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【2話】決意

三田「う…そ」


三嶋「死んだって…そんな急に…」


突然のことに2人は困惑し、手や肩が震えだす。

それを見て神と名乗る女性は2人の手を優しく取り、さあこちらへと川のほうに向かう。

2人が川の中を覗き込むと、映像のようなものが見えた。


三嶋「あれ?三田さん?だよね、久しぶり!」


三田「三嶋くん!中学ぶりだね、買い物?」


そこに見えたのは、三嶋と三田がショッピングモールで偶然会って話す様子だった。

そのショッピングモールは、街中にある大きいモールで4階まである。

中にはスーパーやフードコート、服にアクセサリー、家具を売っている店も入っている。

映画館もあり、平日でも多くの人が訪れる。


三嶋「ううん、バイトの面接しにきたんだよね。あそこの服屋、そこそこ時給いいから」


三田「そうなんだ!たしかにあそこの服屋、ここら辺なら結構良いほうだよね。私も時給いいから一階のスーパーでパートしてるんだ」


三嶋「え!そんなんだ!全然知らなかった…いつから働」


ドン!!!!!

そこで近くの店から爆発が起こり、炎と煙が2人を巻き込んだ。


神「爆発テロが起こったのです。あそこ以外にも3箇所、モール内で爆発が起こりました。」


そこで映像が乱れ、またハッキリと映った時には三嶋の母親の顔が見えた。


三嶋「母ちゃん…!」


川に映る三嶋の母親は酷く取り乱しており、泣き叫ぶ顔はとても辛く悲しい顔をしていた。

事情を話したのであろう二人組の警察官の前で膝をつき、しまいにはショックで倒れてしまっていた。

実感がじわじわと出てきて、三嶋の目に涙が溢れてくる。

手を力強く握り、その拳には切って短くなった爪が食い込んでいた。


神「あなたのお母様は一時的なショックで倒れているだけです、すぐに目を覚ましますよ」


神が言葉をかけても、三嶋は現状を受け入れられなくて耳に届かない。

続いて映像には小さな男女が映った。


三田「アキトくん…エリちゃん…!」


三田の少し歳の離れた兄弟である。

アキトは小学六年生、エリは小学四年生。

急な姉の訃報に顔をぐしゃぐしゃにして泣くエリと、そのエリの小さい手を握りながら一緒に泣くアキトがいた。

その姿を見た三田は口を押さえながら膝から崩れ落ち、ごめんなさい…ごめんなさい…と呟きながら泣くことしかできなかった。





時間は少し進み2人が落ち着いた頃、神が2人の背中をさすりながら話し出した。


神「私の話を聞いてください。あなた達は、確かに死にました。しかし、生き返る方法があります。」


三嶋「…生き返る、方法?」


神「あなた達が生きていた世界とは別に、この宇宙にはまた別の世界が存在します。

その世界の脅威である魔王を倒してください。そうすれば報酬として、あなた達を生き返らせることができます。」


三嶋「魔王を倒すってそんな…ファンタジーみたいな…」


神「ファンタジーみたいですけど、本当にある世界です。魔法もありますよ。あなた達はそこで召喚された異世界人として仲間を得て、力を合わせて魔王を倒す。…もちろん、辛いことや魔王を倒す前にその世界で死んでしまうかもしれない。だから、このまま輪廻転生をすることもできますよ。他の爆発に巻き込まれた人たちにも声をかけましたが、その人たちは運命に従い、輪廻転生をしました。どうするかは、あなた達次第…。」


三田「そんな、急に言われたって……」


神「時間をあげます。自分はどうしたいか、よく考えてくださいね。決まったら私のことを呼んでください。」


そう言い残し、す………と神は消えていった。

しばらくの沈黙の後、三田が口を開いた。


三田「三嶋くんは…どうする?」


三田の質問に、三嶋はすぐには答えられなかった。

俯き地面を見つめ、今までのことを思い出す。


三嶋「……俺、は」


三嶋の家は母子家庭だった。

父は早くに亡くなり、母は女手ひとつで三嶋を育てていった。

朝から晩まで仕事とバイトをこなし、三嶋になるべく不自由させないように働いてきていた。

母親はまだ30代のはずなのに、老けて40代に見え、体の内側も歳と共に衰えてきていた。

そんな母親の助けになりたい、せめて自分がバイトをすれば飯代や電気代くらいはなんとかなるだろうと思って、バイトを始めようと思った矢先だった。

自分は死んだとして、母親は悲しむが、それでももうあんなに働かなくても済むようになる。

今までよりいい暮らしができると思うし、外食だって好きにできるようになる。

でも、それでも……


三嶋「俺、やるよ。今はまだ魔王とか、生き返るとかちょっと信じらんないけど…」


顔を上げて、真剣な顔を三田に向けた。

また生き返られるなら、母親に感謝して生きていきたいと思った。

思春期だった三嶋は、上手く母親に感謝して生きることができなかった。

『ありがとう』が『どーも』や『あっそ』に変わってしか言えなかったことを後悔している。

やって見たい事も沢山あり、まだ高校一年生である。

三嶋は少しでもチャンスが欲しいと思った。


三嶋「…三田さんは、どうするの?」


三田は再び川の中を覗く。

もう弟と妹の姿は見えず、目を腫らした自分の姿が映っていた。

しばらく自分の姿を見つめた後、三田は振り返り言った。


三田「私も…やってみたい。あの2人を残して、死ねない」


1人で知らない世界に行くよりも、知っている人と行くのでは気持ちの持ち方が違う。

三嶋は少し安心することができた。


三嶋「じゃあ…これからは一緒に冒険する仲間だね」


三田「そうだね…よろしく三嶋くん」


三嶋「うん、よろしく」


2人は目を合わせてお互いに頷いた。


三嶋「あの、神様!俺たちやります!」


三嶋が大きな声で言うと、神は再び目の前に現れた。


神「わかりました。では準備を始めますね。そうそう、その前にこれを。」


2人が神に渡されたのは、指輪だった。銀色で、二つの小さい宝石が埋め込まれている。


神「世界が違うということは、もちろん使う言語も違います。これをつければ会話が不便になることはありません。文字も読めるようになりますよ。無くさないように持っていてくださいね。」


三田「わかりました!」

三嶋「はい!」


指輪を受け取り、人差し指にはめる。

ピッタリとハマった指輪はキラキラと輝いていた。


神「では始めます。」


そう言うと2人の下に魔法陣のような模様が現れ、光が包み込むように下から出てきた。

眩しさに三嶋は思わず目を細める。

そこへ、三田が手を伸ばし腕の服の裾を掴んできた。


三嶋「!」


目を開き、三嶋の方を見る。肩が上がり、震えている。

やはり怖いのだろう。

三嶋はそっと三田の手を取り、強く握った。


三田「!…ありがとう」


光が完全に2人を飲み込み、神の前から消えた。

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