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ホラー

水たまりの下に、誰かいる

作者: 夜宵 シオン

 雨の日の通学路、道路の脇にできた水たまり。


 私は、そこを通るのが少しだけ、怖い。


 理由は単純。

 あの水たまり、深さが変なんだ。


 大して雨も降っていないのに、いつもぐっしょり。

 しかも、のぞき込むと――空じゃなくて、人の影が映ってる。


 最初は、私の勘違いだと思った。

 でも、何度見ても、水たまりの中には子供のような小さな姿が見える。

 顔はよく見えない。ただ、じっとこっちを見ている。


 先生に言っても笑われた。

 友達に見せても、「え、何もないよ」と素通りされる。


 私は、確かに見ていた。


 ある日、いつものように水たまりの横を通り過ぎようとしたとき。


 “それ”が、動いた。


 水の中から、手が伸びてきた。


 小さな、白くしわしわの子供の手。

 私は息を呑んで立ち止まった。


 そして、聞こえた。


 「出して……」


 その声は、耳じゃなく、頭の中に直接響いた。


 私は、どうしてか――手を伸ばしてしまった。


 水たまりに手を近づける。触れる寸前、波紋が広がる。


 ぬるい。

 でもその奥は、底がないみたいに、ずっと黒い。


 次の瞬間、足首をつかまれた。


 引きずり込まれる。

 地面が沈む。雨の音が遠ざかる。


 そして私は、水たまりの“下”に落ちた。


 そこは、水の裏側の世界だった。


 空は逆さま。人々の足だけが見える。

 私は、道路の“裏”から、必死に叫んだ。


 でも声は届かない。

 ガラス越しのように、誰にも気づかれない。


 水面の上から、誰かがこちらをのぞき込む。

 私は、思わず手を伸ばした。


 「出して……」

その声が届く日はいつ来るのだろう?

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