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親友の後押し

 そういえばなぁ、と菅谷にしては珍しく歯切れ悪く口を開く。


「お前が中西先輩と仲良くなってるって聞いたときは流石に罪悪感が募ったなぁー」

「罪悪感? 何で」

「そりゃ、中西先輩、軽いって噂があるからだろうよ。俺としては、伊藤のこと親友に思ってんだからさ。やっぱそんな噂ある人とは付き合ってほしくないじゃん?」

 相変わらず吐き出されるこっ恥ずかしい羞恥心を煽る爆弾に顔赤らめれば、あははと笑い声をあげた菅谷が「伊藤、もう俺に惚れんなよー」なんて阿呆みたいなことを言ってのける。

「……間違っても、もうあんたみたいな馬鹿で自己中な奴には惚れないと思う」

 私の言葉を華麗にスルーして見せた菅谷は立ち上がったかと思うと、フェンスに近づき、「でも中西先輩ってマジでモテるよなぁー」となんでもないことのように言い出す。

「何いきなり」

 脈絡のない言葉に怪訝な顔をする私を見ても菅谷は気にしない様子で笑顔のまま校庭の一か所を指差す。

「あー、あれあれ」

 菅谷にならって立ち上がり、指で示された校庭の端の方を見やれば、確かに先輩モテるなぁと思わずにはいられない光景が。

「あれ告られてんだろ」

「みたいだね……」

 初めて見る光景ではある。

 それでも、私だって出会いのときに面識があるわけでもないのにモテることで顔だけは知っていたほど。

それに、関われば尚更実感する。先輩が優しい人間だと。

だから、モテるというのは分かりきっていたことで――


「お前、冷たぇなー? 普通、焦ったりしない? 好きな奴が告られてんだぞ?」

 菅谷に呆れた様子でそう言われたところで、なんとも返しようがなかった。

「だって……さ、別に、どうしようもないし」

「おーおー、伊藤余裕だね。何? 自分が好かれてる自信でもある? それとも、相手が告白を受けるはずがないっていう根拠のない自信でも?」

 意地の悪いその質問に、思わず眉が寄る。

 単に、他人の告白を邪魔できないから「どうしようもない」と告げただけなのに。そんな含みのある言い方をされればなんとも気分は悪くなるというものだ。


(どうして、こんなことを言う奴が好きだったんだろ。少し前の私は。って……笑顔か)


「まぁ、その自信とっとと捨てたほうがいいかもな」

「はあ?」

「アレ、見てみれば?」

 菅谷が指すのが先輩のことだというのは分かっていたので、そちらを目を細めてじっと見つめる。そして不意に「ぁっ」と力のない声が漏れた。

「な? あの光景はどうみたって、OKもしてなければ断ってもないよな? ざっと見、返事は今度でって感じか」

 確かに、そう思わざるを得ない様子で。あまりの距離に顔まで詳しくは見れないけれど、それでも雰囲気から察せられるのは、告白した側からすれば都合よく期待してしまうようなモノだろう。

「伊藤さ、自分の気持ち自覚したんだろ? なら、伝えたほうがいいよ。じゃなきゃ、俺んときみたく後悔することになるぞ?」

 意地悪く余計なことを付け足す菅谷をねめつけながらも、実際のところその通りだと理解してる。


――私はもう、後悔したくない。

 だって、こんなにも、先輩のことが好きって分かったのだから。


「菅谷、サンキュね? うん、頑張って告白してみる」

「おう!! ダメだったら俺の胸貸してやるよ!!」

 そんな返答に「清水さんに怒られるよ」なんて返して、二人で笑った。

あと一話か二話ほどだと思います。

どうかおつきあいくださいませ<m(__)m>

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