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あの三人はあの後転がるように外に飛出て、領主の生死など確認していないが、領主はいつの間にか事切れていた。漆黒に蠢く髪の毛がぺろりと舌を舐めるようにうねっているのも気にせずに猛烈に走り去っていく。
それどころか動かない継ぎ接ぎの婚約者の手を握りしめ何処か恍惚とした顔の目をそっと撫ぜて閉じさせた。きっと彼の中にはそれなりに美しい恋物語が流れていたのだろう、不器用な人だと思う。産み出されかかったその人形は最早当人とは言えないのに。
慌ただしく走り去っていく足音をBGMに黒猫は影を縫って姿を現した。光の下に姿を出すだけでくっきりと輪郭が浮かび上がり子猫の姿が確認出来る。
躯の残る部屋、少し欠けた体には要らないと廃棄扱いされる残骸の予定から拾い上げて嵌めておく。爪先を器用にもくるくる回して魔術で浮かせて当て嵌める。この猫にはどうしてこのパーツが廃棄されるのか理解出来ないほど遜色無い魔力の色に見える。芸術センスは皆無だ。ぎこちなくも人の形を結んだことに満足そうにうんうんと頷くと話す者が居ない気配の死に絶えた間に耳触りの良い声は安寧の眠りを誘うかのように囁く。
「なぁ、お嬢ちゃん、ワシと契約を結ぶか?…ふむふむ、それならワシが叶えよう。死の理をもねじ曲げるそれがネクロマンサーだ。」
約束通り彼は領主の魂を輪廻の和に戻すと情状酌量を求める祈りを彼に纏わせる。奮発して最高級の祈りをかけたから死後も悪いようにはならないだろう。術者の祈りだけで死後を決める、生前の行いを無視した傲慢な所業。
「おいで、君は今日からごーちゃんだ。」
契約の紋様が彼女の継ぎ接ぎの身体に浮かび上がるとポキュンと可愛らしい音を立てて、丁寧な継ぎ接ぎの痕が残る小さな女の子の人形になった。
彼女の魔力の高いパーツで出来ている体を使ったからさぞいい人形が出来上がるだろう、想像だけで猫は唸り声をあげる。その為には領主が邪魔だった。他国で好きに動くとお小言が怖い。しかし上手い具合に言ったと喉を鳴らすと出来上がったばかりの人形を咥え高くに据えた窓に飛び上がるとそこから外へと出ていった。




