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名前と魔法

 今、私の目の前に小さな天使とも思えるエルフの女の子がいます。


 その天使はおそらく言葉が話せないのか、名前を聞いても『あう』とか『うー』としか言わなくて仕草も見た目より幼いように感じ、自分の着ている服が気になるのか摘まんだり引っ張ったりしている。

 その仕草や容姿に可愛い声を聞いていると、私の母性がくすぐられてしまい思わずギュッと抱きしめてしまった。


 「ああ! 可愛いぞもう!」

 『ゔー..』

 「あっ、ごめんね痛かったよね..つい抱きしめちゃった」

 『あーう!』

 「おっ、くっついてきた温かいな体温高めなのかな?ほんと可愛い」


 私の服はまだ乾いていなくて、エルフの女の子の顔が私の谷間に挟まれていてくすぐったい。


 私は捨て子で血の繋がった兄弟姉妹はいなかったけど、拾ってくれたおじさんだった人には娘がいて私より年上でよく抱きしめて可愛がってくれた。

 私はお姉ちゃんって呼んでたけど、きっとこんな気持ちだったのかな...町から逃げ出した時は見かけなかったけど、お姉ちゃんだけは私の味方でいてほしい。


 エルフの女の子を抱きしめてそんな事を考えていると、私の顔を下から覗くように見つめてきて『うーっ』と言いながらほっぺを摘ままれた。

 

 この子の親はいるのかな?そもそもこんな所に一人じゃ絶対訳ありだよね、名前はどうなんだろ...とりあえず一緒にいる間は何か名前は必要だよね。

 そういえば、小さい頃に読んでもらったおとぎ話にこの娘に似ている子がいたのを思い出した。

 主人公の名前は確かフィーネアだっけか..ちょっと短くしちゃおうかなフィーかネアかうーん私的にはフィーの方が呼びやすいな!よしフィーにしよう。


 「あなたの名前はフィーにするね!」

 『う?』

 「フィー!」

 『うぃー!』


 おっ、近いないいぞ!


 『あぅ?』


 よし、名前とか言葉とかゆっくり覚えていくとして次は立ってみようかな...立てるかな?


 私は、立ち上がりフィーの両手を握り軽く引いてみる。

 フィーもなんとなく理解したのか立ち上がろうとするが、足に力が入らずミルトの胸に顔から倒れこんでしまった。


 「おっと、大丈夫かな?立ち眩みかな?」

 『うー!』

 「少しよろけるけど、ちゃんと立てているね」


 密着した体を少し離し両手を握りながら後退りすると、おぼつかない足取りでゆっくりと着いてくるしその表情は真剣でとても可愛い。

 いったん、止まり握っていたフィーの手を離してみる。


 「ちゃんと立っていて偉いね!このまま、少し後ろに下がるけど着いて来れるかな?」

 『むーっ!』

 「脚が震えているけど、歩けるみたいだね」

 『うゔ』


 ああそうか、手離しちゃったり後ろに下がったのが嫌だったのかな?

 ぎゅーって抱きしめてくれて可愛いな..このまま抱き合っているのもいいけど、動けないし手を繋いで歩くとかできるかな?

 そうだよ、体を離して片手だけ繋いで横に並んでよし歩こう。


 言葉は通じなくても、こちらの意図をなんとなく理解できてるみたいだ。

 手を繋ぎ話しかけながら、今後の事を考える。


 食べ物がないから、ここにはずっと居られないよね。

 外に行けば魔物も野生動物もいるし、装備らしい装備もないし頼りになる魔法も初歩的で人間相手には通用するけど......。

 私は、繋いでいないほうの手のひらから火の玉を出してみた。


 「あれっ、こんなに大きくて火力強かったっけ...?」


 手のひらに浮いている火の玉は火柱のように大きく燃え盛っていた。


 「もしかして、もっと大きく強く.....ホントに大きくなった」


 ゴォオーっと、ミルトの手のひらから不自然なほど大きく燃え盛る火柱が勢いよく揺らいでる。

 その火柱をフィーはじっと見つめていて、ミルトのように手のひらを上にした瞬間巨大な火柱が出現した。


 「えっ、フィーもできるの!とりあえず危ないから消そうか、こうやるんだよ...フィーもちゃんと消せたね偉いぞ!」


 「他の魔法はどうなんだろ風魔法は...大きさ自体は変わらないけど、風の渦の勢いが明らかに前とは違うな...おっ、やっぱりフィーもできるんだねすごいね」


 もしかして、見た魔法をそっくり真似して使えるのかな.....魔法の才能があるのかな。

 魔法がこの威力ならアトラ樹海抜けられるかな?そうだ、さっきの小屋に何か役立ちそうな物あるかもしれないし、もっと探してみよう。

 その前に、いい加減服を着ないと.....うん、乾いてる。

 私は服を着てフィーに呼びかける。


 「フィー、着いてきてね」

 『うー』


 フィーの手を引き、ゆっくりと小屋の方に向かう。

 小屋に着き、中を確認すると床の板が外れかているのに気が付く。

 板を外してみると外に出る事を想定していたのか、女の子でも扱えそうな武器や登山用の装備が布に包まれていて保存状態はかなり良かった。


 「小剣も弓矢もあるしランプも...他にはロープもあるし厚手の手袋と水筒と方位磁石もあるな、この小屋の持ち主はフィーなのかな?そうだとしたら、ちゃんと準備していたんだね」

 『あぅ?』

 「そうだよね、今は分からないよね..でも武器も必要な物もある程度揃ったし、魔法だってなんか強くなってるし希望も出てきたよ」


 それに綺麗な装飾の小剣だな、年代物なのかな?でもサビ一つないし切れ味も凄そうだ。


 「もしかして、フィーは小剣の扱いに慣れてたりするのかな?」

 『うぅ?』

 「危ないから持たせちゃダメかな.....ここに居てもお腹は空くだけで餓死しちゃうかもしれないし外に出るのが賢明かな、それに早くアトラ樹海を抜けて隣の国に行きたいし逃亡生活も終わりにしたいよ」

 『がし?とうぼう..?』

 「新しい言葉を覚えたね、その調子で少しずつ覚えようね」


 さて、そろそろ出ようかな。

 装備も水も確保できたし、体調も万全で自信に満ち溢れている。

 ただ、出入り口の見当たらないこの場所からどうやって出ればいいか分からなくて悩んでいたら、フィーが壁の方に指をさし小さく震える脚で私を導いてくれた。

 その様子を見てまだ外に出るのは早いかと思ったが、フィーはここに留まる気はなさそうで私の手を引っ張る力は強い。

 フィーが木の密集にした壁に手を当てると、木の幹がグニャグニャと変形し人が通れるくらいの隙間ができた。


 「ええっ、なんだこれ?ちょっと怖いぞ...」

 『みぅと!』

 「うん、名前読んでくれてありがとね」


 私達が外に出ると、変形した木の幹はまたグニャグニャと変形して元の形に戻った。

 木ってこんなに生き物みたいに動いたりするものなのかな?

 不思議な事が起こりすぎて頭が追いつかないけど、今はフィーを守りながら隣の国を目指さなきゃな。


 「えっと、方位磁石は...この方角でよさそうだね」

 『う?』

 「フィー、いいねここには怖くて狂暴な生き物がいるから見つからないように静かに移動しようね」

 『あぅ』

 「よしよし、じゃあ出発だ!」 

 『ぅおー!』


 フィーは可愛い雄叫びをあげていて可愛かった。

ミルトの設定変更と内容を少し変えました。

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