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魔王と勇者が死んだ後、俺が世界の主になる  作者: 我妻 ベルリ
第三章 仙船 大千郷の英雄編
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第42話 夢廻り〜ハクチュウム〜

 青年の名前は(れい)丹玄(たんげん)

 飛将さんが数年前に孤児だったところを保護したのだと言う。

 家族は居らず、道場で世話をしながら剣を教えていた。

 この数年で彼は実力をつけていき、夕源(ゆうげん)さんに認められて天護軍(てんごぐん)中将(ちゅうじょう)まで上り詰めたのだとか。

 現在は夕源さんの指示で不信者の捜索と、鳳老院の監視をしているらしい。

 

 「ノアくんは丹玄に会ったのかい?」


 飛将さんは首を傾げてそう聞く。

 思わず声を上げてしまったが、此処では初めてなんだ。知らないふりをしなければ。


 「い、いや〜?白い髪の人を昨日繁華街で見かけたな〜?と思って」


 飛将さんの視線が痛い。流石に適当な嘘だとバレたか?


 「そうなのか!まぁ目立つしな!アイツ!」

 

 よ、よかった〜!バレてない!


 …これでなんとなくわかった。僕が何故病室で襲われたのか。

 恐らく、丹玄さんは不信者…謎の人物を探していたのだ。

 謎の人物も白髪の青年も病室でしか見ていない。つまり、2人とも病室に用があったんだ。

 謎の人物は、アスを魔物化させようとしている。丹玄さんはそれを阻止、あるいは謎の人物の捕縛しようと動いていたのかも知れない。

 そこに居合わせた僕を謎の人物だと勘違いして殺していた。これなら、突然僕が襲われる理由が理解できる。

 つまり、

   白髪の青年→丹玄さん 敵じゃない

   謎の人物→敵

 こう言う事になる。

  誤解さえ解ければ協力関係に持っていけるかもしれない。

 ようやくこの繰り返しにも希望が見えてきた。


 ○ ○ ○


 48回目。

 

 仙船へ来て、夕源さんへ挨拶するタイミングで僕だけその場に残った。

 舵取り塔の部屋で夕源さんと2人きり。相手はただ困惑してる様子だった。いや、クミさん達も同じ顔をしていた。


 「どうしたんだい?ノアくん。皆んなと行かなくていいのかい?」


 夕源さんの問いかけに僕は何も答えない。少しの沈黙の後、僕は覚悟を決めて話す。


 「48回目です」

 「…ん?な、何がかな?」

 「この時間を、僕は48回繰り返してます。『廻夢龍譚(かいむりゅうたん)』と同じ…って言ったらわかりますか?」

 「…!」


 夕源さんはハッとした様な顔をした後、眉を(ひそ)める。まるで何かを察したかの様だ。

 僕はそのまま畳み掛ける様に質問をぶつける。そこには多少八つ当たりも入っていたかもしれない。

 このループには少なくとも(えい)一族が関わっている。夕源さんは直接的には関わってなくとも、何か情報は持ってるはず。なら、それを今此処で洗いざらい吐いてもらう。


 「あれは実話ですよね?何か知ってるんでしょ?全て話してもらいますよ」


 夕源さんは口を開こうとはしない。ただひたすらに口を閉ざす。

 段々と僕の中で何かが沸々と湧き上がってくる。


 「48回目ですよ?48回の死を経験したんだ。何度やっても慣れない痛み、恐怖を味わい続けてきたんだ!あなたがなにも知らないはずないでしょ!?結朝さん、夕源さん。あと1人『夜』の字が入った人が居るはずだ。その人を教えろ!!」


 僕の荒々しい声が部屋中に響き、さざ波の様に消える。反響した声を聞いて初めて上がった息を落ち着ける。

 夕源さんは変わらず顔を顰めたまま。

 部屋に沈黙が訪れる。途方もなく長い時間を過ごす気分だ。

 その沈黙を破る様にようやく夕源さんが口を開く。


 「……まずは謝ろう。君をそこまで追い詰めてしまって申し訳ない。一族を代表して君に謝罪する」


 一族を代表する。それはつまり、このループはやはり『廻夢龍譚』と同じ(えい)一族のものという事。それに僕は巻き込まれたことを指す。


 「なんで僕はこんな事に?」

 「それについてなんだが…原因はわからない。繰り返される時間から解き放たれる術を知らない。僕は力になれないんだ」

 「あなた達一族の(じゅつ)では無いんですか?」

 「正確には一族ではない。僕は護神の力。結朝は治癒の力…」

 「『夜』の名を関するもう1人……ですね?」


 夕源さんは小さく頷く。

 やはりもう1人の術。僕のループは「廻夢龍譚(かいむりゅうたん)」通りなんだ。

 だとしたらその人物は…?


