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想起回顧譚  作者: なやし
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04.邂逅

「起きろー!」

グラムの声で目を覚ます。朝から元気だ。


宿を後にし、次の町へ向かおうとしていると村長のエドガルが声をかけてきた。

「王国まで行かれるのですか?」


「うん、そうだよー」


「でしたら、丁度王国に戻る馬車がありますので、よろしければそちらに乗っていただけませんか?」

「昨日のこともありますし、護衛も兼ねていただけると助かるのですが。」


願ってもない話だ。

歩きで行くよりもかなり時間の短縮になりそうだ。

「ほんとー!ありがとー!」

グラムも嬉しそうだ。


「でしたら、こちらへどうぞ。馬車を待たせていますので。」

村長について行き目的の馬車へ到着した。


「あんたらが護衛してくれるのか、よろしく頼むぜ」

御者が声をかけてきた。


「ああ、こちらこそよろしく頼む、俺はエリックだ。

 そしてこっちがグラムだ。」


「俺としたことが名乗るのを忘れてたぜ。

 俺は御者のホブだ。」

ホブはガハハと豪快に笑った。


「では、私はこれで。みなさん、お気をつけて。」


「なにからなにまでありがとう。助かったよ。」


「これくらい当然ですよ。助けられたのはこちらですから。それでは。」

そう言い残し、エドガルは去っていった。


「いつでも出られるが、もう出発してもいいのか?」


「ああ、問題ない。」


「それじゃ、荷台に乗り込んでくれ、出発するぞ」

荷台には少しばかりの荷物が置いてある。グラムと荷物が置いてないところに腰掛けた。

そのまま馬車は出発し、タナリ村をあとにした。


少し落ち着いたところで地図を見る。

王国まではあと二つの町を通る必要があるようだ。


ヤルガン町とノヒータ駐屯地という場所らしい。

「ホブ、ヤルガン町とノヒータ駐屯地ってどんな場所だ?」

現役の御者に聞けば間違いないだろう。


「なんだ、行ったことないのか?

