第4話:水も油汚れも弾く最強の盾
「シュウさん、お疲れ様でした。ゆっくり休んでください」
「前は3時帰宅、6時出勤が普通だったから平気だ。4時間も寝れば」
「あ〜〜っ! それ、完全にブラックなやつじゃんね。ちゃんと寝なきゃダメだて〜」
『今回はミシャのせいだけどね』
古泉荘に帰り着いたのは真っ昼間だった。キッチンから、こんがり焼けた肉と根野菜の匂いが漂ってくる。
由良がエプロン代わりに愛用している「撥水ギャザージャンスカ」は、椅子の背にかけられていた。
「ただいま〜〜。ユラちゃん、もう出かけちゃったけ?」
『ユラは、誰かと違って真面目な現役女子高生だからね。学業、バイト、食材の買い出しに大忙しさ」
「そっかぁ……。ねぇねぇ、これ見てって! ネットで見た『ハートキノコの傘』! 食べれるんだってば〜!」
光紗が差し出したキノコを一瞥した横で、ジヴが警告を発する。
『よくあるネットのデマだね。食中毒の入院費は1泊3万5千円、ビュッフェは付いてこないよ。そんなキノコは放って置いて、シュウが持ち帰った魔獣肉を食べよう』
「そうだ。朝から何も食べてないんだった」
「アタシもお腹へったて〜〜」
噂の魔獣肉は表面に焼き目をつけた後で、野菜とともに大鍋に移され、グツグツと煮込まれているようだ。
「ハヤシかな? ちょっと味見……」
『つまみ食いしたら、また怒られるよ』
「ユラ特性弁当をいただくとしよう」
その日の夜、テーブルを囲む5人の前に、スパイスの香りが漂う熱々の料理が並べられていた。5人目は、匂いに誘われて顔を出した「古泉荘」の大家さんだ。
「いただきま〜す!」
光紗が真っ先に肉を頬張り、その美味しさに悶絶する。愁さんは黙々と高タンパクな魔獣肉を摂取し、明日からの活力と筋肉の修復に充てた。
隣りに座った由良は一同の反応を眺め、満足そうに微笑む。
「お兄ちゃん、お疲れ様」
「ユラも美味しい料理をありがとう。……さて、ジヴ。食後のデザートに、コスパ最優先ミントアイスの製造プランを検索してくれ」
『了解。でも、まずはクモ糸を茹でるのに使った100均フライパンを洗おうか? 放置するとテフロンが死ぬよ』
「分かった。洗ってくる間に、クモ糸の活用方法を検索しておいて」
テレビの中では、「1kg2万円の黒毛和牛」に芸能人たちが歓声を上げ、高級肉への渇望と並々ならぬ意気込みを語っている。
そんなクイズ番組から聞こえる悲痛な叫びと嘆き、司会者と観客の笑い声を他所に、古泉荘の夜は静かに更けていった。
『本日の支出: フライパンの減価償却(100円)、100均ライト電池代(30円)、ミント水(2円)、靴底の摩耗(2円)、魔石売却の仲介料(725円)。
収入: 魔石×7(2450円)、ミシャの命、丈夫なクモ糸(約0.1g300円相当)。
利益: +1591円(+クモ糸の在庫) +ミシャの実家から届いた新潟産コシヒカリ +胃袋の満足度』
次回:県庁ダンジョン対策課・早春、現る。
「古泉荘」解体の危機!?
投稿時間は、明日6時50分です。
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いよいよ新章突入、新キャラ登場です。次からが本番ですよ。
正直、ランキングの壁が厚すぎて心は折れてますが、需要があると分かれば10話までは続けていきますので、お付き合いくださいませ。




