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第1話：森の目覚め

次に目覚めた時、俺は柔らかな土の上に横たわっていた。肌を撫でる風は生暖かく、どこからか甘い花の香りが漂ってくる。身体は信じられないほど軽く、疲労感は一切ない。むしろ、全身が満ち足りた生命力で溢れていた。ゆっくりと立ち上がると、視界の端に違和感を覚える。

背中に、何かがある。

恐る恐る振り返ると、そこには、真っ白な翼が生えていた。大人の男性の背丈ほどもある、ふわりとした純白の羽。触れてみると、絹のように滑らかで、それでいて力強い感触がした。

「な……なんだ、これ……」

混乱する俺に、声が響いた。どこからともなく、優しく、しかし厳かな声だ。

「ほう、随分と骨身を削ったものだね。君のような者が、あの世界の均衡を保っていたのも事実。だが、あまりに理不尽な死だった」

その声は、俺の人生を全て見透かしているようだった。過労死。ああ、やっぱりそうだったのか。妙に納得がいった。

「詫びと言ってはなんだが、新たな生を与えよう。君は、この世界でルカ・セラフィエルと名乗るといい。そして、君には特別な力を授ける」

特別な力？ふと、心臓のあたりに温かい光が集まっていくのを感じる。

「その力は、全ての結果を改変する能力。未来に起こるであろうあらゆる事象の結果を、君の望むように書き換えることができる。時間や空間、物理法則すらも捻じ曲げ、望む結果を現実とするのだ」

……全ての結果を、改変する？そして、この翼は？

「君は、この世界の秩序を司る、天使として転生した。その翼は、君の存在そのものの証となるだろう。その能力が、君の新たな生をより豊かなものにすることを願う」

光が強まり、俺の身体を包み込む。温かく、そして、どこか懐かしいような感覚がした。

俺は、自分の手を見た。華奢だった前世の手とは違い、しなやかで力強い、青年らしい手だ。顔は、先ほど見た翼と同じくらい、完璧に整っている。まさに、神々しいまでの美貌。全身から発せられる清らかな光は、闇を払うようだった。

前世の過労死で失った命。今度こそ、俺は好きなように生きる。二度と誰かの理不尽な要求に振り回されるものか。この「全ての結果を改変する能力」があれば、きっと――。

俺の新たな人生、ルカ・セラフィエルとしての物語が、今、始まった。ただし、また無理をして働くのは、もうごめんだ。森でのんびりスローライフを送れたら、それが一番いい。