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魔王と勇者が死んだ後、俺が世界の主になる  作者: 我妻 ベルリ
第三章 仙船 大千郷の英雄編
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第49話 仙船大戦 〜激闘〜

 仙船 舵取り塔。


 羅刹の聖域発動から数十秒後。清寧(せいねい)平原から数十キロ離れた場所でありながら、既にその余波は届きつつあった。

 避難した市民達を守護するべく集まっていた、海蘭(かいらん)飛将(ひしょう)、そして(てい)一族の族長であり、夕源に長年仕えている艇・累冥(るいめい)がその異変を察知していた。


 「!?………これは」

 「伝説の羅刹の聖域…だろうね…」


 累冥の予想に海蘭の表情は凍りつく。


 「それって……!!」

 「大丈夫だよ」


 全員の頭の中に敗北と言う言葉が浮かぶ中、飛将だけは違っていた。


 「夕源達はそこまでやわじゃない。それに……私の弟子はそんな簡単にやられないさ」


 ○ ○ ○


 仙船 清寧平原。


 戦場は既に平原とは呼べぬ有様へと変わっていた。

 地面はひび割れ、瓦礫と砂煙が舞う中に兵士が倒れ込む惨状。

 その瓦礫の頂上。ひれ伏すように地面に這っている兵士を見て、心の底から笑っている羅刹が見下ろしていた。

 正真正銘の極悪人。まさに鬼神。


 羅刹の聖域「大地拍動(だいちはくどう)」。

 本来、聖域は自身の魔法を強化、または自身の得意な場で優位に立つ目的で使われる。

 つまり、戦いを有利に進めるためのもの。

 しかし、羅刹の聖域は必殺。発動した瞬間に相手を殺すものへと昇華している。

 

 大地がまるで拍動するが如く地面を揺らし、辺り一体を地獄絵図に変える。

 巨大な震動により、体の内側から破壊され、動けなくなったところを割れた地面、瓦礫に押し潰される。

 また、羅刹の持つ莫大な魔力量により、その効果範囲、威力も桁違い。

 まさに奥義に相応しい大技。

 

 大戦は既に終結を迎えたかのように見えた。


 彼以外は。


 「!?かっはははは!!やはりお前は立ち上がるか!小僧!」


 ノアは魔眼で既に羅刹の振動を見切っている。

 聖域発動によって、地震と瓦礫で多少のダメージを負ったものの、振動による体へのダメージは無い。それは、吾妻の守護魔法を受けていた全員も同じだった。


 ノアは混乱に陥った戦場で誰よりも早く羅刹とのリベンジを果たそうとしていた。


 「誇れ小僧。俺を封印したメシア騎士団にもこの奥義は使わなかった。あいつらは端から俺と戦う気などなく、封印に全振りしたやり方だった……。だが、お前達は正面からこの俺を殺すつもりで来た。幾年ぶりだ?この高揚は!」

 「なら、また正面から戦ってあげますよ」


 両者は構え、ただじっと互いを見つめ合う。

 呼吸、指筋の筋肉の動き、視線さえ逃さない。相手の隙をただじっと探す。


 そしてーー


 「二手破砕掌(にてはっさいしょう)!」

 「第五門 超圧咆線(オーバープレッサー)!!」


 羅刹の波動とノアの魔力光線が激しくぶつかり合う。

 拮抗した魔法の衝突は、互いに相殺し合う形で消える。

 すぐさま距離を詰めた羅刹に対し、ノアは剣と杖の二刀流の構えをとる。


 「なんだその構えは!笑わせる!(同時に扱えば必ず迷いが生まれる。その隙を逃すわけなかろうが!)」


 羅刹はノアの隙を狙い、正面から殴りかかる。

 魔法を使うか剣を使うか。その一瞬の迷いを逃すほど羅刹は甘くない。

 だが。逆にノアもその隙に気が付かないほどほど軟弱ではない。


 ノアは杖を羅刹の眼前に突き出すと同時に剣を振りかぶった。


 「水仙流 流水放閃(りゅうすいほうせん)


 ノアの鋭い横振りは羅刹の喉を切り裂く。

 喉元を切り裂かれ、呪文を唱えないようにされた羅刹は咄嗟に喉元を抑える。

 隙が生まれると言う確信を裏切ることで生まれた隙を逃すほどノアは甘くない。

 目の前に突き出したままの杖から、ノアは水を圧縮して光線のようにして放つ「第四門 水光咆哮(ラッジ・ダックァ)」を撃ち込んだ。


 魔法が直撃し、後方へ飛ばされる羅刹は、自身の想像を超えたノアに敵ながら感心までしていた。


 「(わざと隙を見せて誘ったな。喉を潰して追撃も塞いだか!)」

 「第五門!超圧咆線!」

 

