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想起回顧譚  作者: なやし
7/7

07.過去

遅くなってしまいました。

申し訳ないです。

忙しいのは落ち着いたので月1~2で更新できるように精進します。

「王国が大きく変わったのは五年前のことだから、お前たちが知らないのも無理はないがな。

五年前に何があったか、今に至るまで正確に伝わっていないことがあまりにも多い。まずはそこから話そうか。」

ライラは神妙な面持ちで話を続ける。

「五年前までこの国プロステアは君主制で国王により統治されていた。

当時は今以上に国が活気に満ち溢れて、魔力核(コア)も今ほど流通しておらず平和そのものだった。

魔術師会も発足したばかりで国防のほとんどは王国騎士団が担っており、私はそのころ宮廷侍女として幼いカタリナ様の身の回りの管理をしていた。

当時の魔術師会員は魔術師会に所属しながら、それぞれが別の仕事に就いていた。

油断していた、平和ボケというほかないだろう。」

ライラは悔しそうに拳を握りしめている。


「あるときを境に国王が圧政を敷くようになり、プロステアの国民はみるみるうちに疲弊していった。

今にして思えばこの時すでに国王は操られていたのだろう。」

そんなとカタリナが小さな声でつぶやく。


「お父様は操られていたのですか!?」

驚きのあまりカタリナが飛び上がる。カタリナも今まで知らなかったのだろう。


「おそらく。私もこの目で見たわけではないのですが、目撃した者が証言しておりました。

このことは当時の魔術師会員と王国騎士団の一部しか知りません。」

力が抜けたようにカタリナが座り込む。


「国民の不満は募る一方で国を後にする者も多く、残った者の負担が増える悪循環だった。

私たちも何かがおかしいと国王に謁見を求めたがことごとく拒否され為す術がなく、時間だけが経っていった。

そうこうしている内に、国民の間で王族に対する反乱を起こそうとする動きが起こった。

始めのうちは国王兵により速やかに鎮圧されていたが、数で圧倒しだした反乱軍は簡単に止められなくなった。

そして、国王兵と反乱軍による内戦が発生し、内戦は国王が討たれることで終わりを迎えた。

両軍共に多大な犠牲を出し栄えていたプロステアは見る影もなくなっていた。」

拠点には先ほどよりもさらに重い沈黙が流れる。


「私たち魔術師会も国王を信じ切ることができず、救護に回りながら中立でいることしかできませんでした。

幼かったカタリナ様を国外に逃がすことが精いっぱいで申し訳ありませんでした。」

ライラはカタリナの方を向いて頭を下げた。


「あの時、そんなことがあったんですね…。あなたのおかげで私は助かったのです、感謝こそすれ、恨むことなどありませんよ。」

カタリナは涙を流しながらライラに頭を上げるように言った。


ライラは顔を上げ

「カタリナ様がお元気そうで何よりですが、国民の中には未だに王族への恨みが消えていない者も少なくはないです。ですから、この国から離れたほうがよろしいかと。」


「歓迎なんてされないことは分かっていました。間違っても復讐しようなんてことは考えていません。

ここに来たのは欲しいものがあるからです。」

カタリナの顔はさっきとは変わって決意に溢れていた。


「欲しいものとは?」

ライラが聞く。


魔力核(コア)です。あの時のように何もできないで逃げるばかりなのはもう嫌なんです。」

力強い声で言った。


「なるほど…。要望はわかりましたが、魔力核(コア)は簡単に手にできる物ではありませんよ。

それに魔力核(コア)については研究が進められているがわかっていないことの方が多い。

本当に魔力核(コア)が欲しいのであれば死地に飛び込む覚悟が必要ですよ?」

脅しをかけるようにライラが言う。


「簡単にはいかないことは分かっているつもりです。できることは何でもやります、力を貸してください!」

そう言いながらライラに頭を下げた。


「………。昔から頑固なところは変わっていませんね。分かりました、できる限りのことは協力します。ただ、忘れてはいけません。力を手に入れることが全てではないことを。」

そう言われ、カタリナは飛び上がり喜んでいた。


やれやれとライラは言葉を続けた。

「とりあえず、昔話はお終いだ。この話は口外しないように頼むぞ。

ドレイクと….

