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プロローグ

 もう何日歩き続けたんだろう...。

 岩や木の根などで凸凹した地面を歩くのは全身に疲れやダメージが蓄積されていく。


 「えっと9?10日目かな..汗と泥で体が気持ち悪いし、それに体中が痛くてだるくて今にも倒れそうだよ」


 スンスン、臭い。

 もう何日も水浴びできていないし水筒の水も底を尽きている。


 「もう喉もカラカラで食料も少ないしどうしよう...」


 逃げるために、アトラ樹海に入ったのは間違いだったな。

 でも、ここに逃げなかったら追っ手に捕まって拷問とか辱めを受けていたかもしれない。


 自分が育った町で追われる身になるなんて思いもしなかった。

 16歳の誕生日を迎えた日に、町の中でも普段は立ち入り禁止になっている特別な教会があり記念に連れて行ってもらえる事になった。

 いざ教会に入ると中は殺風景というか、中心に人を一人寝かせられるくらいの石でできた祭壇のような物と物騒な拘束具だけがあり、怪しい雰囲気が漂っていて中を見渡しているとバタンと入り口の扉が閉まる音がして振り返った。

 町では見た事のない大男が扉の前にいて、腰には拷問で使われそうな痛そうな器具をぶら下げ怖い顔していて背筋が凍る。

 私は捨て子で育ての親であるおじさんに連れてきてもらったが、不安になっておじさんの方を見るといきなり腕を強く摑まれ押し倒されそうになり、人間の表情とは思えないような恐ろしい顔付きになっていて鼻息が荒く血走った目をしていた。

 この瞬間に今までの信頼関係は消え失せて、早く逃げ出さないと殺されてしまうか酷い事をされながら犯されるかもしれないと思った。

 私は基本的な魔法なら詠唱なしで使う事ができたけど、その事を町の誰にも教えた事がなくてずっと秘密にしていたのが役立った。

 詠唱なしの火の魔法をおじさんであった男に放ち怯んだ所を蹴り飛ばして、入り口付近にいた大男には無詠唱の風魔法で大男ごと吹き飛ばして教会の外に出た。


「あの時は教会の外にいた人達も皆怖くて、逃げたぞ!とか捕まえろ!とか言ってて誰も信じられなかったな...」


 町の外に逃げても追っ手が来て小さな村や町を転々とした。

 お金がなくて、悪いとは思ったけど食べ物や服や旅に必要な物を盗んだ。

 私が何をしたというのか、逃げても逃げてもいつまでも追われ続けるこの逃亡生活を終わらせるため最終手段を取る事にした。

 アトラ樹海を横断し隣の国へ逃げる事で追っ手に諦めてもらおうと思い逃げ込んだ。

 装備は十分に整えたと思ったけど、アトラ樹海は過酷で強力な魔物もいれば狂暴な野生動物もいて甘くはなかった。

 無詠唱で魔法が使えても、それは初歩的なレベルでアトラ樹海の生き物達には通じそうにはなくて、見つからないように静かに行動していた。


 「うん?あれは...あっウサギだ!何だか丸々して美味しそう」


 今まで大きな生き物しか見ていなくて手を出せなかったけど、ウサギなら私でも仕留められそうだった。

 矢はまだ何本かあるし静かに悟られないように狙いは頭か首に..今だ!

 やった.....仕留めた!


 放った矢は首に直撃していて、久しぶりの肉でお腹を満たせると思うと嬉しくなった。

 仕留めたウサギをカバンに吊るす。

 その時頭の上の方で何かの視線を感じた。

 巨大な蛇の魔物がこちらを覗いていて、恐怖と緊張感が限界を超えて逆に冷静になり考えが巡る。


 「こんな巨大な蛇どうすればいいの?助かるの?でもすぐ襲ってこないのはなんで?目が良くない生き物は動く物に反応するって言うけどその類かな、だったらこのまま動かないでやり過ごせるか...えっ狼?」