 そうだな、ヤルガン町は都会だな。まぁ、王国には敵わんがな」

「ノヒータ駐屯地は言葉通り駐屯地だな。王国騎士団の基地だ。面白い場所でもないから用がない時は素通りするな。」

いい終わりガハハと笑っていた。


「王国に着くまでどのくらい時間がかかるんだ?」


「そうだな、町でそれぞれ一晩過ごすなら三日目の夕方、野営をしながら行くなら二日目の昼過ぎには着くと思うぞ」

「嬢ちゃんと話してどっちがいいか決めといてくれ」


「そうか、ありがとな。決めたら言いにくるよ。」

礼を言い荷台に戻る。


グラムに、ホブが言っていたまま説明した。


「んー、リスクはあるけど野営の方でいいんじゃない?魔物が襲ってきたらエリックが守ってくれればいいよ」

荷台で転がりながら言う。


「分かった、じゃあそれで。

ヤルガン町に着いたら少し見て回ってもいいか?」


「いいねー、わたしもついていくー」

相変わらずゴロゴロしている。


方針を決めたところで、ホブに伝えた。

「分かった、ヤルガン町に着いたら少し休憩だな!」

「このスピードで行けば昼過ぎには着きそうだ」


その後、馬車は順調に進み続けホブが言っていたように昼過ぎにはヤルガン町に着いた。

町の入り口から今までの村にはない活気を感じる。

「よし、馬車はここに止めておくから用事が終わったら来てくれ。」


ホブと別れ、グラムと一緒に町を見て歩く。

右にも左にも店が並んでいる、順番に見て回りたいがあまり時間もかけていられない。


「ねー、エリックは何を見たいのー?」

グラムもテンションが上がっているようで、目を輝かせている。


「そうだな、本を見にいきたい。」


「本?何のー?」

少し嫌そうな顔をしている。


「昨日魔物の話をしていたろ、俺も知っていた方がいいと思ってな、魔物の本を見にいきたい。」


そんな話をしながら歩いていると本屋を見つけた。

「わたしは店の前で待ってるねー」

グラムはあまり本が好きではないようだ。


さっそく店の中へ入る。どうやら誰もいないようだ。

とりあえず見て回ることにした。店はそこまで広くないが、目当ての本を見つけるのは骨が折れそうだ。


それにしても本の整理がされていない。

まるで崩れたように本が山積みになっている。

?本の下から手が出ているのが見える。


そこで、誰かが生き埋めになっていることに気づく。

急いで上に乗っている本をどかす。

すると、老婆が姿を現した。


「うーん、本に埋もれて死ぬところじゃったわ。

 それも悪くないがの。」

意識はあるようだ。


「助けてくれてありがとうな。ここで、おぬしがワシを助けたのも運命じゃな。」

ずいぶん変わった人のようだ。


「して、何の本を探しに来たんじゃ?」


「魔物について書いてある本を見にきた。

 いろんな種類が載っているといいんだが。」


「任せなさい。丁度、いいものがあるんじゃよ。

 この間商人から買い取ったんじゃ。誰が書いた本かは分からんが、大陸中の魔物の情報が書かれておる。」

棚から本を取り出した。


「これも何かの運命じゃ。料金はいらん。これを持っていってくれ。」

そう言って強引に本を手渡してきた。


「流石に悪いな。料金は払う。」

お金を払おうとすると


「ワシは運命を信じておる。最近手にした本をワシを助けた者が求めておる。これは何かの縁なんじゃ。

 おぬしのものになるべくしてなっておるんじゃ。」

「だから、遠慮などいらん」


そこまで言うならと、ありがたく貰っておくことにした。

目当てのものは手に入った、礼を伝え店を出た。

グラムが退屈そうに待っていた。


「本見つかったのー?」


「ああ、後は食糧を買って野営に備えないとな。」

そのまま近くにあった店で一通りの買い物を済ませ、馬車まで戻ることにした。


戻る途中になにやら人だかりができていた。

気になり少し覗いてみる。お面をした人が囲まれている。どうやら大道芸をしているようだ。

「大道芸!?グラムもみたい!」

グラムを見える場所まで持ち上げる。


ナイフを見せたかと思えば、上に投げ落ちてきたナイフをキャッチする。同じ動きを繰り返しどこから取り出したのか、ナイフが二本、三本どんどん増えていく。


最終的にはナイフ七本をジャグリングのようにぐるぐると回し続ける。パチパチと拍手がおこり、ショーは好評で終わったようだ。


グラムもおおーと嬉しそうに拍手をしていた。

そして、大道芸を終えお面を外し、一礼する。気がつかなかったが、女性だったようだ。


「お願いをしたい。王国まで行きたいのだが、どなたか同行させていただけないだろうか。」

始めから人を集めて、それを聞くのが目的だったようだ。


誰も名乗りをあげない。人ごみはぞろぞろと解散している。グラムと目を合わせる、声をかけて欲しそうにしている。

「ホブには勝手なことをして悪いけど、声をかけてみるか。」


誰も出てこないことに少し落ち込んでる女性に

「俺たちも王国に行くんだけど、御者に聞いてみないと同行してもいいか分からないんだ。

 それでもよければ、話を聞いてみるけどどうだ?」


表情が一瞬でかわり、

「ぜひ、誰もいないと思って少し諦めてたんです!

 よろしくお願いします!」


「じゃあ、馬車まで一緒に行こうか。」

了承が取れたところで馬車に向かうことにした。


馬車に戻り早速ホブに話を通す。

「あんたらが大丈夫なら問題ないぜ」

よかった。大丈夫なようだ。


「ありがとうございます!私の名前はリナです!

