺の言葉に、彼女が顔をあげる。

「どうして?」

            

『俺は男ですから』

「……それ理由になってないよ?」

 ふっ、と笑う彼女。

            

『男なんてそんなものですよ』

            

「……変なのっ」

 そしてまた、花達に視線を戻す。

            

(……なんてね)

            

 本当の事なんて、言える訳がない。            

 もしも、運命とやらが存在するのなら

 貴女と、この時代……この国に生まれた事を、運命だと信じたい。

            

 こんな事を考えてるなんて、バカみたいだろ?

 だから言わない。

            

            

 ヒュウっと、俺達の間に小さな風が吹く

 やっぱり今日は、少し肌寒いや……

            

『今夜は冷えますね、そろそろ戻りましょうか』

            

「…………」

            

『姫??』

 お〜い

            

「…………」

            

『ウィユヴェール?』

 無視か?

            

「…………」

 はぁ。と、小さく俺は溜め息を吐く。

            

『……ワガママ娘。風邪ひくよ?』

 俺は腕を組んだ。

            

「……恐いの」

            

――――は??

            

「ヨシュアの……事」

 彼女は背を向け、しゃがみ込んだまま小さく呟いた。

            

 そういう事ね。

            

『あぁ、アイツなら大丈夫だよ。簡単に死んだりはしな……』

「ッそうじゃない……そうじゃないの」

 俺が言い終わる前に、彼女は、せきを切ったように声を出した。

            

『――――?』

            

 一瞬、あの時の事が頭をよぎる。

 殺意に満ちたヨシュアのあの瞳を――

            

 だが、

次に彼女が口にした言葉は、予想外な物だった。

            

「彼がこのまま帰らなければ……ジキルと……もっと一緒にいれるもの」

            

            

            

『な……に、言って』

 アイツの気持ちは、君だって知ってるだろ!?

            

「私、最低でしょう?

そんな風に思ってしまう自分が恐いの……」

            

 そう言って、彼女は泣きだしてしまった。

            

 あぁ、そうか。

            

 だからあの時、泣いてたんだな……

            

 呆然とする俺を、彼女の潤んだ瞳が見上げる。

            

 不謹慎にも、

このまま連れ去ろうか……そんな気持ちにすらさせる瞳。

            

ヤメロ

            

 親友を裏切りたくない。            

ヤメテ……クレ

            

            

その時だった

 俺の背後が栗立ったのは

            

【ズリッ……ズリッ】

            

『――――!!』

            

 何かが這う音がする。

 冷や汗が背中を伝い、ザワザワとした感覚に、心臓が大きく波打つ。

            

            

 何かが――――いる

            

            

 恐らく、

振り返った俺の顔は、恐怖に歪んでいただろう

            

            

 これが、

全ての……始まりだった。            

            

            

            

            

            

            

            

            

〜* 戦慄 *〜

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