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Truth Over  作者: 柊 天音
11/37

第二部◆前兆◆

あの大会から半年が過ぎ、彼等は互いに16、17の歳を迎えていた。環境も心も大きく変化した二人の耳に、ある報告が舞い込む。二人が分岐するきっかけとなった事件とは……?※前編

            

 レイデン地方の北に位置するバルバリシア城の更に北には、惑わしの森と呼ばれる場所がある。

            

            

 そこは

 朝の光が差し込むと、所狭しと肩を並べた何百の大木達が風に葉を揺らし

 鳥達は唄い、此処は明るくなる。

            

 森の中には小さな湖があり(雨が降ると湖が出来た)

 そこで動物達は喉を潤す。            

 朝になれば、森全体が太陽に照らされ白く輝いていた。

            

 だが……

            

            

「ねぇ、マール……もう帰ろうよ……」

 私は、さくさく先を行く幼馴染み、マールの袖を思わず掴んだ。

            

「もう降参なの?」

 マールが立ち止まり、私を見る。

「だって今……」

 何かが草の中で動いた気がしたんだもの。

            

 それに、頭の上をこんなに葉で覆われてちゃ、お月様も隠れてしまうわ。

 真っ暗で何も見えやしない……まるで洞窟の中に居るみたいな感じよ。

            

「キルティは弱虫だなぁ」

            

 マールは小さなランタンを手に持ちながら、振り返りケラケラと笑った。

            

 何よ……マールなんて、茶色の巻毛が揺れて、まるで女の子じゃない!!

 背の高さは、まぁ……私の頭一つ分はデカイけど。

            

まぁいいわ。

 こんな森、恐くも何ともないんだから!!

            

「ふ〜んだっっ」

 私はマールに、あかんべーをすると、森の中心に向かって歩いた。

            

 あぁ、でもやっぱりやめておけば良かった

 だって、森には近付いたらダメって、父様と母様にきつく言われてたのに……

            

 特に夜の森は……

            

 そう、私達は約束を破ったの。

            

 うぅん、これは冒険よ。だって私達もう12才よ?

 いつまでも子供じゃないわ。

                        

 それに、マールが一緒だもの。

 怖くなんかないわ。

            

 私はマールを追い越して、ずんずんと奥へ向かった。

            

 でも……何か変ね

私は大きな樹をランタンで照らした。

            

「!!」

            

 これは、私達が迷わないようにと付けたキズだわ。

 どうして……

            

「キルティ待ってよ、あんまり進むと帰れなくなるぞ」

 マールが、立ち止まり樹を見ている私の後ろに立つ。

            

            

「ねぇ……見て。

コレって私達が付けた印よ?どうしてこんな所にあるのかしら……」

            

「…………」

            

「ねぇ、マール。やっぱり帰りましょうか」

            

「…………」

            

「マール?」

            

「…………」

            

「マー……ル?」

                        

 マールが返事をしないから、私は恐くなって後ろを向いた。

            

            

            

「――――ひっ」

            

            

 ――グチュッ


 音を立て貫く其れは


 小さな体を赤く染める

            

「ぁ……」            

 伸ばした手は無力に宙を彷徨(さまよ)った。

           

 やっぱり……

 やめておけば

 よかったんだわ

            

 父様……母様……

 痛いよ

 とうさま……

 かあ……さま

 ごめん…なさい…

            

            

 ******           

          

            

『今回で三度目か……』

「はっ。」

 彼は眉間に皺を寄せ、横にいる兵士に呟いた。

            

 静まり返った城の大理石に、カッカッと足音を響かせ、彼は大広間に向かった。

            

 見上げる程の大きさの立派な扉の前に立ち、咳ばらいをすると、勢い良く扉を開けた。

            

 真っ赤な絨毯が伸びた、その部屋の隅には、甲冑やら、大きな花瓶が並ぶ。

            

「どうした?」

 その部屋に居た男が振り返る。

『また子供が消えた。もう三度目だ』

            

 その言葉に男の顔色が変わる。

            

「……そうか」

            

 男の名は――

『騎士団長……どうする?』

 ヨシュア。

            

「……ジキル、お前はどう思う?」

            

『俺かい?そうだな……

そろそろ俺達国が動かないと、民衆が騒ぎ立て

街が混乱しかねない』

            

「……もっともだ」

 ヨシュアは顔を上げた。

            

 俺達は、互いに顔を合わせ、大きく頷いた。

            

 あの森へ行こう……            

            

            

            

            

            

            

            

            

            

            

            

            

〜* 前兆 *〜

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