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新しい道案内役。

 少し休憩してから、静まり返った食人族の集落を探索する事にした。

 集落の中には床が高く丸太でできた扉のない建物がいくつかある。

 

 「もしかしたら、まだ生きている被害者が居るかもしれないよね......この中を確認するのは、ちょっと怖いけど」


 恐る恐る建物の入り口の中を覗くと、悪い方の予想が当たる。

 そこに居たのは、人の形をした何かが両手足を縛られて腹の辺りの肉や内臓と太ももや頬の肉がごっそりと削り取るように無くなっている。


 「きっと、生きたまま食べられてしまったんだろうな...縛られているのが、その証拠だよね」


 こんな事が起きるなら、今からでも逃げ出した食人族を追いかけて一人残らず駆除した方がいいのでは?と思いはしたが、広大なアトラ樹海の中では無謀な考えだった。

 

 『みぅとー、どうしたの?』

 「フィー、こっち来ちゃダメだよ!」

 『.....分かった』

 

 こんな酷い光景はフィーには絶対見せられない。

 物分かりがよくて素直で良かったよ。


 《ほんとに酷いな、こんなの見た日にはトラウマになっちゃうぞ》

 「だよね、他の建物も同じ状況だったら嫌だな」

 《希望は持てないよな、ミルトは大丈夫か?他の建物も確認するんだろ?》

 「まあね、具合悪くなりそうだけど...一応確認しないと、もし生きてる人や妖精がいるなら助けてあげたいし」


 私は、外で大人しく待っているフィーの手を引いて他の建物に移動する。

 私が建物の中を確認している間、フィーに外の見張りをお願いした。

 全ての建物を確認したけど、どこも似たような状況で6人分の死体を見つけた。

 

 「埋めて埋葬してあげたいけど、ここら辺の地面は木の根が多くて難しそうだね...」

 《オレはこのままでいいと思うけどな、埋めるならけっこう深く掘らないと動物達に掘り起こされて散らかるしな、それにスコップみたいな道具も持っていないだろ?》

 「そうだね...死体を埋めるって事はフィーに見せちゃう事になるし、お祈りだけでもいいかな?」

 《それでいいと思うよ、それに死体って病気を蔓延させる原因にもなるし、どれだけ時間が経っているか分からないけど近づきすぎるのは危険かもしれないな》


 私達は、建物から離れ集落の入り口と思われる場所に立って目を閉じ両手を組み祈る。

 祈りが終わると、フィーも見よう見まねで両手を組み目を瞑っていた。

 頭を撫でると目を開いてこっち向き、これでいいの?って顔をしていた。


 「うんうん、それでいいんだよ」

 《なあ、ミルトここはそのままにして行こうぜ...》

 「そうだね、私達だけじゃどうにもできないし長居もしたくないしね」

 《ただ、オレこの辺は道分かんないんだよな》

 「私達も茂みの中を追いかけてきたから、来た道が分かんないな」

 《そうだ、あいつは?もう一人生きている妖精がいただろ?》

 「あっ、ちょっと待って...もしかして、あのまま置いてきちゃったかもしれない」

 『ここ!』

 

 フィーがどこから出したのか、もう一人の妖精を手のひらに乗せていた。


 「フィー、ずっと持っていたの?」

 『うん、この中に入れてた』


 服の内側にはポケットが付いていて、その中に入れていたみたいだ。


 《もしかしたら、こいつなら道が分かるかもしれない》

 「まだ、気絶してるみたいだけど大丈夫かな?」

 《大丈夫だよ、ちゃんと心臓は動いてるし...可愛そうだが力技で行くか!》


 そう言うと、太ももの内側を思いっきりつねった。

 よほど痛かったのか、名前の分からない妖精はビクンと体が跳ねて飛び起きた。


 〔痛いよ!なんなのもう!〕

 《ごめんな、早くここを離れたくてさ...誰も道が分かんなくてお前が頼りなんだ》

 〔そういえば、食人族は?〕

 《ミルトとフィーが撃退したよ、だから道案内を頼みたいんだけど》


 名前を知らない妖精は周囲を見渡すと納得したようだった。

 集落の中は食人族の亡骸がそこらへんに散らかっている。


 〔ホントみたいね、分かったよ道は分かるから安心してね、でもどっちに行くの?レラの国の方かな?〕


 アトラ樹海は2つの王国に挟まれていて、私が行こうとしていた国の名前だ。


 「うん、レラの国の方に道案内をお願いね」

 〔任せてよお姉さん!ちゃんと案内するよ〕

 「それで、名前はなんて言うの?」

 〔私はララって言うんだ、よろしくね〕


 妖精が二人も旅のお供になるなんて思わなかったけど、レラの国の方へ抜けられる道を知っていると言っていて心強かった。

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