第43物語 方舟の役割 前編
プルミエ一行は、今だに黒化現象のことを調べているが、何も進展がない。
ただ、気付かぬ間にだんだん範囲が広くなっていくのみである。
「結局これ、なんなんでしょうね? 治すこともできないんでしょうか?」
「しらないわよ。少なくともプルミエの応用能力では直せないことは分かったわけだし」
「それに、気のせいかもしれませんけど……なんだか大きくなってきてませんか?」
「そんなきがするだけじゃないかしら」
「そうですかねぇ……」
ヨリィーは気のせいでしょと口にするが、誰にも伝えないだけでヨリィー自身は既に気づいている。
気づいているからこそ恐怖が勝り、口にするのも怖いと感じているようだ。
「あたしも心当たりがないのよね……」
「(BK-9999と言ったかな。なんとか解決できないかな?)」
「解決手段は、元凶のバグを修復することです。この修正能力を使用するのです」
「(修正能力? なんだか分からないけど、やってみる。それでバグはどこに?)」
「世界の終端にあります」
心の中で謎の声とやり取りしている。
BK-9999というのを名前と仮定して、そう呼ぶことにしている。
とはいえ、大体はどこにあるかが判明した。
世界の終端というのがどこかは知らないが……。
「あっ、そろそろ"定期便"の時間です。一旦失礼しますね……」
「えっええ」
プルミエがBK-9999と会話していたうちに、アルヒェが仕事に呼ばれたようだ。
そのままこてんと倒れ、まるで死んだかのように意識が無くなった。
「……さて、今日はどんな魂を送るのでしょう……」
幻想の方舟の姿になったアルヒェは、自身が止まる駅に向かおうとする。
その瞬間に駅の違和感に気づいた。
「あれ? 乱れが……。なんですか? これは」
アルヒェが目撃したのは、荒れに荒れまくる彼岸花の花園だった。
荒れてるといっても花が散ってるという訳ではなく、分かりやすくデータの乱れがノイズとなって現れている。
「アルヒェおにぃちゃん……。たす、けて……」
「何があったのですか?! デリート!」
「このせかいがほろびちゃう……。わたちのなまえのとおり、きえちゃうよ……」
「落ち着いてください! ボクが何とかしますから……!」
デリートと呼ばれた女の子は涙を流し、花園の真ん中で女の子座りしていた。
その女の子の体は、右半分が黒化現象に覆われていて、もう既に原型をとどめてなかった。
アルヒェのことをおにぃちゃんと呼ぶのは、中性的な外見だからか、どっちの性別が分からないのだろう。
あるいは他に事情があるのだろうか?
「ううん、もうておくれだよ。わたチは……ワタちは……」
――――シュウエンヘトミキビク!!
黒化現象がデリートの体全体を覆ったかと思うと、そのまま異形の化け物へと成り果ててしまった。
もうそこに、かつての可愛らしい女の子の姿はどこにも無い。
だが、泣いてる声も密かに聞こえてくる。
「デリートぉぉ!! そん、な……ボクの唯一の家族が……何が起きてるんですか……?」
アルヒェは、目の前で大切にしていた家族が化け物に成り代わってしまったことに対して、絶望しきっている。
しかし、涙を流す暇もないくらい複雑な心境にいる。
「………そう、ですよね。ボクはボクの仕事を果たさなきゃ行けませんよね。ボクは騎士としてのプライドを保たないといけないですもん……」
「ウェリス様、天で見ておられますか? 貴方様がボクを顕現れさせてくれたおかげで、ボクは生きがいを見つけました。ありがとうごさいます……」
――騎士ノ傲慢!
「形式切替:飛翼! ボクは、ウェリス様の教えを元に………生命を与えます……!」
アルヒェは目元に貯めていた涙を払い、自身の異能力を発動した。
装備を背中に移動させ2枚の小さな翼へと変異させ、剣を大太刀へ変異させた。
「ごめんなさいデリート。本当は受け入れたくないけれど……これもボクの使命ですから……」
「ぐしゃぁぁあ!!」
化け物の咆哮をあげるかつての家族だったもの。
それはアルヒェの敵となり襲いかかるのだ。
アルヒェはせめて楽になるように……そう願いながら、剣を構え直す。
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
修正能力:自動文体
説明:デバックモード。デメリット・足枷として身についた。
神のツールと呼ぶにふさわしいこの異能力は、状況に応じてリーズナブルに装備を切り替えたり異能力を自由に操ったりできる、アルヒェと似た能力。
複数のモード変更を行えるが、その全ては自分の意思で発動することは出来ず、システムの判断に左右されるため完全ランダムである。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長
能力:騎士ノ傲慢
強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。
弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。