 羅刹はもう一度光線が来ることを予想し、回避行動をとる。

 しかし、実際に放たれたのは斬撃。回避行動をとったことで反応が遅れたところを畳み掛ける。


 「くっ……!」

 「"聖域"……奥義というだけあって魔力の消耗も激しい。いや、それだけじゃない………魔法の使用もできなくなるんでしょ?」

 「!!(この小僧…そこまで……!)」


 ノアの推測は正しかった。


 仙人の奥義「聖域」。その場を自身の魔力で埋め尽くし、戦場で圧倒的な優位性を獲得する広範囲魔法。

 その代償として、魔力を大量に消費することと、高度な魔力操作を要する為、聖域展開後は魔力の操作能力が著しく低下し、魔法の使用が出来なくなる。


 それを見抜いたノアは敢えて接近戦に出る賭けをした。

 仮にもノアには「震動」は通じない為、一か八かというより、ほぼ確実にダメージを与えられる確信があった。


 「(聖域後にこの猛撃…。傷の治りも遅い、不利にあるな…だが!!)」


 ノアの腹部に二発の拳がめり込む。更に羅刹は体術でノアに反撃を仕掛ける。


 「(ダメージを負って、魔力も消耗してるのはお前も同じ!純粋な体格で敵うはずがない!)」


 4本の腕から迫り来る打撃にノアは押される。

 

 「くっ!アス!クミさん!」

 「っ!?」


 背後から現れた二人の剣士。背中に傷を与え、ノアの横に駆け寄った。


 「お待たせ、ノア」

 「こちらもですが、あっちも大分ダメージを負っていますね。このまま畳みかけます!」

 「はい!」

 「はい!」


 3人は同時に駆け出す。

 三方向からの同時攻撃。4本の腕でも限界があった。


 「ぐっ!!」

 「刀神流 絶空(ぜっくう)!」


 クミさんの練撃が羅刹の体を切り裂いて行く。全身に傷を負い、怯んだところに二人で同時に技を繰り出す。


 「「水仙流 流水放閃!!」」


 息をぴたりと合わせた斬撃は強靭な鬼神の肉体を抉る。

 完全に羅刹の動きが止まり、3人同時の攻撃を仕掛けたその時。羅刹は右足に魔力を流し、それを地面へ踏み込むと同時に流し込む。

 地面は揺れ、一瞬足元が狂う。

 ノア達の攻撃を防ぐのではなく、回復に全神経を注いだ羅刹は、魔法の使用を回復させていた。

 

 「まずは貴様だ!」

 「なっ!?」


 羅刹はまずアスを狙い、拳を振りかぶる。

 この場で羅刹の「震動」を防げるのはノアただ一人。

 それを素早く理解し、ノアは自分とアスの位置を転身魔法で入れ替える。

 羅刹の拳を躱し、杖を羅刹に向ける。


 「第四門 水光咆哮!」


 そう唱えながら放ったのは「第一門 魔法連射銃(マジックマシンガン)」。

 無詠唱での魔法は、詠唱と魔力操作を完全に切り離す事ができる。

 

