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過労死天使の異世界奮闘記  作者: ゆうたち
第一章:光の都エルドゥラン
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第14話:光の都エルドゥラン

イリス姉さんの言葉に、俺の頭はまだ混乱していた。「はじまりの天使」が七人兄弟で、俺がその四男だと? しかも、俺の翼は薄灰色の輝きを放っているらしい。そんなこと、前世の俺には想像もつかないことだった。

「さあ、行くわよ、ルカ。しっかりついてきてね」

イリス姉さんは、そう言うと、優雅に白い翼を大きく広げた。その翼は、朝日に照らされて、まるで光そのものが形になったかのように輝いている。俺も、自分の薄灰色の翼を広げた。まだ慣れない動きだが、身体が軽いおかげで、無理なく羽ばたくことができる。

姉さんが先に飛び立ち、俺もそれに続く。一気に高度を上げると、森がみるみるうちに小さくなっていく。地上から離れるにつれて、空気は澄み渡り、風が心地よく頬を撫でる。

「すごい……」

俺は思わず息をのんだ。眼下には、どこまでも広がる緑の絨毯。遠くには山脈が連なり、雲がまるで綿菓子のように浮かんでいる。こんな景色、前世では飛行機の窓からしか見たことがなかった。しかも、自分の翼で飛んでいるのだ。この浮遊感と開放感は、何物にも代えがたい。

姉さんは、俺の感動を察したのか、少しだけ速度を落としてくれた。

「どう? 気持ちいいでしょ? あなたはまだ覚醒したばかりだから、慣れないかもしれないけど、すぐに慣れるわよ」

「ああ、こんなに自由に飛べるなんて……」

俺は素直にそう答えた。この感覚は、過労で疲弊しきっていた前世の俺には、まさに夢のようなものだった。

しばらくの間、二人は無言で空を飛んだ。雲を抜け、さらに高度を上げていくと、眼下には広大な大地が広がる。そして、遥か上空に、信じられない光景が目に飛び込んできた。

雲海の上に、巨大な建造物が浮かんでいるのだ。それは、まるで光を纏った城塞都市のようだった。白い壁が輝き、金色の屋根が朝日に反射して眩しい。無数の塔が天を突き刺し、その間を光の筋が縫うように走っている。

「あれが……『光の都エルドゥラン』?」

俺は呆然と呟いた。想像を遥かに超えるスケールと美しさだ。

姉さんは、その都を見つめながら、静かに言った。

「そうよ。あれが私たちの住処、『光の都エルドゥラン』。あ、そういえば、ルカ。私たち『はじまりの天使』っていう総称だけど、実はもう一つ、もっと古い呼び方があるの」

「もっと古い呼び方?」

俺は姉さんの言葉に、首を傾げた。

「ええ。私たちは、この世界が生まれるよりも遥か昔から存在している。だからね、私たちは『はじまりの天使』であると同時に、『原初の天使』とも呼ばれているのよ。悪魔もそうだけど、根源の存在は、そう呼ばれることが多いわ」

「原初の天使……だからルークスと姉さんで呼び方が違うのか」

その言葉は、「はじまりの天使」という言葉よりも、さらに重く、そして根源的な響きを持っていた。俺が、そんな途方もない存在の一員だというのか。前世の俺は、ただのしがない社畜だったのに。このギャップに、俺の頭はまたしても混乱した。

(原初の天使……。俺のこの能力も、その『原初』の力の一部ってことか。だから、悪魔には効かない……)

ルーカスの言葉と、姉さんの言葉が、俺の中で少しずつ繋がり始めた。俺の能力は、この世界の根源的な存在には通用しない。それは、彼らもまた、世界の理の一部だからだろう。

「さあ、もうすぐ着くわよ。エルドゥランへようこそ、サルアド」

姉さんの声が、俺の思考を中断させた。光の都は、みるみるうちに大きくなり、その壮大さに、俺はただ圧倒されるばかりだった。

俺のスローライフは、とんでもない方向へと進んでいる。だが、この「原初の天使」としての力と、この天空の都での生活が、俺に何をもたらすのか。そして、俺の求める真の平穏は、ここにあるのだろうか。

期待と不安が入り混じったまま、俺は光の都エルドゥランへと降り立った。


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