 「もう1人の名前は「(えい)夜宵(やよい)」さ。僕達は三人兄弟なんだ。僕も久しく見てないよ…ここ何百年間姿を隠してるんだ…。だから、僕も、誰も彼を見てないんだ。君は知らぬうちに彼に出会い巻き込まれた事になる。僕達にもそれを解放させてあげられない」


 申し訳そうに頭を下げる姿に、僕の怒りは自然と熱をひかせていた。

 謎は解明できても、解放される事はない。

 だが、今はそれで良い。

 ただひたすらに時間が欲しい。全ての時間を力を変換し、必ずループ後の結果を変える。

 まだ僕には変えられる力がない。


 僕はまだ足りない。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○


 ○ ○ ○


 ○



 ◾️◾️◾️回目。


 既にノアは自身が何回目のループなのか、何回自殺を試みたのかを把握出来ていない。

 その数、約500を優に超えている。

 約一年もの間、ノアは一回も休む事なく自身の修行へ費やし、その実力は既に別人へと変わり果てていた。

 

 何度も繰り返した仙船の2日目。

 夕暮れ時の繁華街は賑わい、周囲からは子供の遊ぶ声、店主のよく響く声、様々な声が聞こえてくる。

 人混みの中を割くように僕は淡々と歩く。その雰囲気には似合わない僕の存在はどこか浮いて見えるだろう。

 繁華街を歩くと、前に華やかな舞台が見える。集まる人々は煌びやかな舞台上を眺めている。

 僕はその中を息を殺して進み、1人の男の腕を掴む。

 その男は紫髪の顔の整った男だった。


 「久しぶりですね(もく)月旦(げったん)さん。いや、(えい)夜宵(やよい)さん」

 「………ついに見つけ出したんだね」


 この人だと確信したのはもう随分と前だ。と言うのも、彼と出逢ったのは1回目の時。ループする前に出会った後、彼と話す事は無かった。必然的に誰かは突き止められた。

 勿論、確信は無かった。が、既に僕の中に失敗することと言う恐怖は消え去っていた。


 「時間がありません。来てもらえませんか?」

 

 それだけ言うと、夜宵さんは何かを悟ったのか僕の後をついて来る。

 そのまま歩き続け、僕達は夕源さんの居る部屋へ向かった。


 「やあ、ノアく………夜宵………?夜宵か!?」

 「ああ、久しぶり……だね兄さん」


 長い間空いた時間は2人を簡単には近づけない。しかし、もう遠ざかる事はない。

 

 「お二人とも!時間がありません!夕源さんは今動けるだけの軍を繁華街へ!あ、あと吾妻さんも呼んでください!」

 「な、急になんだい?突然軍を動かすって…。それに君がなんで吾妻くんが来ていることを?」

 「説明は後です!すぐにお願いします!夜宵さんはこのループの解除を」

 「……すまない。出来ない」


 その一言を聞いて、絶望感を味わうどころか、この状況を僕は予想できてしまっていた。

 もう何も感じない。


 「僕も解除方法が見つからず、この何百年間1人で魔法を抑えていたんだ。でも、君と出逢った瞬間、魔法が発動してしまった。止まることのない時間のループを君に課してしまった。本当に……すまな…」

 「良いです。解除出来ないんじゃないかって思っていたので…。でも、僕は変わらない運命を受け入れる気はありません。夜宵さん、空舟(くうしゅう)は運転できますか?」


 ○ ○ ○

 

 舵取り塔から飛び立った空舟は繁華街の上を優雅に飛ぶ。

 丁度その時、繁華街から爆発音が聞こえる。

 アスだ。

 繁華街は黒煙と炎に包まれ始め、人々の叫び声がここまで聞こえてくる。夜宵さんもその光景を目の当たりにして、顔を歪める。

 その中、僕は沈みゆく夕焼けを眺める。何度も見た地獄のような街並み。見慣れた…と言ったら怒られるだろうか。

 実際に僕は何度も見て、何度も死んだ。今は街よりも自分の目的に集中したい。


 アスを無力化してこの夜を越える。


 それだけを考えて僕は空舟の縁へと腰掛ける。


 「ノアくん?そこは危険だよ!このまま飛んでいると、こっちまで危険に」

 「夜宵さんは見ていてください。繰り返した末の結末を」

 「え?ちょっーー」


 そのままダイビングするように体を宙に投げる。

 浮遊感と風を感じて僕は繁華街へと落下する。その先には魔物化したアス。


 ようやく君を助けられるよーー


 ノアは地面に勢いよくぶつかるかと思たが、空中で体勢を変え、腰に帯刀した剣と左手に握っていた杖を構える。

 そして、無音で魔法を発動し直径約50メートルほどの水の塊を作り出す。

 その魔法と同時に、ノアの眼光が鋭く光り、禍々しい魔力を放つ。



 魔眼 再眼(さいがん)の発動。


 

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