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好きって気持ちは誰のモノ

 季節は残暑が厳しいながら夕方になれば途端に冷え込む九月。

「清水さん、大丈夫なの?」

「あぁ。っつーか心配されなくても俺ら順調だし。それより、他人のこと気にするより先に自分のことだろうが、伊藤」

 半ば無理やり連れてこられた屋上で、二人で校庭を見下ろしながら一切視線をまじ合わせることなく会話する。



「自分のこと、ねぇ?」

「ここ一週間ずっと不審な動きしてたから怪しくは思ってたんだよ。それに、お前の噂も聞いてたし。でも、さっきので確信した。――伊藤、中西先輩と関係あるんだな?」

 なんだか意味深なその言葉に、なんて返せばいいのかに困ってしまう。曖昧な態度で頷いてみれば、菅谷は「あの人のこと、好きなのか?」と続けた。

「好き……かぁ」

 好きだと分かっていれば、こんな風に悩んだりもしない。

 菅谷と先輩、どちらのことが好きだかが正確に自分でも判断できていないから、この状況にあるのだ。

「……分かんないんだよ。中西先輩のことが好きなのかどうか」

 自分の今の気持ちを、初めて素直に吐露したというのに、その返事は「はあぁぁっ!?」というなんともデリカシーのないものだった。

「いやいやいや、マジかよ?」

 流石に苛ついて、菅谷の方へと視線を向ければ、驚いたことに同じように私の方を向いていた相手と視線がかち合う。

「俺、今まで頭のいいお前を親友に持ってたこと誇りにしてたけどさ、そんな馬鹿だったとは」

 心底呆れたとでもいうように、大げさな動作で手を広げ、首を横に振って見せる菅谷に思わず「馬鹿に言われたくない」と言い返せばフッと菅谷らしくない笑い方……鼻で笑われる。

「俺、自分の好きな人くらいわかるし。李亜のことが好きだって宣言できるけど?」

「はぁっ!? ……馬鹿じゃないの? 私だって……っ」

「今、誰の顔が頭に浮かんだ?」

 私が好きだった歯を見せる愛嬌のある笑みじゃない。

 菅谷が浮かべたのは、自分の考えに絶対の自信があるときに浮かべる不敵な笑み――


――私は、馬鹿だ。

揺れていたと思っていたけれど、そんなことはなかった。本当は、いつの間にか菅谷と清水さんの関係が気にならなくなるほど。私は先輩のことを……。

 『私だって……』その言葉の後に続きそうだったのは、「中西先輩が好きだって言えるし」というもの。頭に浮かんでいた顔だって、優しく私を見守ってくれていた先輩の大人で柔らかい笑み。


 自覚した瞬間、自分の今までの空回りっぷりに呆れて足の力が抜けてしまった。

「あーもう、私バカみたいじゃん」

「だから俺言ったじゃん。馬鹿って。だって、相手が好きかどうかなんて実はすげー単純なことだろ」

 同じようにしゃがんで私と同じ目線になった菅谷はニヒヒと嫌な笑い方をする。

 呑気な笑い方をする菅谷に、先輩への想いを自覚させてくれたことに対する感謝は浮かぶも、同時にムカツク。困らせたいという意地悪な心が働いた。


「私、先輩のこと好きになる前はアンタのことずっと好きだったんだよ」

 もうなんとも思っていないからこそ、自分の気持ちを清算するのにも都合がよく、口から洩れた言葉。

 驚いて叫ぶだろうと予期していた菅谷の反応。

だけど、予想を裏切って、頭の後ろで腕を組んだ菅谷は至極楽しそうな笑みで

「うん、知ってた」

 と宣った。


「――は?」


 逆に動揺させられているとか、そんなことはどうでもよかった。十分な沈黙の後に私の口から洩れた声はすごく間抜けなもので、そんな私を菅谷は面白そうに見物してる。

「いやいや、ちょっと待ってよ。は? 知ってた? 私が、あんたのことを好きだったのを……?」

「おう」

 勿論、私はそんな元気な返事など求めていなかったのだが、構わずにいつもの笑顔を浮かべた菅谷は私にとっては衝撃的でしかない言葉を続けた。

「お前が俺のこと好きだったのは気づいてたけど、俺はお前のこと親友としか思えなかったからな。だから、汚ぇけどさ……お前が告白してくるまでは気づかないふりしとこうって思ってたんだよ」

 

 告白された内容に怒る気もしなかった。ただただ、呆れて体中から力が抜ける。

「何、それ……ははっ、じゃああんたが菅谷さんと付き合い始めてから黙って見守るのに費やしてた私って……」

「悪かったな。酷なことしてる自覚はあったんだけどさ、俺も居心地良くてお前の隣離れられなかったんだよ」

 ごめんなと続ける菅谷に黙って首を振る。

 もう、今さらだった。だって、私はもう菅谷を恋愛対象として見ていないんだし。

「まぁ……菅谷のおかげで中西先輩と知り合えたわけだしね」

 物事を楽観的に考えることにして、笑みを浮かべれば一瞬キョトンとした表情を見せた菅谷も「おう!」と元気に応じた。

お久しぶりで申し訳ないです!!

菅谷の真実w空之は、脇役に一癖も二癖も作るのが好きです。

結局主人公が一番ふつ(ry


今回の話は長くなってしまいましたので、微妙なところで切ってしまいました。

ですので、また明日にでも新しいのをupします。

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