そういえば、名前も聞いてなかったな。」

苦笑いしながらこちらに話を振ってきた。


「分かりました。ライラさん、誰にも言いません!」

ドレイクにも事の重大さが分かったようだった。


「エリックだ。何かあったとは聞いていたが想像以上だな。」


エリックね、とライラは呟き

「それで、かなり話がそれていたがお前たちの要件は何だ?」


「要件は渡した手紙に書いてあったんだが……。口頭で伝えるよ。」

エリックは不満そうに言った。


「あぁ、これか。」

手紙の破片にライラが魔力核(コア)の力を使うと、手紙は元に戻った。


エリックはなにが起こったか分からなかったが、ライラは手紙を読み始めた。

「エリック、お前記憶喪失なのか。へぇー、魔力の制御ね。あとは、地名か…。先生に聞いてみるか。」

手紙を読みながら独り言を呟いている。


「よし、要件は分かった。いったん、外に行くぞ。全員ついてこい。」

ライラはそう言い立ち上がった。


さっきまでとは売って変わってひとりでドンドン話を進めていく。とりあえず、ついていこうか。




そのまま王国の外まで移動した。辺りには少し離れたところに崖がそびえたっている。

「よし、この辺でいいか。エリック、アキ村を出てから能力は使ったか?」


「使いはしたが、アキ村の時のようには使っていない。体に纏って使ったくらいだ。」


ライラは少し考えて

「ドレイクと戦ってたときのアレか。じゃあ、それから見せてくれ。」


分かったと頷き魔力核(コア)を右手に力を込める。あの時のように右手に盾、左手に剣を。

カタリナも興味津々に見ている。


ライラは

「大きさは変えられるのか?ちょっと試してくれ。」

と言った。


頭の中でイメージする。両手の剣と盾が大きくなるように。

「できた。両方ともさっきよりも大きく、重量は変わらないみたいだ。」


「なんだ、制御できてるじゃないか。まずは自分の魔力核(コア)で何ができるのか確認することだな。

だったら、次はアキ村のときのように崖に向かって放ってみてくれ。」


ライラは簡単に言ったがあのときのことは少しトラウマになっている。剣と盾を解除し、呼吸を整える。

崖に向かって右手を前に突き出す。

右手に魔力を集めるイメージをする。指先に魔力が集まってくる。


「いったん、そのままストップだ。頭の中でイメージしろ。魔力核(コア)の扱いはイメージ次第だ。」


ライラの指示通りにこの大きさで止まるようにイメージする。形を作れたんだ留めることもできるはずだ、そう頭の中で言い聞かせる。


指先の魔力は大きさをキープしたまま止まった。できた、達成感がこみ上げる。


「よし、できたな。次は自分の限界ギリギリまで溜めてみろ。前に倒れたのは自分の限界が分かっていないからだ。限界を自分で見極めろ。」


よし、魔力の制御はできている。使うごとに上達している。

指先に集中し、さらに魔力を集める。前のような焦りはもう無い。限界まで魔力を溜める。

指先の球はどんどん大きくなる。感覚的にはここが限界だ。球の巨大化が止まった。


後ろからライラの声が聞こえる。

「そこまでだな。そのまま崖に向かって放ってみろ。後始末はしてやる。」


集めた魔力を放つ、アキ村の時のように。

指先から放たれた魔力は崖に向かって一直線に進んでいく。

地面、そして崖を抉りながら真っすぐ進み続け、崖を貫通し魔力は散った。


後ろでライラが笑っている。

「ハハハ、ふざけた力だ。洒落にならんぞ。」

そう言いながら地面に手を当てている。

すると、先ほどまで貫通していた崖がみるみるうちに元に戻っていった。景色はなにもなかったかのように元に戻っていた。


となりに来たライラは

「流石にこの規模は疲れる。聞いていた以上じゃないか。ますます逃がすわけにはいかなくなった。

もうすぐ日が暮れる。今日のところは終わりだ、帰るぞ。」

といいながら肩をつかんできた。


後ろを振り返るとカタリナは驚き目を見開き、ドレイクは悔しそうな顔をしていた。

そのまま拠点へと帰ることになった。




「いやー、すごいなお前の魔力核(コア)あんな威力初めて見たぞ。まぁ、お前の魔力量が多いからこその力だな。

ところで魔力核(コア)ホルダーはジルの野郎に貰わなかったのか?」

拠点に戻るとライラはご機嫌に話してきた。


魔力核(コア)ホルダー?貰ってないぞ。」


「だったら、これやるよ。ここに魔力核(コア)を嵌めて使うんだ。イメージはしにくくなるかもしれんが、こっちに慣れておくと両手が空くからな。」

ライラはそういって穴の空いたブレスレットをくれた。早速身に着ける。


ライラに感謝を伝えると

「こっからが本題なんだけど、エリック魔術師会に入れ。ちなみに拒否権は無い。」


突然のライラからの提案に少し戸惑った

「条件がある、記憶を取り戻すのを手伝ってほしい。それさえ達成できるならなんでもしよう。」


「交渉成立、まずは地名のことだな。安心しろ、さっきドレイクに先生の所に明日拠点に来てもらうように言伝を頼んでおいた。拠点は空室もあるし好きなように使ってくれてかまわない。」

それを聞き、周囲にいたグラムとカタリナは早速風呂に入りに行くようだ。


「なにからなにまですまないな。」

再度ライラに感謝を伝える。


「最近は地震もあったし、人手が増えるのはこっちとしても助かる。やってもらいたい仕事もあるしな。

また、明日から忙しくなるだろうから今日はゆっくり休んでくれ。」


分かったと答えるとライラは拠点を後にした。


今日は朝から散々な目にあった。強引な方法ではあったものの、当初の目的は達成できた。

明日フランシアについて何か分かればいいんだが。


また一日が終わる。一歩ずつだが進んでいる、そう信じて。

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