表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワークマン無双・神コスパ装備で未登録ダンジョン攻略〜熟成生ハムを密造していたら、エリート公務員が陥落した〜  作者: 荒屋朔市
「古泉荘」お取り潰しの危機!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/29

第10話:魔獣肉のパストラミ丼


「……信じられん。獣どもの鼻先に、原木を置いてキノコを栽培し、肉を吊るしているというのか?」


 俺は早春サハルを連れ、片付ける傍らダンジョン内を案内した。それもこれも、早春サハル玲那レナさんによる説明では納得せず、実物を見せろと言って譲らなかったからだ。


「レナさんの言う『多目的スペース』の有効活用ですよ。ジヴ、熟成庫の温度と湿度、衛生状態は?」

『完璧だよ。リエが100均と薬局をハシゴして買い集めたキッチンペーパーとアルコールで、黒カビを徹底除菌したからね。有益な白カビが極上の熟成生ハムに変えているよ』


 古泉荘の地下に開いた縦穴(ダンジョン)。その極浅い層には、キノコと生ハムを育てる空間があり、ミントの葉を浮かべた水が入ったバケツをいくつか置いてある。湿度管理のためでもあり、虫除けとダンジョン特有の獣臭を中和したいがためでもある。


「……これは、ハーブか?」

「ええ。ミントです。ローズマリーとタイムの寄せ植えもありますよ。今は日に当ててます。虫除けになるかと思って」

勿論もちろん、ミントは別鉢だよ。床下を突き破ると噂の「緑の悪魔」だからね。床上から突き破られちゃったことは誤算だったよ』


 熟成庫はワークマンで購入した「金属メッシュ」と捕獲カゴで囲われている。大ネズミの侵入を物理的にシャットアウトする低コストな要塞だ。

 匂いに誘われた大ネズミを捕獲できれば、魔石が手に入って一石二鳥という鬼コスパ。さすがに、ネズミ肉を食べようとは思わないが……。


「まだ信じられない。……行政が数億円かけて作る管理施設とは、見た目からして違い過ぎる。こんなDIYで管理できるものなのか? 獣が外に出てくることは?」

「ダンジョン内は定期的に掃除してますし、生ハムが揺れたら警報が鳴るんで」

「そうか。餌が目前にあれば、外に出ようとしないわけだ」


 ようやく納得したのか、早春サハルが乾いた声で笑った。そこへ階段を下りて来た「スカジャン」姿の由良ユラが、声をかけてきた。


「お兄ちゃん、夕食の時間だよ。早春サハルさんも召し上がって行ってください。こんな時間ですしって、玲那さんが……」



 共有キッチンの隣、共有ダイニングルームに移動すると、そこはスパイスの香りが充満していた。業スーで調達したスパイスに、自家栽培のハーブを配合した「パストラミ液」だ。


 テーブルに並べられたどんぶりには、端に焦げ目を付けた香ばしい生ハムが、炊きたて白ご飯の上に敷き詰められ、彩り豊かなパプリカたっぷりのパストラミソースがトッピングされている。


 大はしゃぎでスマホのカメラを丼に向けるインプレ狂人の横で、出勤前のシュウさんが黙々と肉を頬張っていた。

 スパイスの誘惑が鼻腔から空腹に直撃してるところへ、見栄えにもこだわった究極の一膳。脇には、キノコの味噌汁。

 葛藤しながらも抗いきれず、早春サハルは勧められるがまま割り箸を手に取った。一切れの肉を口に運ぶ。


「何だ!? この濃厚な旨味。スパイスと肉が絶妙なバランスで……」

『解説。魔獣肉の熟成生ハムで作った週1限定メニュー、特性パストラミ丼、一食あたりの原価は約80円だよ』

「肉なんて久しく食べなかったが、これは……」

『ようこそ我が家へ。胃袋を掴まれ、古泉荘なくして生きられなくなった気分はどうだい?』


 早春サハルは丼を掲げ、無心に掻き込んだ。

 泥と爪で高級スーツを台無しにされた男が、太陽光発電の安いライトに照らされ、欲望の赴くまま80円の丼を平らげる。


「……美味い。空腹のせいだとしても美味すぎる」


 パストラミ丼が、国家権力を屈服させた瞬間だった。



次回:週末の朝5時に開催される限界BBQ。


投稿時間は、明日6時50分です。


 続きを読んでやっても良いと思ったら、

 ブックマークと下の★★★★★をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