第9話:2分後の閃光と最先端の浪費
『エネルギー充填完了しました』
『カドゥケウス、充填率100%を確認。……サハル、ようやく君の出番だよ』
アニソンのサビが終わった頃、音量が落とされて静けさが戻った地下に、ジヴの無機質な声が響く。俺と愁さんの足元には、30匹近いネズミの残骸(塵)と魔石が転がっていた。
「……はぁ、はぁ。……もう、ほとんど片付いたが!?」
早春が革靴で地面を踏みしめ、金属の円筒を掲げた。先端からバチバチと青白い放電が走り、空気の臭いが変わる。
そこへ様子を窺っていた一匹、大ネズミにしては一際小さな個体が岩陰から飛び出した。早春がカドゥケウスを振り下ろす。
「消えろッ!」
ドォォォォン!!
凄まじい爆縮音と共に、雷光が視界を真っ白に染めた。直撃を受けたネズミは、断末魔を上げる暇もなく分子レベルで蒸発し、背後の岩壁にクッキリと焦げ跡が刻まれる。
『目標、魔石ごと消滅。……推定消費電力、一般家庭の3日分。1撃あたりの税金投入額は、魔石10個分に相当するね。まさに「富の暴力」、札束を警棒の形に圧縮して叩いた方が安上がりだよ』
「……仕留めたぞ。国が認めた最先端技術の勝利だ!」
熱を帯びて焦げ臭い警棒を冷ましつつ、ドヤ顔でこちらを振り向く早春。その顔は煤で汚れ、高級スーツの袖と裾はネズミの爪を受けて糸が引き連れている。
「さすが、いろんな意味で庶民には扱えない代物」
「まだ普及段階ではないからな。改良されれば……いや、まずは報告書だ。帰ったら使用記録と安全確認書を提出しなければ……」
地味で面倒な仕事の話を嬉々として語りだした。魔石拾いを終えた俺は、ダンジョン出入口の端に垂らしている縄梯子を引き降ろす。
そこから地下1階へ上がった早春は、ダンジョン内の泥を落とさないまま階段を駆け上がり、地上の光が降り注ぐ場所へ飛び出して行った。泥だらけの革靴には噛み跡が残り、スーツも泥汚れとホツレでボロボロ。エリートの面影はどこにもない。
愁さんが服の泥をはたき落とす横で、俺はスマホに向けて指示を出す。
「ジヴ、今回の総収益は?」
『……収集できた魔石の時価総額13,500円。100均スリッパを含めた消耗品の減価償却と仲介料を引いて、純利益9,122円だよ。……床板修繕費とクリーニング代の見積もりも出そうか?』
「いらん。それより、生ハムの出来具合が気になる。ここを片付けなきゃ次の仕込みができない。パストラミも食べ収めになるぞ」
玄関からは春の陽気が差し込んでいた。
次回:パストラミ丼がエリート官僚の鼻腔を襲い、空っぽの胃袋にダイレクトアタックをぶちかます。
投稿時間は、本日19時50分です。
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