第21話:「イージス」とコウモリ
第21話:「イージス」とアルミブランケット
「君ら、本当に大丈夫? 引き返すなら今のうちだよ?」
先行させたドローンから送られてくるマップデータをタブレットで確認した神代が、俺と光紗を振り返った。
今回は、プロ探索者を支援するスポンサー企業のドローンから、事前に必要な情報を得ている。当然、それ用の装備は整えてから来た。
「……何これ。真っ暗で、お化け屋敷みたいな雰囲気あるて〜」
強力ライトで暗闇を払う神代の取り巻きを見て、100均の懐中電灯をポケットに戻した光紗が不安げに周囲を見回す。俺も首のライトを切った。
『警告。前方に百を超える大群を検知したよ』
モールの未登録ダンジョンの深部は、巨大な空調ダクトがうねる「機械の墓場」だった。冷え切った空気と、どこからか不気味な「呼吸音」が聞こえる。
「諸君、ここから先は『サーマル・バット』の領域だ。ライトを消してサーマルゴーグルを装着しろ」
ゴツくて重そうなゴーグルを下ろしながら神代が指示を飛ばし、取り巻きが即座に従った。
『解析完了。多機能ゴーグル、定価15万円だね。個体カミシロが、視界を赤外線モードに切り替えたよ』
俺もダイソーで集めた材料を改造した計1,100円の暗視補助グラスを装着する。
「奴らは熱を検知した瞬間、襲いかかってくる。……だが、俺たちの目的は多くの魔石を取って帰ることじゃない」
そうだ。今回の目的はダンジョンの駆除。そのためにダンジョンボスを討伐して核を破壊するか、持ち出す必要がある。
「俺のスーツはアクティブ冷却で排熱を極限まで抑えるが、そっち2人はどうなんだ?」
神代が胸元のスイッチを入れると、微かな駆動音を上げた。おそらく小型ファンの音だろう。
『解析完了。最新の「アクティブ・サーマル・コントロール」を搭載した30万円の特注品だね』
「ジヴ、『サーマル・バット』の弱点・攻略法を検索。ミミクソが詰まっていると嬉しい」
『了解』
俺が選んだのは、ワークマンの看板商品「AEGIS防水防寒ジャケット(4,900円)」だ。注目すべきは内側の「ブラックアルミ」。シルバーアルミの1.5倍の保温性を誇りつつ、断熱効果も高い。
「ええっ!? リエちゃん、画面越しだと真っ黒で幽霊みたいに見えるて〜!」
光紗がスマホ(暗視モード)を使って、俺と神代を交互に見比べる。神代に対しては、「ほわ〜〜」と空気を吐いた。
「ミシャに着てくるよう頼んだ『防風ボアポンチョ(2,900円)』も、裏地のアルミが魔法瓶みたいに体温を閉じ込める設計だ」
「うぉっ!? マジじゃんね! でも、顔と手は隠しといたら良さげ?」
「そうしてくれ」
やり取りを見ていた神代が、呆れ顔で仕切る。
「では、進もう。ターゲットは30メートル先の『コア』だ。……足音を立てないように」
神代の高級登山靴が「ジャカッ」と微かに音を立てるのに対し、俺の「超軽量安全靴(2,900円)」は靴底のゴムが音を吸収してくれる。
頼む。冗談だと言って、俺を安心させてくれ。
「ミシャ、これ被って隠れてろ」
俺はバックパックから「アルミ非常用ブランケット(110円)」を取り出し、ミシャに託した。
「えっ、何これ。シャカシャカするて〜! でも、リエちゃんは?」
公認の「プロ」たちが、熱源になる強力ライトを足元に置き、先頭を行く。天井を埋め尽す生物の気配に、ざわめきが広がった。
『警告。「サーマル・バット」が、カミシロの背中から漏れる排熱を「ご馳走」と認識したよ』
次回:総攻撃をデコイで凌ぎ、全力ダッシュ。
投稿時間は、本日19時50分です。




