第9物語 最初の時代<プルミエ・エール>
"物語、すなわち人生。万物の生き様を傍観する。"
2人の回想を巡って現在、未だに剣を交えて実戦訓練を行っているところだった。
「はぁ、はぁ……すこしは上達したじゃない千夜。あと1セットやったら休憩しようか」
「……はぁ、んっ、わかっ、た……」
互いに剣を構え直し、息も上がってる状態で切りかかろうとした次の瞬間っ
「はいはい、お二人さんそこまでですよ」
どこからか声が聞こえてくる。
そして、声が聞こえてすぐまたも空から2人の間に割って入る。
その片手には、千夜達の持つ剣と同じものを持ち合わせていた。
自身の手に持つ剣を地面に突き刺して衝撃を受け流したらしい。
「朝から金属の打ち付け合う音がすると思ったら……おふた方ですか。そんなヘトヘトになってもなお実戦訓練をするのは非効率ですよヨリィーさん、千夜さん」
「うっ、ウチは千夜のためを思って強くしようと……」
「その思いは大事です。でも、自分を殺しに来ようとする人が果たして疲れてると思いますか? もし疲れてるのなら、自分の元に来る前に既に殺されてるでしょう」
「………」
アルヒェは、ヨリィーの思いを踏みにじることなく受け入れながらに軽く注意をした。
疲弊してる状態で戦うなんて限界戦争でもない限りありえない話。
そう思ったからなのだろう。
「アルヒェさん、あたし……唐突だけどまずはこの国から変えていこうかと思うんだ。この国の国王陛下がどんな人か、この悲劇と昨日のお話でだいたい見えてきましたから」
「千夜さん……。つまり、国王陛下を倒すということですか?」
「もちろん! そうじゃないと安息は生まれないよこの国に。果てはこの世界に」
千夜は言った。まずはこの国から救うと、ヴァラルフ王国から救いひとつずつ変えていくと。
いっぺんに世界そのものを変えるなんてことは不可能だろうと思ったのだ。
「……そういうことなら、ボクも参加しないと心配です。ヴァラルフ王国を共に救いましょう」
「うんっ!」
「あっ千夜。話の途中で悪いんだけど、昨日あんたがウチにいってた新たな名前……決めたわよ」
「え? ほんと?? なになに?」
――プルニエ・エール
ヨリィーは千夜の新しい名前としてそう名付けた。
その意味は、フランス語で"最初の時代"である。
「プルミエ・エールっ……! わかった! 今日からあたしはプルミエだ! 」
「はいっ、今日からち……じゃなかった、プルミエさんですねっ」
アルヒェは一瞬言い間違えたが、直ぐに言い直して新たなる名前を呼びあった。
「ところでプルミエさん。国王陛下を倒すとは言いましたが、なにかお考えはあるのですか?」
「いや全然ない!」
「「………」」
さすがにノープランと聞いては2人は何も言えなくなってしまう。
いわゆる絶句というものだろう。
何か策はあるのかと思ったが何一つ考えないとは誰も思ってなかったのだから。
「じゃあ代わりにウチが……」
「お願いよーちゃん!」
「お願いします」
「私の考えはこう。まず陛下は噂通りなら自身は極めて安全な部屋でふんぞり返ってることだと思う。でないと街を透明化する理由に説明がつかない。相手が創造者様なら、プルミエをぶつけるしか方法がない。でも正面からぶつけるのはあまりに危険」
「ヨリィーさん、それならボクから提案があります。陛下の使用した応用能力は監獄の鳥であることが判明しています。これは、自身を鳥籠の中にて眠る鳥に見立てて安全な空間を作り出す能力だと言うことが判明しています。これを破るのは簡単です」
「相手が鳥籠なら、鍵を探せばいいんです。もしくは鍵穴さえ見つければ、あとはプルミエさんの真言ノ刻で鍵を作ってしまえばいいのです」
「でもまって、あたしは鍵の作り方を知らないから多分鍵は作れないよ……」
「なら鍵をつくる路線はなしですね……。素直に探すしかなさそうです……」
アルヒェはどうしたものかと頭を抱えながら思考する。
ヨリィーもアルヒェと同じように思考している。
「ねぇ、あたし思ったんだけどさ。国王陛下がずっと安全な部屋で閉じこもってるなら、二度と出て来れないようにすれば倒したことになるのでは?」
「?!プルミエさんっ……」
「プルミエっ、その案はなかったわ……」
2人とも度肝を抜かれたようで、その発想はなかったとびっくりしている。
確かに出てくる手段があるのなら、その入口を潰してしまえば出て来れないだろうという思考は間違ってはいない。
「でも抑え込むって言っても、自身の力で国を創造した相手です……不可能ではないでしょうか」
「そのためによーちゃんがいるの。よーちゃんは物語添削が使えて、あたしの力を使って代わりにやってくれる」
「プルミエの力をウチの力に変換して増強させた上で封印……それなら世界が都合よく添削しなくても済むかも」
「では、万が一それが通らなかった場合は物理的に倒す。この方向性で行きましょう」
アルヒェの予備プランを2人は受け入れうなづいた。
作戦決行は今すぐという訳には行かないが、近いうちに必ず仕留めに行くと決めたのだった。
「そのためにも、せめてプルミエは応用能力に目覚めなさい。ほら、簡単な休憩は終わったのだから訓練の続きするよ」
「えー! よーちゃんのいじわるー!」
「……やれやれ、仕方ありませんね。ボクがその1戦終わったあとに指導しますよ」
アルヒェが半分呆れながらも、2人の様子を見てどこか微笑ましく思っているのだった。
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
協力者:アルヒェ・ハイリヒ
能力等:現在不明