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私小説

勝重列伝

作者: ヒロ品!
掲載日:2026/02/22

勝重は筆者の父である。

ここに勝手にいろいろ或る事無いことを書くに至った理由は二つある。

父の人生が破天荒すぎる事と私10数年前に父が書いたであろう私小説をデータを紛失してしまったからである。

そもそも壊れたPCにそのまま残して放置している方が悪いが私がPCを借りた時にバッテリーが完全に放電した為に完全に消えたらしい。

そんな事はさて置き父の誕生からだ。


昭和22年の春、青森は八戸の片田舎で勝重は誕生した。

ここは推測と一族の外見から予想しての見たてだが激かわのプリティベィビーだったと思う。

(自分の父親の赤子時代をこの様に表現する日が来るとはと感慨深い)

勝重の家は江戸時代に伊達藩の大名が幕府に隠れてコッソリ密輸した軍馬と一緒に日本に来たスペイン人で後に馬廻り役やら首切り役人をするなどの出世をした一族らしい。

そのせいか村で商店を営んでおりソコソコ大きい土地に建て増しし続けたような大きな家にすんでいた。

だが勝重の父は上に兄弟がいる為に家での立場はあまり高くはなかった上に母親は酷く他の一族にイビられていた。

(個人的には性格が悪かったのと言動がキツくて嫌われただけだと思う。私の祖母は九州の女だったのに気が強かったのである。)

そんな環境を跳ねのける様に勝重はスクスク育ち持ち前のバイタリティーと外見をフルに発揮し他の一族と近隣の買い物に来る村人を懐柔して行ったのである。

幼稚園くらいの年齢になると勝重は他の兄弟を引率して勝手に学校に通う様になったと本人が語っていた気がする。

小学校に上がる頃には下に妹と弟が出来る。

そうしてこの頃に事件が起きる。

商店の帳簿が合わない事が発覚したのだ。つまり誰かがお金を着服したのだ。

金額までは分からないが起きた事実だけ思うと結構な金額だったのだとは思う。

その犯人を一族は勝重の母と決めつけて責め立てたのである。


あくまでも私の邪推ではあるが、お金が消えた事はそこまで重要ではなかったのでは無いかと思う。二人を商店から追い出したい。そう言う要因の為に犯人に仕立てられたのだと思う。

これに腹を立てた勝重の父は家を出奔し北海道は札幌の苗穂町へ引っ越しをした。

当時はまだ戦争後の復興の時代であるが勝重の父には大工としての腕もあり大工として生計を立てる為に札幌へ移住した。


そんな折に勝重は研ぎ師に出会った。

勝重は研ぎ師と仲良くなり、よく家にお邪魔しては研ぎの仕事を見学する様になった。次第に研ぎの仕事を見て覚え、自然と研ぎ師の必要な道具を準備する様になって行ったらしい。

