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第47物語 黒化纏<インクジェット>

「……あたしは、あたしはっ! ぐぅぅ……」


 ここは異境の空間で、リピートの部屋。

いつも世界を傍観するためにシザーズと一緒にいる部屋とは別の場所である。

とはいえ、本棚がありソファーがある所までは全く同じである。

その部屋の中で、先日マザーに言われた言葉をずっと引きづっていた。


「リピート? 入るわよ?」


そんな中、コンコンと扉をノックしながら入ろうとしてくる者がいる。

声からするにシザーズだろう。

そしてノックしたあと直ぐに、2人分の紅茶を淹れたおぼんをもって入室してくる。


「シザーズ……。入らないでって前に言ったのに……」


「らしくないからたまには構ってやろうと思っただけよ。あのドラゴンとの戦いの時に何かあったの? ウチの前から消えてからあとの事が分からないのだけど」


 あの時、ドラゴンことマザーに取り込まれた。

その光景をシザーズは見ていたが、そこからあとのことが何も分からないと口にする。

記憶を消されたのか、あるいはリピートが居なくなったことがショックでそれどころではなかったのか。

本人にも何も分からないのだ。


「……あたしは、自ら望んでマザーに贖罪(しょくざい)を要求した。ただそれだけだよシザーズ」


「?! ということは……なるほどね」


 シザーズが出した紅茶を口に含みながら、リピートは細かい解説はしない。

それに対してシザーズは、何かを悟ったように部屋から出ていこうとする。


「そういうことなら、ウチは手出できないわね。まあ任せなさい。ウチに考えがあるから」


 それだけ口にすると、シザーズは部屋から出ていってしまった。

その直後、紅茶を口にしたリピートの様子がおかしくなっていく。


「んぐっ、ぐぁあ! なに、この焼けるような感覚。体内のあらゆる臓器が悲鳴をあげている!! シザーズぅぅ!!」


 リピートはただただ苦しんだ。まるで毒でも盛られ、その毒を体内に流した結果のような苦しみっぷりに、扉の先からふふふと微笑み声が聞こえてくる。


「それはね、特別な紅茶なのよ? 安心しなさいな、毒では無いわ。ただちょっとばかり、"支配"されてもらいなさい」


 その微笑み声は扉の先から離れていくのがわかる。

毒ではないとシザーズは語るが、支配と聞いてなにか企んでるのをリピートは察した。


「あ……ぐっ……身体が、身体の様子が……」


 リピートの身体のありとあらゆる場所が、黒い跡におおわれていく。

その現象は、紛れもなく黒化現象そのものだった。

身につけていた衣服が溶かされるようにして無くなっていき、代わりに自身の胸や秘部を隠すように黒い跡が包み込んでいく。

 変化が終わった後の姿と言えば、背中にはコウモリのような翼が2対2組ずつの合計4枚の翼が生え、全体的に黒と時々紫が混じるダークヒーローを彷彿とさせるような中二病心をくすぐりつつも、出すところは出す服装に変わり果てていた。

頭部の方はと言われれば、リピートの片目が黒色に変化し、黒い眼光を走らせている。


「闇に近い力を感じる。これで目的を遂行させる……!」


 リピートがそう一言呟いたかと思えば、壊れかけのテレポート装置に乗り、下界へと向かった。

その直後、テレポート装置が壊れてしまった。


「ふふふっ、思惑通りね。黒化纏(インクジェット)、リピートなら上手く使いこなせるわよね。即興とはいえ、我ながらよく作ったと思うわ……」


「しかし、いいの? マザー。あれは残留データが起こした凶悪なバグよ? あれで過去にゲームデータが破損してユーザー離れが起きたってのに……」


 虚空を向いて、マザーが最初からそこにいたのを知っていたかのようにシザーズは話を振る。


「最初からリピートが使いこなせるなんて思ってはいない。むしろあのまま呑まれて死んでくれた方がマザーとしても好都合。プルミエのあの能力も、この力の前には太刀打ちできないさ」


「しかしそう上手くは行かないと思うわよ。彼女は言うなれば物語の主人公、作者の加減ひとつでどうとでもなるわ。ただ、プルミエの存在はリピートにとってもウチにとっても都合が悪いから、手は既に打ってあるわ」


"残念だけどリピート、あんたはウチの駒になってもらうわよ"


 利用するだけ利用して切り捨てる、それがシザーズの思想であり考え。

ニヤリとシザーズは微笑みながら、いつもの傍観席に腰掛ける。


「神は1人いればいいのよリピート。あんたが仮にプルミエに勝って贖罪(しょくざい)を済ませたとして、それで償いになるといいわね」


 ひとつの羽根ペンを、どこから取り出して空中に文字を書き始める。

その羽根ペンは、プルミエが呼ぶ"ぺー君"とは外見も何もかも違って見え、どこか高級感すら感じるデザインである。

まるで、自身の能力専用とも言えるような特別なもの。

なにせ、万年筆とセットなのだから……。


――――展開編集(リオープンシザーズ)


 "以降の展開は、シザーズが執筆した展開通りになる"


「そう、これでいいのよ。これで……」


 地の文(えいしょう)を唱えながらも、わずかに口から血をにじませる。

吐血とまで行かなくとも、身体に負荷がかかっているようだ。

だが、シザーズの執筆はまだ続く。

プルミエ達は、迫る脅威に気づくことが出来るのだろうか。

名前:狭山千夜

新たな名前:プルミエ・エール

2つ名:創造者(リビルド)

基礎能力:真言ノ刻(リフィクション)


強み:知識さえあれば、地の文(えいしょう)を使用して創造・改ざんが可能。

弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。


応用能力:華癒ノ陣(ブロッサムキュア)


強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。


弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。

既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。

また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。


修正能力(デバッカー):自動文体(マリオネット・シュブリ)

説明:デバックモード。デメリット・足枷として身についた。

神のツールと呼ぶにふさわしいこの異能力は、状況に応じてリーズナブルに装備を切り替えたり異能力を自由に操ったりできる、アルヒェと似た能力。

複数のモード変更を行えるが、その全ては自分の意思で発動することは出来ず、システムの判断に左右されるため完全ランダムである。


仲間:ヨリィー・ディメンション

仲間の愛称:よーちゃん


ヨリィーの能力:物語添削(リバーストーリー)


強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。


弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。

相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。

サポート特化なのに添削元に力を与えれない。


仲間:アルヒェ・ハイリヒ


役職:幻想の方舟/騎士団長


能力:騎士ノ傲慢(ナインツプライドニア)


強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。


弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。


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