関西人とツッコむ異世界転生
勇ましい、西洋太鼓の連打で目が覚めた。
暖けぇ、暖けぇよぉ…
…で、ここどこ?
***
“親譲りの無鉄砲”とやらで、損してばかりの人生だ。
挙げ句、よそのお子さんを助けて車にはねられた――といえば聞こえはいいが、“幼い息子を残して死んだクズじゃん!!”って話でね…。
余談だが、俺の親父と妻の父親も、似たような最期だったらしい。息子は長生きするよう、切に願うばかりだ――
***
「おめでとうございます! あなたは20万人目の異世界転生者に選ばれました!!」
「…はぇ?」
いきなり後ろから、新人アナウンサーみたいな女性の声がして、変な声が出た。
さらに、なんか豪華なファンファーレが流れだした。
で、声がしたほうを振り返ったら…
金髪碧眼の若い女が、中腰でこちらを覗きこんでいる。
…何これ? 夢でも見とんか俺は??
「お初にお目にかかります。私、ネメシスと申します。そちらで言う“あの世”を管理する神です」
彼女はそこで、一旦言葉を切った。
白いドレスのスカートが、ひらひら舞う……アンタ今、何でターンなんかしたんや?
「転生特典として、あなたには異世界最強の生物に転生していただきます。それではまず、転生先の世界について…」
…さっきからずっと、何わけ分からんこと言うてんねや、この人は?
“異世界転生”ねぇ…。
早死にした同級生が実は……みたいな噂は聞くけど、噂は噂。
やっぱ胡散臭い。新手の詐欺にしか思えん…。
あと、この人の後ろに見えとる、デカい油絵も気になるんよな~。縦横2mずつぐらい?
で、抽象画って言うんやっけ? 絵の具の塊をばちゃあ! べたあ!! …って投げつけたみたいな、意味分からん絵や。
何描いとんかさっぱり分からんとこが、いかにも“現代アート”って感じ……やねんけど、全体に暗い色味なんが、不気味や。ど真ん中とか真っ黒やしな…。
「…こちらです!」
あ、説明終わったんか。長かったな~。
女が油絵を指すと、絵の中の黒い塊が動きだした……は?
「ゑ?」
で、絵から出てきて、どべちゃあ!!って地べたに墜ちた。 …て思とったら、ぶくぶく膨れ上がった!?
嘘やろ? 何この生き物??
3mはありそうな、漆黒の巨体。丸みを帯びた、その全身を伸び縮みさせとる。
体には3か所、巨大な糸くずのような物がついとる。それぞれ赤、青、黄色で、カラフルや。でもゴミやない、こっちも不自然に伸び縮みしとる。本体(?)の意志で動いとるみたいや。
…そんな謎生物が、どんどんこっちに寄ってくる。ズルズル……ベチャベチャ……て、うるさい音を立てながら。
いかにも不快な見た目と音に反して、無臭。何の匂いもせえへんのが、ますます不気味や。
…いや待て! 何する気や!?
「や、やめろ! 来んなぁ!!」
「大丈夫ですよー、痛くありませんからねー」
まともに息ができん。苦しい。
もう、痛いどうこうの問題やない! けど聞く耳持たずや…
生き物はガバアッ! って口開けて……口?
これホンマに口なんか? 中、真っ黒で真っ暗やねんけど??
おかしい、なんで光が反射してないねん!?
…あ、アカン! 喰われる!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!!!」
お読みいただき、ありがとうございます。
続きは特にありません。ご了承ください。
彼の第2の人生(?)に、幸あらんことを祈って…
【追記】一部修正しました
(2024/11/11)