 「(ハッタリ!!狙いは確実な一撃より……)」


 羅刹に連射を浴びせる中、クミとアスは次の技を出そうと構えている。


 「(第二撃!こいつらが本命か)」


 師弟による連携攻撃に、羅刹の集中力と体力は削られていく。

 クミとアスの攻撃が目の前へ迫る中、羅刹は更に魔力出力を上げる。

 クミとアスの一撃に辛うじて反撃し、二人に震動を与えた。


 「ぐはっ!?」

 「うっ!!」


 二人は吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。二人はすぐには動けない。

 三対一の構図から、またもや一対一へ戻る。

 ノアは覚悟を決めて魔力を杖に込める。

 その時、羅刹とノアの間に巨大な矛が振り落とされる。


 「夕源さん!!」

 「待たせたね!さぁ、反撃だ!!」


 羅刹の背後、瓦礫の中から姿を現したのは、香薬(かやく)とジン、アニーナ。

 アニーナの放った矢が羅刹の不意を射る。


 「突風(ガスト)(ショット)!」

 「くっ…!?」

 「スペシャルバージョンだよ、厄災様」


 先程は簡単に防がれていた矢が、今は羅刹の肉体を抉り、深く突き刺さっている。


 「(何が起こった?こんな矢が刺さる訳がない…。あの魔力量と力はどこから……)」


 羅刹の思考は1秒にも満たない。

 だが、その1秒は戦場で命取りである。


 「おらぁっ!!」

 「刀神流!旋風刃!!」


 ジンの斧と香薬の剣技をくらい、またもや予想外の威力に羅刹の体が後方へ飛ぶ。


 「(この雑魚どもも力が増している。何より接近戦に来るということは…!!)」


 羅刹は周囲一帯の魔力を探る。その中に一つだけ他人に魔法をかけている人物を見つける。


 「また貴様かぁ!吾妻総一郎ぉ!!」


 吾妻のかけた魔法は、先ほどの守護魔法とは違い、身体能力、魔力を底上げするサポート魔法。それによって、アニーナ達も攻撃が通じるようになっていた。

 接近戦以外はなんでも出来るというクミの言葉通り、吾妻総一郎のサポート魔法で、不可能はほぼ無いに等しい。


 「ここで終わらせる!羅刹!」


 夕源さんの天元楊騎(てんげんようき)が矛を羅刹に振り落とす。

 大地が揺れるほどの一撃が鬼神を追い詰める。


 「クミさん!攻撃を合わせて…」

 「図に乗るな…下等共がぁあ!!」


 羅刹の両足から大量の魔力が流れ出す。地面がまるで荒波のように波立ち、立っていることすらままならない。


 「この力…どこに隠し持ってたんだ…!?」


 ジンの独り言に全員が同感していた。

 あと一歩だと思えば思う程、羅刹は出力を上げてくる。


 戦いは長引きつつある。互いに激しく消耗し合い、限界が近い。

 ノアはそれを悟り、波立つ大地を駆け抜ける。


 「小僧ぉ!決着をつけてやる!来い!!」

 「ええ!終わりにします!!」


 ノアは無詠唱で魔法弾(マジックバレット)を放ちながら、剣に魔力を込める。


 「吾妻さん!僕にも!」

 

 その言葉たらずな叫びを、吾妻は瞬時に理解し、魔法をかける。

 クミ達にかけているサポート魔法。それをノアにもかける。

 互いの体力、魔力から考えても最後の戦い。

 一対一に持ち込んだノアは波立つ大地を駆け下り、魔力を込める。それを察知した羅刹も4本の腕に魔力を集中させる。


 「四手破砕掌(しではっさいしょう)!!」

 「第五門!!超圧砲線(オーバープレッサー)!!」


 光線と震動。互いが激しくぶつかり合い、大地は大地と呼べぬほど荒れ狂い、衝撃は戦場を飲み込み、仙船自体が揺れる程だった。

 

 砂煙でIメートル先も見渡せない。

 そんな中、クミ達はノアの生死を確認すべく、倒れた体を起こす。

 砂煙の中から姿を現したのはーー


 「あの才能……殺すには惜しかったか?なぁ、クミ・ヴィバール」

 「ら、羅刹…!!!」


 全身に深い傷を負い、上がった息を整えている。

 クミの脳裏に最悪の事実が浮かぶ。


 ノアが負けーー


 「水仙流……」

 『!?』


 全員の予想を裏切り、ノアは地面に転がる瓦礫と自身を転身魔法で入れ替え、攻撃を回避していた。

 羅刹の背後へ瞬時に現れたノアは剣に全ての魔力を込め、鞘からその全てを吐き出す。


 「覇鯨(はげい)!!!」


 抜刀された刀身は、羅刹の無防備な肉体を斜めに斬り上げた。

 鮮血が吹き出し、厄災は片足を地につける。


 「ノア…!!」


 アスは思わず彼の名前を読んでいた。共に旅を続け、夜宵(やよい)の力の影響で変貌したノアは、齢11歳で厄災を討ち取った。


 そう思っていた。


 「ごぉれぇしきでぇ!!!!」


 羅刹は立ち上がり、血がドバドバと流れる体をものともせず魔力を高める。吐血しながらもこちらに向けて叫ぶ姿は、この世のものとは思えない。

 全員が戦慄する。

 確実な致命傷を受け、今まさに決着がついたかと思われた厄災は、死に際で船を沈めんとしていた。


 「これから行うのは完全詠唱、手印を施した完全なる聖域だぁ!!この船ごと沈める威力!さぁ!!生き残ってみせろぉ!!」

 

 4本の腕で手印を結び、呪文を唱え始めた。

 この聖域を発動されてしまえば、勝った負けた関係ない。この船が沈み、全員死ぬのみ。


 全員が最悪の未来を想像しざるを得なかった。


 その時ーー


 大地が再び唸るように揺れる。

 しかし、その揺れは羅刹の「震動」ではない。

 もっと巨大な魔力が目覚める兆しであった。


 「なっ!?これは……?」


 全員が正体不明の揺れと魔力を感じとる。

 羅刹のみが何かを悟り、聖域の為に高めた魔力を静かに鎮める。

 突然勝負を諦めた羅刹は、空を見つめ独り言を溢す。見つめる先は羅曜と丹玄(たんげん)が戦っていた場所。


 「羅曜…そうか……。混沌を呼ぶ龍の目覚め……ここで終いか…」

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