 グルルとうなり声をあげ、横の茂みの方から狼のような黒い魔物が現れてジッとしている訳にはいかなくなったが、頭上には巨大な蛇に睨まれており絶体絶命の状態だ。

 黒い狼の魔物が私に向かって走り出したが、その瞬間に蛇の魔物が上から狼に噛みつき丸のみにした。

 やはりジッとしているのが正解のようで、このままやり過ごそうと思ったけど黒い狼の魔物はまだ2匹もいたみたいで、今にも襲われそうで私は走り出してしまった。

 黒い狼の魔物はヨダレを垂らし目を見開き、ものすごい速さで追いかけてくる。

 この距離だと、数秒で追いつかれ食い殺されてしまうのは目に見えている...だが追いかけてきた黒い狼の魔物の1匹は、何か正体不明の生き物に横の茂みから襲われたみたいで残りは1匹になった。

 すると後ろから先ほどの巨大な蛇の魔物が追いかけてきた。


 「私じゃなくその狼を食べてください!お願いだからぁーっ!あっ!」


 突然足場が消え、岩がむき出しの崖を転げ落ちた。

 ゴロゴロと激しく落ちて左腕が岩に直撃し折れたみたいで、木や植物の枝や刺が体をボロボロに引き裂いた。

 崖の底の先には大きな岩がありぶつかって止まりはしたが、激しい痛みや深い切り傷と折れた腕など呼吸するのも激痛で虫の息だった。

 崖の上では、巨大な蛇が狼を捕まえていたのが見え逃げきれたようだったが、今の体の状態を考えると素直に喜べない。


 「痛いけど立てるかな?難しいか?うっ、やっぱりすごく痛いよ...でもここは安全なのかな、動かないとってあれ?うそ?お腹裂けてる.....」


 少女の一刺し指ほどの長さでへその下が横に裂けていた。

 血の気が引くくらいの量の血が、どばぁっと垂れてきて腸が傷口から漏れてくる。

 折れてないほうの右手でお腹の傷を抑え、大きな岩に体を押し付けながら時間をいっぱい使い起き上がるが、何もかも嫌になるくらい体中が痛いし意識が今にもなくなりそうだった。

 少しでも安全な場所に行こうとして、目線を上にあげ足を引きずりながら前へ進むが、力尽きて倒れこんでしまった。


「もうこれ絶対死ぬよね...秒読みだよね..あっもうだめだ..意識が......」


 少女は横たわりながら死ぬんだなと思った。

 目線の先には、太い木や細い木が無数の植物が密集した壁のようなもの見えたが、そのまま意識が消える。


 目が覚めると、最後に見た景色とは違う景色が広がっている。


 「生きてる?ボロボロのはずだったのに..折れた腕も裂けたお腹の傷も治ってるし...しかも裸だ..なんで?」


 痛みも体の疲れもないし気分も良いな。

 起き上がれるかな...おっ体が軽いぞ!

 それにしても、ここは不思議な場所だな。

 静かで穏やかで外の世界から遮断されたような場所で、地面は芝のような肌触りの良い草が濃い密度で生えていて中心には綺麗な泉があった。


 「綺麗な泉だな、水飲んでもいいかな?いや入っちゃえ!」


 バシャンと泉に飛び込み水を飲んだり泳いだりやりたい放題だ。

 美味しいし冷たくて気持ちい!

 はぁ~最高!

 でも、いくら気持ちよくても冷たいから風邪ひいちゃうよね。

 そろそろ上がろうかな。


 気分が良くなり草が密集した地面に上がりある事に気が付く。


 「体拭けないじゃん!どうしよ、風邪ひいちゃうよ...何かないかな?あ、あれって私のカバンじゃないかな?」


 やっぱり、私のカバンのようでボロボロで汚れていたけど、中を確認すると予備の着替えとタオルが出てきた。

 軽く洗わないと、いけないくらいには汚れている。


 「うん?てかこの骨は何...?小動物っぽいけどもしかして、あの時のウサギか?なんでこんなに白骨化してるんだろ..だとしたらどれだけ時間が経ってるんだ」


 とりあえず、裸のままだが周囲を見渡し手の届きそうな木の枝を折り薪を集め魔法で火を起こした。

 汚れた着替えやタオルを泉で水洗いし、枝で作った簡易的な物干しに服をかけた。

 絞ったタオルで体を拭き、焚火で体を温めながら起こった出来事を順番に振り返る。


 もしかして、私がずっと眠っていただけでかなり時間が経過していたのかな?

