第3話:天使の怒りと結果改変の力
森の中、隠れた木の陰から、俺は目の前の光景を静かに見つめていた。倒れた冒険者たちを嘲り、金品を漁ろうとする男たち。肥満気味で傲慢そうな主導者らしき男と、その屈強な護衛たち。彼らの悪辣な行いが、俺の中に静かな怒りを燃え上がらせた。
(また、これか……。前世で散々味わった、理不尽と傲慢。もう、二度と我慢しない)
俺の瞳に、ほんの微かに、金色に輝く光が宿る。背中の純白の翼が、風もないのにわずかに揺らいだ。俺は直接手を下すつもりはなかった。なぜなら、俺には、この世界のどんな物理法則も常識も凌駕する「全ての結果を改変する能力」があるのだから。
「おい、そこの荷物も漁れ! きっと何か金になるものがあるはずだ!」
主導者らしき男が、倒れた冒険者の背負っていた袋を指差し、護衛に命じた。護衛がその袋に手を伸ばした、その時だった。
俺は能力を集中させた。
第一の結果改変。
「護衛が袋に触れた瞬間、袋の中から無数の虫が飛び出し、彼らの顔や首筋に群がる」
護衛の男が袋を掴んだ瞬間、袋の口から、ブワッと黒い塊が飛び出した。それは、手のひらほどの大きさの巨大な魔蠱セトラスト前世でいうゴキブリが、おびただしい数で護衛の顔や首筋、腕に張り付いたのだ。
「うぎゃあああああああ!?」
男は絶叫し、全身を激しく振り回して魔蠱セトラストを払い落とそうとするが、彼らは粘着性があるのか、なかなか離れない。その醜悪な姿に、周囲の護衛たちも悲鳴を上げ、後ずさった。中にはあまりの悍ましさに嘔吐する者までいる。
主導者らしき男は、突然の事態に目を丸くしていたが、すぐに怒りの表情に変わった。
「何をしている! 早く払い落とせ! この役立たずどもが!」
第二の結果改変。
「主導者らしき男が、護衛たちに怒鳴り散らそうとしたその口の中に、彼の目の前に飛んでいた魔蠱セトラストが一匹、正確に飛び込む」
男が口を開いた瞬間、宙を舞っていた一匹の魔蠱セトラストが、まるで吸い込まれるかのように男の口の中へ飛び込んだ。
「ごふっ!? むぐっ!?」
男は顔を真っ赤にして口元を押さえ、激しく咳き込む。吐き出そうとするが、虫はすでに喉の奥に入り込んでしまったようだ。男は苦悶の表情でその場に膝から崩れ落ち、嘔吐しようとするが、何も出てこない。ただ、えずき続ける。
周囲の護衛たちは、悲鳴を上げて逃げ惑う者、吐き続ける者、そして主導者の男の異様な姿に呆然とする者と、完全にパニックに陥っていた。
(これで、彼らはもうまともに動けまい)
俺は彼らの状況を確認し、最後の仕上げに取りかかった。
第三の結果改変。
「彼らが持ち運んでいた金品や強奪品が、全て土塊や枯れ葉に変わる。同時に、近くの茂みから、この一帯を縄張りとする凶暴な魔物『フォレスト・ウルフ』の群れが姿を現し、混乱する彼らに襲いかかる」
男たちが腰に下げていた金貨袋が、ガサガサと音を立てて土塊に変わっていく。宝石はただの石ころになり、高価な装飾品はあっという間に枯れ葉と化した。彼らの顔から血の気が引く。
「な、なんだこれは!? 金が! 宝石が!」
その時、茂みがガサガサと音を立てた。警戒する彼らの前に現れたのは、獲物を狙う鋭い眼光を放つ、十数頭のフォレスト・ウルフの群れだった。彼らは混乱し、武器を構えるが、先ほど魔蠱セトラストに襲われた者たちはまだ震えており、まともに動けない。武器が土塊に変わった者もいた。
「ひぃっ! 魔物だ! 逃げろ!」
護衛の一人が悲鳴を上げ、我先にと逃げ出す。しかし、パニックに陥った彼らを、フォレスト・ウルフの群れは容赦なく追い立てていく。森の奥から、男たちの断末魔の叫びと、魔物の咆哮が響き渡った。
