プロローグ◆
何よりも大切だった…。あの頃の三人はもう居ない。ねぇ、あの花冠を…今でも君は…覚えてる?
くすくす……。
森の中には子供達の楽しげな笑い声が響く。
その中で一人、少年は夢中で砂遊びをする。
傍らに寄り添うのは、その様子を嬉しそうに見つめる長い髪が美しい少女の姿。
少年の名はジキル、14歳。彼女の名はウィユベール、11歳であった。
こんな時、彼はいつも遊びに夢中で、何も見えない何も聞こえない性格。
だけど彼女は子供ながらに、其れをいつも愛おしく思い、見つめ続けてきた。
届かなくとも、伝わらなくとも。小さな頃から、ずっとずっと……
そんな少女の思いも、
遊びに夢中な彼にはきっと届かないのだけど。
だけど時々返事をしてくれるのが嬉しくて、
それが相槌なのだと分かっていても、彼女は愛おしいと思う。
「ジキル、あのね……」
と、顔を覗き込み服の袖を弱々しく引っ張る少女。
小さく呟くその言葉は、少し恥ずかしそうに、照れたように、彼女の声を震わせた。
『――どうしたの?』
そう返事はするものの、その瞳は砂を捕らえて離さない。
聞いているのか、
「あのね」
『……うん』
いないのか――
「おっきくなったら」
その言葉に、不意に目が合う二人。
そっと時が止まる……
「おっきくなったら私、私……あなたの……」
「??」
不意に言葉が止まったのを不思議に思い、辿った視線の先に、遠くから走り寄るヨシュアの姿が見えた。
そんな親友の姿に、ジキルは笑顔で手を振った。
『ウイユヴェール?』
押し黙る少女の顔を、不思議そうにジキルは覗き込んだ。
「あ、やっぱり……何でもない」
少女は、両の手を後ろでにし、小石を蹴ると笑顔を零した。
そう?とだけ応えた彼は、親友の元へ走り去ってしまう。
彼女はそれをただ見送るしか出来ず、小さなため息を漏らした。
喉まで出かかった言葉、小さな恋心を、そっとその胸に飲み込んで……
幼い頃ならば、誰しもが経験するであろう【初恋】
身を切り裂くような痛み等、大人も子供もそうは変わらない。
だが、それも今は、遠い遠い昔話のよう……
あの日々は――、
夢現つ(ゆめうつつ)のような幻?
なら私はこう願おう。
夢ならば、どうか覚めない夢を。
現つならば、どうか永久に……
始まりは少しシリアスですが、頑張ります。文章もまだまだ未熟ですが、宜しくお願いします!!