第5話:ダンジョンと多目的施設
『緊急。門前に「税金泥棒(公務員)」を検知。即座の隠蔽工作を推奨するよ』
窓から外を覗くと、古泉荘の朽ちかけたブロック塀の門を前に、濃紺スーツの男が立っていた。
「あ〜、マジだ。玲那さんに連絡」
『了解』
俺は溜め息を吐きながら玄関へ向かった。
「県庁ダンジョン対策課のサハルだ。立ち入り調査をさせてもらう。拒否する場合、過料の対象となる」
「大家さんが対応します。上がってください」
タクティカルスーツの胸元に、『早春 敬介』というネームプレートが光っている。案内した居間では、玲那さんがお茶を淹れていた。
「いらっしゃい。お役所の方がこんなボロ屋に何の用かしら?」
「接待は受けない。私は法に……」
「あら、ただの粗茶ですのに」
頑なな態度を崩さない役人にも、玲那さんは余裕の笑顔だ。早春は咳払いをした。
「率直に言います。探査機に反応が出ている。住民には立ち退きを……」
「でも、古泉荘は若者のためのシェアハウスなの。この地下にあるのは、ただの『多目的スペース』よ。『地域貢献型』でやってきているし……」
「これは地域住民の安全を守るための調査です」
「立退き命令が下れば、私も住民も路頭に迷うことになるのでしょう? 保障していただけるのかしら? 税金負担が増え続ければ、庶民の命を脅かすのはダンジョンなんかじゃなくて……」
玲那さんが「のらりくらり」と舞いながら毒の鱗粉を撒き散らすの確認し、俺は裏階段から地下へ降りた。
ダンジョンの大穴の前には、「キッチン用アルミホイル」を巻き付けた自撮り棒を振り回す光紗がいた。他にも、アルミホイルをパラボラ状に成形し、雑多な素材で組み上げた世にも奇妙な「自作6G中継器」。
「地下でも動画アップロード爆速じゃんね! 見た目アレだけど、中継器マジ神だて〜!」
「上に、早春さんが来てる。この意味は分かるよな?」
陰気な場に似合わず、陽だまりのような笑顔の自称チューバーアイドルが、その笑みを硬直させた。パニックで騒ぎ出す前に地上へ追いやり、中継器を片付けて、ジヴに次の指示を仰ぐ。
虫除け用ミント水が薄く香る空間に消臭剤を撒き散らし、ダンジョン独特の獣臭を徹底的に除去する。さらに、一年中気温が安定している地下を利用した「魔物肉の熟成生ハム」は保冷バッグに収容。
「ジヴ、他には?」
『隠蔽完了。……でも、シュウがゴミ捨てに動き出したね。廊下の軋み音がいつもより大きいよ』
「シュウさんなら問題ない。危なそうな板は避けてるって言ってたから」
次回:フラグ回収、古泉荘崩壊の始まり。
投稿時間は、本日19時50分です。
続きを読んでやっても良いぞと思ったら、
ブックマークと★★★★★をお願いします!
何卒お願い申し上げます。