森の中、隠れた木の陰から、俺は目の前の光景を静かに見つめていた。倒れた冒険者たちを嘲り、金品を漁ろうとする男たち。肥満気味で傲慢そうな主導者らしき男と、その屈強な護衛たち。彼らの悪辣な行いが、俺の中に静かな怒りを燃え上がらせた。
(また、これか……。前世で散々味わった、理不尽と傲慢。もう、二度と我慢しない)
俺の瞳に、ほんの微かに、金色に輝く光が宿る。背中の純白の翼が、風もないのにわずかに揺らいだ。俺は直接手を下すつもりはなかった。なぜなら、俺には、この世界のどんな物理法則も常識も凌駕する「全ての結果を改変する能力」があるのだから。
「おい、そこの荷物も漁れ! きっと何か金になるものがあるはずだ!」
主導者らしき男が、倒れた冒険者の背負っていた袋を指差し、護衛に命じた。護衛がその袋に手を伸ばした、その時だった。
俺は能力を集中させた。
第一の結果改変。
「護衛が袋に触れた瞬間、袋の中から無数の虫が飛び出し、彼らの顔や首筋に群がる」
護衛の男が袋を掴んだ瞬間、袋の口から、ブワッと黒い塊が飛び出した。それは、手のひらほどの大きさの巨大な魔蠱セトラスト前世でいうゴキブリが、おびただしい数で護衛の顔や首筋、腕に張り付いたのだ。
「うぎゃあああああああ!?」
男は絶叫し、全身を激しく振り回して魔蠱セトラストを払い落とそうとするが、彼らは粘着性があるのか、なかなか離れない。その醜悪な姿に、周囲の護衛たちも悲鳴を上げ、後ずさった。中にはあまりの悍ましさに嘔吐する者までいる。
主導者らしき男は、突然の事態に目を丸くしていたが、すぐに怒りの表情に変わった。
「何をしている! 早く払い落とせ! この役立たずどもが!」
第二の結果改変。
「主導者らしき男が、護衛たちに怒鳴り散らそうとしたその口の中に、彼の目の前に飛んでいた魔蠱セトラストが一匹、正確に飛び込む」
男が口を開いた瞬間、宙を舞っていた一匹の魔蠱セトラストが、まるで吸い込まれるかのように男の口の中へ飛び込んだ。
「ごふっ!? むぐっ!?」
男は顔を真っ赤にして口元を押さえ、激しく咳き込む。吐き出そうとするが、虫はすでに喉の奥に入り込んでしまったようだ。男は苦悶の表情でその場に膝から崩れ落ち、嘔吐しようとするが、何も出てこない。ただ、えずき続ける。
周囲の護衛たちは、悲鳴を上げて逃げ惑う者、吐き続ける者、そして主導者の男の異様な姿に呆然とする者と、完全にパニックに陥っていた。
(これで、彼らはもうまともに動けまい)
俺は彼らの状況を確認し、最後の仕上げに取りかかった。
第三の結果改変。
「彼らが持ち運んでいた金品や強奪品が、全て土塊や枯れ葉に変わる。同時に、近くの茂みから、この一帯を縄張りとする凶暴な魔物『フォレスト・ウルフ』の群れが姿を現し、混乱する彼らに襲いかかる」
男たちが腰に下げていた金貨袋が、ガサガサと音を立てて土塊に変わっていく。宝石はただの石ころになり、高価な装飾品はあっという間に枯れ葉と化した。彼らの顔から血の気が引く。
「な、なんだこれは!? 金が! 宝石が!」
その時、茂みがガサガサと音を立てた。警戒する彼らの前に現れたのは、獲物を狙う鋭い眼光を放つ、十数頭のフォレスト・ウルフの群れだった。彼らは混乱し、武器を構えるが、先ほど魔蠱セトラストに襲われた者たちはまだ震えており、まともに動けない。武器が土塊に変わった者もいた。
「ひぃっ! 魔物だ! 逃げろ!」
護衛の一人が悲鳴を上げ、我先にと逃げ出す。しかし、パニックに陥った彼らを、フォレスト・ウルフの群れは容赦なく追い立てていく。森の奥から、男たちの断末魔の叫びと、魔物の咆哮が響き渡った。