研ぎ師は寡黙な男で研ぐ間に特に話はしない。

ただひたすらに刃先の角度と石の音・手の感触に集中する。

おそらく勝重はその独特な空間が好きだったのだと思う。

あと研ぎ師の奥さんが用意してくれるお茶とお茶菓子も同様だ。

そこの夫婦には子供は生まれなかった為、のちに勝重を跡継ぎに欲しいというほど子供ながらに筋が良かったらしい。

しかし勝重の両親はそれをよく思わなかった為に次第に疎遠になって行った。

このことは勝重と両親との確執に繋がる要因の一つだったと思う。


札幌の中島公園という所で毎年6月にお祭りが開催されている。これは今でも続く祭りで大抵の札幌市民なら行った事があるとは思う。

学生になった勝重はこのお祭りでワニを購入した。

人伝にどうにかして手に入れた水槽にワニを入れて飼育し毎日せっせとお世話をし空手も習いそんなに勉強もしないのに満点が多かったらしい。

本人曰く答案用紙を見ると答えが見えるらしい。

うらやましい限りである。

後に小説でこの様な能力を持つ人物に出会ったがそれは別の話である。


ある日ついに勝重は両親と喧嘩をして家出をしてしまう。

とりあえず友人の家に行き独り立ちすることにした勝重は引っ越しの際に少ない荷物にバカでかい水槽に入った大きくなったワニと共に友人宅へ引っ越す事となった。


勝重は安い下宿に移り住み深夜の配送アルバイトをしながら学校に通った。そこで酷い扱いは受けたが生活の為に一人で黙々と働くしかなかった。

高校を卒業した勝重は本格的に働く様になり色々な仕事をした。

料理人や大工が多かった様だが金になれば何でもやった。

そんな時にのちの妻の幸子に出会った。

幸子は美容師で見た目がサイバーパンク2077のパッケージに出て来る様な髪型をする女で気が強いのに天然で予測不能な女だったが何かよく分からない内に出来婚に至った。

勝重は仲は悪かったが一応当時の世間体的に両親に幸子を紹介したが見た目がサイバーパンクだった為に速攻で帰らされたらしい。

それはそうだろう。俺だって嫌だ。

その日の内に髪を黒く染め直して翌日には了解を得たらしい。

結婚に際して残した父の格言をここに記そうと思う。


結婚するのは構わないよ。ただ、欲しい物があったら自分で買ってね。俺は俺で好きな様にするから。あんたも好きにすればいいけどお金は自分で稼ぐんだよ。


と言ったと幸子は今でも時々言う。

幸子と勝重の稼ぎは美容師をしている幸子の方が圧倒的にあったからである。

ちょっと可哀そうだが勝重には爆発力があった。


ある時期に勝重は相棒と一緒に宝石商をしていた。

勝重は言わなかったけどおそらく人に言えないルートの宝石だ。

宝石は宝石を扱う会社の規定に定められたルールで売る必要があるが当時はその辺曖昧だったんだろうなと思う。

相棒は東北の郡山から来た男で腕も立つ男だった。

二人の手腕はこうだ。大通り近くの宝石店近くに張り込む(単にサボってるだけの可能性もある)。

宝石に興味のありそうな身なりの良いご婦人がいて特に買い物もせずに店を出れば追跡を始める。

そうして家を特定し訪問して営業をするのである。

この仕事で二人はまぁまぁ稼げたらしい。

あとこの頃に札幌の資産家とお知り合いになったのだと思う。


さて、大通り公園では毎年大噴水の近くで焼きトウモロコシの販売をしている。炭火で焼く醤油を塗られた香ばしい匂いとかぶり着いた時の甘味は他に類を見ない旨さである。現地に行ったら絶対食べて欲しい。食べこぼしても鳩が拾ってくれるのでその辺の心配もない。

さて大通り公園でダラダラしていると折り悪く一人のチンピラがショバ代を寄越せと販売員のおばちゃんに因縁をつけ始めたのである。

最初は我慢していたが、チンピラが屋台をひっくり返した辺りで勝重はキミキミ待ちたまえと割って入った。

二人は一通り揉めた後に仲間を呼ばれて二十人に囲まれヤクザ20人とヤクザみたいな見た目の宝石商2人の大乱闘が始まった。

ほぼ龍が如くでしか聞かないシチュエーションである。

極真空手の使い手だった勝重と武闘派の郡山の男は20人相手に圧倒していた。

ほぼ四方が敵の為、手当たり次第殴り蹴っては投げていた。

だが終わりは呆気なかった。

不意に背中に組み付かれた勝重は反射的に相手を肘で払ったが姿が目に入った瞬間しまった!と思た。

それが警官だったのである。

と、同時に「確保!」号令と共に勝重と郡山の男は警察に逮捕されたのである。

意識のあったヤクザは何人か逃げたが地面で伸びていたヤクザも同様である。


しかし、周りの人の証言とトウモロコシ販売のおばちゃんのお陰もあってか厳重注意だけでお咎めなしになったらしい。

ちなみに晩年に殺人バクテリアと闘病するまでメチャクチャ強かったので人数を盛ってる以外は本当だと思う。

郡山の男はのちにヤクザになり勝重は所帯もあった為、別の道を進む事になる。


勝重は多才であった。

趣味が絵描きで自動車メーカーのデザイン部門に応募してオファーが来たのに最初は色の選定からになると言われて蹴ったり、札幌の引っ越し会社のトラックの絵をデザインしたり、ほかに広告代理店の様な仕事もしていた。

