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食人族の集落で大暴れ。

 私は、すごく怒っています。

 怒りの対象の食人族は、手のひらサイズの小さくて非力な妖精さんに残酷な行為を働きました。

 幸いにも今の私達は魔法も力も強くなっていて、ウサギをやっと狩るくらいの実力しかなかった弓矢は、今では食人族の頭を正確に貫くくらいの技術が身についた。

 フィーからマナが供給され続けるとはいえ、この数日間で信じられないくらい強くなった。


 「さて、食人族はあっちかな?イリナ、この集落の規模と大体の数は分かる?」

 《すまないけど、オレの知っている集落じゃないんだここは......》 

 「そっか、じゃあ完全に駆除するのは難しそうだね...なら、目に付いた奴らから駆除していくしかないね」

 

 なんと言うか、ミルトはさっきから駆除って言葉が目立つ。

 すっかり害虫扱いだ。

 まあ、オレ達も奴らに関しては危険で疎ましく思っていたし有害な存在でしかない。


 「いい?あくまでも駆除するのは私でフィーは私の背中を守ってね、風魔法で蹴散らすだけでいいし素手で殴ったりしちゃダメだよ...ばっちいから」


 完全にばい菌扱いだが仕方ない。

 体に何を塗りたくってるのか酷い匂いがするし、男性の象徴のアレを隠す気もないみたいでミルトの年齢の女の子からしたら嫌悪感しかないだろう。


 『ばっちいから風魔法......ばっちいって何?』

 「汚いって意味だよ、殴ったりしたら手が汚れちゃうからね」

 『ばっちいは汚い...分かった』


 ミルトはフィーに言い聞かせると前に進んだ。

 この集落のどこら辺に食人族が潜んでいるか数も分からないが、手あたり次第駆除をするらしい。

 

 『居た...5人はいるね、フィーは後ろを見ててね』

 

 弓を静かに構え矢を放つ。

 矢を放つたびに上達しているのか、狙いを定めてから矢を放つまでの間隔も短くなっていて全て頭に命中していた。

 

 《すごいな、どこでこんな技術を身に着けたんだよ》

 「私も分からないけど、フィーと出会ってから全てが変わった気がするよ...自信もついたしね」

 

 そう話していると、ミルトの後ろで風魔法の激しい渦の音が聞こえた。

 後ろを見ると食人族達が辺りに散らかっている。

 フィーの風魔法が直撃したようだった。


 『たくさん来てた』

 「偉いよ、ちゃんとできたね」

 

 できれば、フィーに暴力的な事は教えたくはないんだけど、話の通じない有害な奴らには何を言っても無駄だし、自分の身を守るためには仕方ない事もあると教えたい。

 抵抗しないまま、されるがままなんて嫌だし...今後このアトラ樹海でこいつらが大人しくなれば、小さくてか弱い妖精達が生きやすくなればいいと思った。


 「どんどん行くよ、あっまた出てきた」

 《10人はいるか...矢は足りるのか?》

 「あと5本くらいだね、これからは風魔法で蹴散らすかな少しは取っておきたいし」


 そう言うとミルトも風魔法を放った。

 ミルト達の風魔法は一般的な詠唱を唱えて使うものとは別物のようで、横に鋭く伸びるドリルのようだった。

 おそらく、先端が一番威力が強くてそこに当たった食人族の体には大きな穴が開いていて、それ以外の部分に触れた者は勢いよく吹き飛ばされていた。

 隠れていた食人族が矢を放つが、ミルトには見えていたのか矢ごと風魔法で食人族を吹き飛ばす。


 《まるで無双状態だな、あいつら完全に怯んでいるぞ》

 「向かってきてくれれば楽なんだけどね、探す手間が省けるし」

 『みぅと、変なのが来たよ』

 「あれってガンジャラ?」

 《そうだな、正真正銘の生きているガンジャラだな》


 死体のガンジャラは見かけたけど生きているのは初めてだ。

 その周りを食人族達がうろついて何かを話している。

 強い魔物って聞いていたけど、私達で対処できるのか...見た目だけを見るとおぞましいの一言だ。

 裂けている腹からは臓物が足までこぼれ落ちていて、それが意思を持つように動いている...上半身の綺麗な体とにやついた顔がおぞましさに拍車をかけている。


 「とうとう出てきたね、私達で倒せるかな?」

 《あの足元の内臓に近づかれなきゃ大丈夫だと思うぞ、ただあの見た目でけっこう打たれ強くて捨て身で近寄ってくるから気を付けろよ》

 「なら今までのように風魔法で体に穴を空けてあげるよ...さっそく来たね!」


 ミルトの放った風魔法がガンジャラに直撃したように見えたが、風魔法はガンジャラの体を滑るように抜けていった。

 あっけに取られたミルトはガンジャラの臓物に巻き付かれてしまった。


 「い、いやぁあ気持ち悪い!離せこの!」

 《ミルト!落ち着け!上を見ろ!》


 私は言われた通り上を見ると、ガンジャラがトゲトゲした長い舌を出してニヤニヤしている。

 確か、頭に穴を空けて脳みそを食べるんだっけ?

 マズいと思った、巻き付いた臓物を振りほどこうにも纏わりつく力が強くてどうにもならない。

 頭を掴まれてしまい恐怖と緊張が走る。


 「このまま惨い食べられ方をして死んでしまうの?」


 一瞬だった。

 バチィンと大きくて鋭い音がした。

 フィーがガンジャラの顔を思いっきり殴り倒したのだ。

 ガンジャラごと私も横に倒れ、纏わりついていた臓物から解放される。


 『みぅと、大丈夫?』

 「大丈夫だよ、ありがとうね」

 『ごめん...汚いのに殴っちゃった』

 「いいんだよ、助けてくれたんだから」


 フィーの頭を撫でて感謝を述べた。

 起き上がり様子を確認すると、ガンジャラは今の一撃で激しく痙攣していた。

 死後硬直ってやつかな、痙攣がぴたりと止まって固まっているように見える。

 頼りの綱で連れてきたガンジャラが倒され食人族達は震え上がり逃げ出した。


 「皆、居なくなっちゃったね」

 《ああ、撃退したな》

 『これで終わり?』

 「うん、そうみたいだね」


 静まり返った食人族の集落で私達は一息をついた。

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