 そうじゃないと、ウサギの骨も本来なら致命傷なはずのお腹の裂けた傷や折れた腕だって...それでも説明がつかないけど、あと何故裸なのかはホントに分からない。

 そんな事考えていると、結構な時間が経っていて服が乾いたようだった。


 「あっ、乾いてる...肌寒いし服着なきゃ」


 さてと、周りを散策してみよっかな...ここは安全そうだけど念のために歩いて隅々確認しよう。

 壁になってる無数の木に沿って歩いてると古い小屋を見つけた。

 何かが潜んでる可能性も考えて小屋の壁の隙間から覗き込んでみたが、何もいなさそうだったので扉を開けてみた。

 中には古いカバンと無数の本が散らばっていて、本の文字を読もうとしたが見た事もない字で読めなかった。

 カバンの中を開けると、厚めのツルツルした肌触りの布に包まれた小さめの女の子の服と靴が出てきた。

 保存状態がかなり良くて新品にも見える。


「誰かここに居たのかな?でもこのサイズだと子供だよね」


 辺りを見渡したが、それらしい人の気配は感じない。

 だけど、ついさっき何もなかった泉の水面に魔方陣のような模様が浮かび強い光を放っている。


 「うわっ、眩しくて目が開けられないんだけど!」


 強い光を見てしまい、一時的に視力が大きく落ちて戻るまで時間がかかった。

 ゆっくりと目を開くと、泉は淡く光っていて真ん中に何かが浮かんでいる事に気が付く。


 「うん?泉の真ん中に何かいる?」


 淡く光る泉の真ん中に、人の形をした何かが浮いていた。

 よく見ると、小さな女の子のプカプカと浮かんでいる。

 溺れているのかと思い、とっさに飛び込み泉の真ん中まで急いで泳ぐ。


 「やっぱり、女の子だあの服の持ち主かな?」


 でも、さっきまで何もない泉だったのに...?

 とりあえず、焚火まで行って体拭いて温めなきゃ!


 「あっ服びしょ濡れだ、せっかく乾かしたのにやっちゃったな...もう一回脱いで乾かさないと」


 草の上に上がり、まず自分の濡れた服を脱いで木の枝の物干しにかけた。

 裸はやはり落ち着かない。

 次に女の子の体を拭いて焚火のそばに寝かした後、先ほど見つけた小屋に戻り服と靴を持ってきて着せてみたがピッタリだったので、この服の持ち主であるのは確かだと思う。


 「生きてるよね?心臓の音は...ちゃんとするし、耳が長いからエルフかな?」


 初めてエルフを見たけどすごく可愛い。

 髪が桜色で綺麗だし、肌も色白でスベスベもちもちで触っていて気持ちいい。

 12?13?いや11歳くらいかな...幼い事には変わりないな。


 エルフの子のほっぺを指でプニプニと突っついてるとパチっと目を覚ました。

 横になったまま、眠たげなジトっとした桜色の大きな瞳が目の前の私を見つめている。

 まずは自己紹介と思い自分の名前を言う。


 「えっと私はミルトって言うんだけど、あなたの名前はなんていうの?」


 エルフの女の子は、私の言葉が理解できていないようでキョトンとしていた。


 『あぅ?』


 エルフの女の子は、赤ちゃんみたいな返事をして私の事をジッと見つめてきた。

タイトルを変更して、少しでも読みやすくなるように書き直してます。

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