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ワークマン無双・神コスパ装備で未登録ダンジョン攻略〜熟成生ハムを密造していたら、エリート公務員が陥落した〜  作者: 荒屋朔市
遠征「テーマパークのダンジョン」

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13/29

第13話:聖地巡礼と異文化交流

 

「久世君。本当に、ここでいいのか?」

「そっちが言い出したんじゃないですか。県庁御用達の装備では目立つから、適当なものを見繕ってくれって」

 

 国道沿いに建つ黄色い看板、行きつけの店『ワークマン』の前で、俺は溜め息混じりに不満を漏らした。

 店内を見て回る早春サハルは、まるで異世界に足を踏み入れたかのような足取りだ。不安と好奇心が混ざった顔で、機能性ウェアの棚を見渡している。


「装備選びは生存に直結する。そう考えてください。なぁ、ジヴも言ってやれ」

『そうだよ。舗装が施され、監視カメラと巡回スタッフがいるとは言え、生きている本物のダンジョンだからね』

「だが、この『1,900円』という値札。……イカサマ商品ではないのか?」

『サハル、君の常識がバグっているだけだよ。ここでは2,000円出せば、君のプライドよりも頑丈な防寒着が、お釣りと共に手に入るんだ』

 

 俺は早春サハルに、「FieldCoreフィールドコア」と『イージス』を勧めて、適当な手袋と安全靴を押し付けた。

 最終的に、早春サハルは『AERO STRETCHエアロストレッチ ULTIMATEアルティメット(4,900円)』、『FieldCoreフィールドコア4D防風ウォームパンツ(3,900円)』、「アスレシューズ」を抱え、レジに向かう。

 その間、合流予定だったシュウさんからのメッセージに気づいて、チェックした。


『シュウ:バイト先のシフトに穴が開いて、店長に泣きつかれた。今日は行けない』

「……断れない人だからな。何度そのお人好しに助けられたことか」



 午後、絶望的にワークマンが似合わないオッサンと向かった先は、企業運営のテーマパーク内にある人気アトラクション『ドリーム・ダンジョン』。子連れやカップルが「安全なスリル」を買いに来る場所だ。

 俺は早くも郷愁の念に駆られていた。


 ――ダンジョン内、第2エリア

 

 ファンシーな装飾が施された石造りの通路。華やかなBGMの裏で、湿気った腐敗臭が漂っていた。


 ワークマン装備の早春サハルは、「チャージ2分の警棒」を鞄に収めたまま周囲を警戒する。


久世(クゼ)君。……酷く、喉が渇く。空調が故障しているのではないか?」

「メンテ代、ケチってるんですかね? ……あそこに、ダンジョン内とは思えない看板がありますよ」


 ダンジョン内の出張店舗限定デザインの看板を下げていたのは、有名チェーンのコンビニ。ここで松明型LEDライト、ポーションなど、冒険気分を盛り上げるグッズが買えるという情報はリサーチ済みだ。


 しかし、店内は目を疑うような地獄だった。まさに、企業が来場者から金を毟り取るために設置した『トラップ』だ。


「……ポーション1本、5,000円!? ガラス瓶の中身は、水と甘味料、着色料、香料なのに?」

『それは、ガラス瓶が限定グッズ扱いだからだね』

「ペットボトルの水、500円。テーマパーク価格にしても、これは……」


 ほとんどの商品が売り切れ、レジでは「過労死寸前」といった風貌の店員が一人で対応している。セルフレジが導入されていない理由は、限定デザイン看板と同様、演出の一環だろう。


 俺はイートインスペースに腰掛けて、バックパックから取り出したボトルから天然水を飲み、プロテインバーを噛じる。合わせても約200円。「ごみ拾い」を目前にした必要な燃料補給だ。

 雇い主の分は、知ったこっちゃない。


「……ジヴ、このコンビニの状況は?」

『極限のワンオペだね。バックヤードは廃棄弁当とお握りと菓子パンの山。……不穏な振動を検知したよ。店舗の裏側で、「安全隔壁」が機能不全を起こしている……』


 その言葉が終わるより早く、店内の照明が激しく明滅した。コンビニの外から、演出用ではない物音が響き渡る。



次回:テーマパークの「闇」が襲いかかる。


投稿時間は、本日19時50分です。

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