 王国までよろしくお願いします!」

元気がよく礼儀も正しいようだ。


「言ってなかった、今から出発して野営予定だけど、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です!」


「よし、じゃあ出発するか!」

ホブもリナに負けじと大声で言った。


馬車は動き出し、ヤルガン町を出発した。


「リナは何しに王国に行くんだ?」

そういえば聞いていなかったことを思い出した。


「はい、大道芸をしている者として大都市で技を見せたい、その一心に尽きます。」

うすうすそんな気はしていたがそのままだった。


「ヤルガン町で育ったのか?」


「いえ、元々王国で暮らしていたのですが、色々あってヤルガン町に辿り着きました。

 その時、大道芸に出会ったのです。まさに運命の出会いでした。それからは大道芸の練習の日々!そして、より多くの人に見てもらうために王国に戻ることを決心したのです!」

リナは大道芸にかける熱い思いを伝えた。


聞きたかったことは濁されたような気がする。言いたくないなら詮索するのはやめておこう。


本屋で貰った魔物の本を取り出した。せっかくだから読んでみるか。

ページをめくってみる。白紙だ、次もその次も白紙だ。

「なんだこれぇ、何も書いてねぇじゃねえか!」

あまりの衝撃に大声が出てしまった。


グラムもリナもその声にびっくりしていた。

グラムが何事かと寄ってきた。

「あれ、これ魔導書じゃん」

グラムはこれを知っているようだ。


「魔導書?なんだそれ?」


「本に魔力を込めるんだよー」

言われた通りにやってみる。


すると、白紙のページに文字と絵が浮かび上がる。

昨日見た魔物の情報が書かれていた。


これは意外と便利かもしれない。

ただ、渡したときに一言言っておいてほしかった。


外を見てみると日が暮れ始めていた。

「あんたら、日が暮れてきた。そろそろ馬車を止めるから野営の準備をしてくれ!」

ホブに声をかけようとしたタイミングで丁度ホブの声が響いてきた。


荷物をまとめて野営の準備に入る。

ほどなくして馬車がとまった。


広々とした草原で周りには何もいないようだ。

日が暮れる前に準備を終わらせてしまおう。

まずは火を起こそう。


急いで薪を組む、そのとき後ろからグラムが声をかけてきた。

「火はまかせてー、ほい!」

グラムの指先から火が出た。

そんなこともできるのか。便利だな。


火は用意できた、次はテントだ。

リナとホブがテントを広げている、手伝おう。

その後、準備は順調に終わり、暗くなる前に夜食に取りかかる。

リナとグラムは二人で遊んでいる。料理を手伝ってくれない…。


なんとか、完成した。

みんなで話をしながらご飯を食べる、料理は意外と好評なようだ。


片付けを終わらせ、後は寝るだけになった。

「見張りはしておくから、みんな休んでくれ。」

見張りを買って出る、明日の移動中に眠れるなら一晩起きているなど造作もない。


それぞれ馬車とテントに戻り眠りについた。


さて、時間もあるし、魔力核コアを使う練習でもしようか。

昨日の使い方をすれば、魔力の制御も難しくない。

身体に纏わせ形状を変える。

この魔力核コアは思っているよりも柔軟な使い方ができるかもしれない。


その後、思いついたことをひたすら試し続けた。その間魔物の襲撃も何事もなく朝を迎えた。


みんなが起きてくる。

王国へ向かう一日がまた始まる。



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<魔物図鑑>


・マイコニド

きのこの形をした魔物。

一般的には手のひらサイズで長生きしている個体はどんどん大きくなっていく。

群れていることが多く、光合成をするために動き回る。


・ゴブリン

小さな人型の魔物。

群れでいることがほとんどで、群れの中で社会を形成していることがある。

魔物の中でも知能が高いため、油断してはいけない。


・スライム

液体状の魔物。

魔物の中で最弱。

スライムの液体は薬にもなる。

土地によって派生する種類に変化する。



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