第46物語 ひと時の日常
遅くはあるが、アルヒェ・ヨリィー・プルミエの3人は国民に現状の様子を聞いて回った。
全員に聞けてないのが心配だが、聞ける人に聞いても今の所何か問題が起きてる訳では無いらしい。
強いて言うなら、いつもより体調があまり優れないってことらしい。
「朝起きてすぐの話し合いが昨日のことって……。ウチ頭があんまり回らないんだけど……」
「起きてすぐ文句言わないの! よーちゃん。あたしだって眠たいんだから……」
「全く……。おふた方ったら……」
「おでん食べながらお説教しようとしても説得力ないからね? アルヒェ」
「うっ……」
ある程度聞いて回った答えをみんなでまとめ終わったあと、またおでんをみんなで食べている。
正確には、アルヒェがねだってくるのでプルミエが前もって真言ノ刻で作っておいたのを出してあげていた。
「まぁまぁ。お腹空くし仕方ないよ」
「プルミエは甘いのよアルヒェに。初めて会った時に比べて少し気が抜けたんじゃないかしら」
「! ぬっ抜けてませんよボク! 決して!」
「嘘ね。アルヒェのおわんの中にねりがらしを入れたことにも気づいてないなんて」
「?! ひぃいいい! からぃい」
アルヒェがプルミエと話していた間に、しれっとヨリィーがイタズラをしていたらしい。
ねりがらしは、プルミエが出したおでんに関連するものとして物語添削を使用して出していた。
しかも能力の効果のせいで、普通のねりからしの何倍も辛い。
「いつの間にねりからしを……。よーちゃんねりからし知ってるの?」
「前も言ったでしょ? ウチはあんたの脳内記憶から顕現れたんだから、多少の記憶の共有があるの」
「でもよーちゃんの能力はそんな効果じゃなかったような?」
「なんでもいいですからどなたかお水をー!」
ヨリィーとプルミエが話しているあいだ、アルヒェはあまりの辛さに床で左右に転がりながら苦しんでいる。
「もっと警戒心を強くもっておきなさいよアルヒェ」
「はいお水! アルヒェさん大丈夫?」
ヨリィーが上から目線にものを語る中、プルミエは直ぐにコップに水を入れてアルヒェの元に持ってった。
幸いなことに水道や電気、ついでにガスは通してあったので生活はしやすいし能力を使わなくて済んだ。
「……大丈夫です。ありがとうございます」
「ううん、大丈夫! 」
「ヨリィーさんはヨリィーさんで、一体誰のおかげで今の強さを得たと思ってるんですか……」
「そりゃあんたに教わったからだけど、あの時と今とでだいぶ雰囲気が変わったからそれを直してやろうと思って」
「だからってこんなイタズラを……。まぁいいですよ。おでんは美味しいままですし」
小学生みたいなイタズラをなんでヨリィーはやる余裕があるんだろうと密かにプルミエは思ったが、口にはしない。
それよりも、プルミエは黒化現象のことをずっと考えていた。
あまりに何もして無さすぎるからだ。
「あたしさ、またレイヴェン諸国に行こうと思うの。それとか他の国とかも訪問してみようかなって。あたしの国だけで起きてるのか、他国でも起きてるのか気になるし」
「また唐突ね。いいとは思うけど、今度はウチついてくから」
「いいえヨリィーさん。ボクと一緒にいてくださらないと、この国の守り手が減りますゆえ……」
「前レイヴェン諸国に行った時、帰ってくるの遅かったでしょ? 心配なのよ。また何か起きるんじゃないかって」
「リピートさんがプルミエさんに手を出すようなことしないと思いますよ? とはいえ、心配なのは事実ですね……。プルミエさん、チラッと様子だけ見てすぐ帰ってきて下さいね? リピートさんとお話しなくても構いませんので」
「……わかった」
そんなに帰り遅かったかなあと思ったし覚えの無い記憶だが、聞いておいてなるべく早く帰ることにした。
今すぐ準備して行くつもりで着替えているが、ノープランである。
「あれ、でもまって。よく考えたら交易の人に聞けばいいのでは?」
「商人さんの事ですかね。だとしたら確かにいい案かもしれません」
「……ちょっとは考えなさいよ全く」
「あはは……」
上着を脱いで下着だけの状態で、軽く微笑む。
ノープランなのがバレたから恥ずかしくなったのだろう。
「とっともかく、さっさと着替えて行ってくる!」
「プルミエさん。すごく申し上げにくいですが、商人が来るのは今日ではなく、明日ですよ?」
「…………」
「そっ、そうだったかな? あははは……」
ヨリィーはもはやかける言葉もなく絶句している。
あまりに呆れすぎて、片手で自身の目を塞いだ上で口を開けたまま上を向いている。
呆れを通り越して笑いが出そうになったからだろう。
「ほら、早く衣服をお召に……ってあれ? その装備、外せてませんか?」
「あ! ほんとだ」
今まで外そうとして外せなかった謎の異能力が外せている。
あまり詳しい事情を口にすると、発言してなかったことにされることが分かってる以上、仲間にもうまく説明出来なかったこの能力が外せたとあれば、プルミエは嬉しくて仕方なかった。
「だからか、基礎能力が使えたの。なんで外れたんだろう……」
「マザーからの司令で、私生活位は外してやれとのことでしたので一時的に外しました」
「……そういう事ね……」
「? また誰かと話してるんですか? 」
「うっううん! 気にしないで! 大したことじゃないから」
一時的に外されてただけかあ……としょんぼりしつつ、部屋着に着替え直して横になる。
「そういうことなら今日は暇するもん! 何かしようとしてたけど今さしあたってやることも出来ないし動くことも困難だし……」
「黒化現象の事がわからなさ過ぎるってのもまた怖い話ね……」
人知れず侵攻し、確実に支配せんとしているそれがいつ牙をあらわにするのか、それは誰にも分からないことだった……。
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
修正能力:自動文体
説明:デバックモード。デメリット・足枷として身についた。
神のツールと呼ぶにふさわしいこの異能力は、状況に応じてリーズナブルに装備を切り替えたり異能力を自由に操ったりできる、アルヒェと似た能力。
複数のモード変更を行えるが、その全ては自分の意思で発動することは出来ず、システムの判断に左右されるため完全ランダムである。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長
能力:騎士ノ傲慢
強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。
弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。