ある時は料理屋をしていて安い金額で旨い飯を出す店をやりトラックドライバーに愛される店をやってみたりと書けば書くほど嘘くさくなってくる。

ただ、絵は上手かったし飯も旨かったので本当だと思う。

あと幸子が言っていたので本当だろう。


とりあえずそんな感じである。


さて勝重はある時に痔を患う事となった。

イボ痔である。

ウンコをする度に強烈な痛みに襲われる様になりアレだけ大暴れした柄の悪い男でも内臓は人と同じなのだ。

次第に食事もまともに取れなくなり飲み物で命を繋ぐ様な状況であった。

この時に唯一飲めたのがハワイのグァバジュースだったらしく後に命の恩人だと語り飲んでいた。筆者も飲んでみたが正直あんまり好んで飲むものではないなと思った。


この時期に槙野と言うお医者さんに出会い痔の治療をされたのだが、結構な苦しみの中に縋るモノもなく槙野先生と話す内に宗教勧誘を受けて入信するに至った。

今までの経緯から考えると普通に生きていたら多分40歳になる前に人と揉めて死んでたんじゃないかなと筆者は思っている。

おそらく勝重もその様に感じていたのではないかと思う。


手術の為に入院し手術を終えて無事に元気になり宗教にも入信した。

それから程なく30代になった勝重はお寺の行事を熱心に手伝いながらビル清掃の仕事も始めた。


ビルの清掃作業は初めはモップとバケツだけで始めたが、資産家から出資を受けて人数を集めて屋外に山登りのザイルをセットして壁を折りながら清掃をする仕事をメインに受け始める様になった。

この時期は札幌市内の公共施設の清掃や病院など手広く営業をしていたので結構稼いでいたらしい。と言っても上場企業の部長クラスぐらいの稼ぎがいいところだが年商10億にまで届いたのは凄いとは思う。


この会社は出資者の名前を関する企業名で共同代表に勝重の他にもう一人いた。

株式会社を設立するにあたり1000万必要で共同代表が700万、勝重が300万と言った所だ。


50歳目前の勝重は会社の経営を降りる事となった。

勝重はバレていないと思っただろうが結構女遊びをする男だった。

ワゴン車に仕事先で貰ったホテルのタオルが置いてあったり、何に使ったのか分からない低周波治療器があったり。

我が家の兄弟で女遊びの激しい兄がいるのだが誰に似たのか不思議だったが多分勝重であろう。

多くは語らなかったが騙されて辞める事になったと言っていたが女遊びの相手に共同経営者の息の掛かった人妻が居て旦那にバレて慰謝料請求でもされたのだろう。

この時請求されたのが300万でこれを建て替える代わりに代表を退かせたのが顛末だと思う。


早い話がハメたつもりが嵌められた訳である。


仕事は信用で成り立つ部分が多く誰かの名前や顔で通る案件も多い。

会社の業績は程なくして下がり、多くの公共施設や病院の仕事は他社に取られたらしい。


その後も10年くらいは家族経営の会社をしていたが家族間のイザコザで経営が立ち行かなくなり小遣い稼ぎ程度の清掃の仕事をしながら細々と暮らした。


晩年は殺人バクテリアと言いう病に掛かり生死の淵を彷徨ったがギリギリ生還し息子や娘に世話になりながら暮らし孫に囲まれ幸子と幸せに暮らした。


今わの病床で幸子に勝重は感謝の言葉を述べて旅立って行った。

おしまい。

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