第8物語 解を求めるのは辛い
"解は時に、答えを出す。時に解は苦しみを与える。"
――――これは、ふたりが起きる前日の夜の話。
千夜が眠り、ヨリィーも1度寝ようと寝袋に入ったが眠れなかった。
千夜の解いた質問のことで、ずっと疑問に残っていたからだ。
今ヨリィーは、ヴァラルフ王国の中心部にある噴水の縁に座っている。
「ウチはいったい……」
「どう生まれ、なぜこの世にウチは……」
―――もう1人の、あたし。
千夜は、あの時確かにもう1人の自分なのかとヨリィーに質問をした。
その解は、ヨリィーに分かるはずがないし答えれるはずもない。
なぜなら、そんな経歴はないからだ。
「ウチは間違いなく、千夜の真言ノ刻から顕現れた。だから容姿はどことなく幼いときの彼女と似て、性格は……。こんな問、答えられないしわからない……」
「ウチは深く考えすぎているのだろうか? 実は答えは単純で、はいそうですと答えれば済む話なの? 違う、ウチは千夜の脳内から顕現れただけの記憶の塊なだけ。それならなんで千夜以外の6億6666万6665人の創造者のことを……?」
―――"知って"いるの? ウチは
ヨリィーは、ひとつの矛盾……否、数多の矛盾と向き合っている。
辻褄が合わないのだ。
もし自分自身が千夜と同一個体だとして、この世に顕現れたのならば、千夜と同じくこの世界のことを全くと言っていいほど知らないはず。
思えばヴァラルフ王国のアーチ前にたどり着いた時の自分の発言や、それ以前の、あの山にいた時の自分の発言には全て疑問があった。
まるで何度も何度もこうなってきたかのような、タイムリープを何度も繰り返して過去を変えようとしているかのような今の自分に、疑問しか湧かない。
「ウチは、ウチは……」
「あぁもうやめだやめ! 深く思考するのは良くないわね。少なくとも今は解を出すべきでは無いわ。この問に対して解を出す時にはきっと、この世界の真相が分かるはずよ」
ヨリィーは翼を少しばたつかせ、少しの飛行で縁から腰を浮かせ地面に足をつけた。
自分の足ですぐ降りれたが、足を動かして地面に設置させる普通の思考すら億劫な程に疲れているのだろう、そうヨリィーは思った。
思わざるを得なかった、そうしなければ……自分の存在価値を否定しかねないからだ。
飛ぶ方が疲労度が増すことは自分の方が理解しているというのに……。
「明日になったら、朝の訓練の後にでも新しい名前を教えてあげないとね」
千夜に新しい名前を決めるように言われたヨリィーは、千夜の隣に置かれた寝袋に翼を使って近寄り中に入ってまぶたを閉じた。
思考をやめた訳では無い、逃げた訳でもない。
ただ、少しばかり疲れた脳みそを冷やし、訓練に支障が出ないよう体の疲労感と一緒に消し去るだけ。
そうしないと、この先は危険だと思ったからだ。
創造者同士での争いは苛烈を極めることくらい、千夜にもきっと伝わっているはず。
自分が千夜を護らないでだれが護るのか、自分が千夜をサポートしないでなんのための物語添削なのか、そして……なんのための導き手なのか、そう考えた結果……解は保留することとしたのだった。
―――"解は答えを出すが、時に残酷さをも演出する"。無情、我ながらにそう思えてくる。
どこからか見ている傍観者は、一言そう呟いた。
それが誰かなんて……知る由もない。
保留した解が、答えが出る時には、千夜はもっと強くなっている……ヨリィーは密かにそう思いながら意識を落とし深い眠りにつくのだった。
名前:狭山千夜
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
>>coming soon<<