転生からの即艦隊長
誰かの叫ぶ声がきこえる。
「ーー艦長! 右舷1、3番対空砲が破壊されました!」
「旗艦から通信!引き続き突撃陣形を維持だそうです」
轟音。振動。視界の端で火花が散り、誰かが怒鳴っている。
なんだ?夢か?
それにしてはリアルだな、、、
まるで本物の艦橋みたいだ。しかもめっちゃSFチックな見た目してるし。
周りには機器がたくさん並んでるし。前方にある巨大な窓からは数え切れないほどの艦船が見える。
何これ?宇宙戦争?
え、大丈夫なのこれ?
なんてことを考えてる間にもどんどん報告は入ってくる。
「敵艦隊の一斉射、来ます」
そんな報告が来たと思ったら爆発と共に大きな揺れが起こり、俺は衝撃で座席から吹っ飛ばされた。
壁に打ち付けられて身体中が痛い。
え、痛い?これ夢じゃないの?
「被弾!左舷対空砲が全て吹き飛びました」
「出力が53%まで低下、シールド出力低下!」
俺が全く状況を理解できていない中、さらに報告が入ってくる。
てか報告聞いてる感じこの船やばいじゃん。沈みそうじゃん。
「艦長、指示を!」
艦長さーん、呼ばれてますよ〜
「艦長、ご無事ですか?艦長!」
なんか綺麗なお姉さんが近づいてくる。軍服姿可愛いなぁ。
待ってなんでこっちに来てるの?
俺艦長じゃないよ。てか艦長だとしてもやりたくないよ。
「艦長、ご命令ください!聞こえてます?シュトルツ艦長?」
いや俺シュトルツじゃないし、、、
てか俺日本人だし。そんなかっこいい名前してないよ。
「シュトルツ艦長!」
「はい!」
反射的に返事しちゃった。どうしよ。
「聞こえてたんですね、聞こえてたなら返事してください」
いや、俺そもそもシュトルツって人じゃないし、、、
ん?あ、そゆことか。俺死んでシュトルツになったのか。
うん、まあ今はそういうことにしておくか。
よし、そんじゃ艦長頑張りますか。
「心配かけて悪かった、今すぐ艦長席に戻、、、」
立ち上がろうとしたら一回りでかい味方の船が爆発するのが見えた。
「旗艦ラーグバルムの信号、機能共に喪失を確認、旗艦、撃沈されました!」
あ、終わった。転生した直後に死ぬんだ。
せっかく整理ついたと思ったっらこれかよ。
ただでさえボロボロだって一目見ればわかるのに味方の旗艦が沈んだってもうそれ詰みじゃん。
ハハハ、どうしよ。
さっき覚悟決めたのにもう心折れそう。
《警告。第8突撃艦隊旗艦ラーグバルムの機能喪失を確認。艦隊指揮系統を再編成します》
「……え?」
AIかな?この声。
すげ、勝手に指揮系統組み直してくれるんだ。
指揮系統崩壊して全滅とかはなそうだね、シャオラァ。
危機は脱してないけど。
とりあえず艦長席にもどるか。
《第8突撃艦隊 次期艦長候補ーーヘルマン=シュトルツ。条件を満たしています。》
うん?
今俺の名前が呼ばれた気がするけど気のせいだよね。
うん、きっとそうだ。
もし俺が艦隊長なんてやったら全員全滅しちゃうよ。
《承認完了。艦隊長権限をヘルマン=シュトルツ、副艦隊長権限をフォーレン=ランハルトに移行します》
「は、はあ?」
思わず声が出る。周りの視線が一斉にこっちを向く。
みんな真剣な顔でこっち見てる。
俺はただのサラリーマンだぞ、艦隊指揮とかゲームでしかやったことねえよ。
「艦隊長、指示を!」
「指示を!」
あーもうやってやんよ。もう知らねえやけくそだ。
これで負けても転生させたやつを恨めよ。
帽子を被り直して艦長席に座り直す。
「よっしゃ、1発かましてやりますか」




