第40物語 解明!自動文体<マリオネット・シュブリ>後編
プルミエとヨリィーが会場内で戦いを繰り広げる中、創作編集者として動くリピート達は、この世界に生じた問題を細々と直していた。
「ふぅ、とりあえずこんなものでいいんじゃないかな。久しぶりに体を動かしたよ」
「言うほど動かしてないでしょ全く……。ウチくらいしか仕事ないんだから……」
「そんなことないよぉ。あぁそれと、プルミエちゃん達が付けた例の黒化現象。それに伴ってプルミエちゃんに起きた新たな能力の覚醒。この仕事をしてやっと確信をつくことが出来たよ」
「どんなものなのかしら?」
リピートとシザーズの2人がした仕事といえば、異様に増えすぎた魔物の討伐や、世界が崩壊しないように制御する仕事などなど、ゲームシステムで例えるならアップデート作業と同義といえるものである。
それゆえ、世界に生じたバグも修正内容に当然ながら入るのだが、その過程で曖昧だと口にしていた自動文体に繋がる答えが見つかったのだ。
「あれはね、修正能力っていうカテゴリーに入る特殊能力。ゲームが世に展開される前に必ず行われる作業のひとつが、能力として発現した……と言うべきところかな」
「勝手に体が動くのも、空が変に見えるのも何もかもデバック作業の過程で起きたバグの表れ。でもプルミエちゃんだけは、元からゲームの世界の住人って訳じゃなかったから影響が遅れて出てきた。それが幸いして、デバックモードという名の神のツールに目覚めてしまった……」
「デバックって言う割には、普通のプレイヤーとして存在するように見えるけどねウチには」
「そこが難しいのよね。一度実際に自分でプレイしてみて、壁抜けしないか致命的なバグはないかストーリー進行バグはないかって色々調べるんだけど、プルミエちゃんの場合はただのデバックモードじゃないのかもしれない……こればかりはあたしもよく分からない」
リピートですら分からないような異能力、これ以上の説明は出来ないと言いたげに口を詰まらせた。
「ウチらはそもそも、小説家達の添削や編集を行ってた編集者ってだけだし、ゲーム開発なんてしたことないんだから分からないのも無理ないわ」
「しかし、こうして作業をしてて気づいたけど、そろそろこのシナリオも終わりを迎えそうだね。次のチャプターがあればいいけど……」
2人の目の前に、大きな裂け目のようなものが空間にある。
それを見ながら、リピートは片手を裂け目に当て、シザーズは後ろで異能を発動させ、その後その裂け目は消失した。
「まぁなんでもいいけど、これ以上の干渉はさすがにあの方に怒られるわよ?」
「そうね。流石にここまでにしましょう。アルヒェちゃんもお怒りだろうしね……」
2人は意味深な発言をしたと思えば、その場から光の粒となって消えていった。
◇
「今なら分かる、見える! よーちゃんの動き全てが……!」
「なっなに、よ。急に動きが……!」
視点は代わりプルミエとヨリィー。
自動文体の卓越した力により、ヨリィーの詰めを押し返し立場を逆転させた。
さっきまで、素人にちょっと毛を生やした程度の実力しか無かったプルミエのその剣術は、戦国時代の武将を自身に憑依させて戦わせているかのような戦いを見せている。
「こうなったら……」
ヨリィーは、この時を待っていた。
プルミエが自分を押し込み、四隅まで連れてってくれるこの時を。
とはいえ、かぎ爪にしてしまったせいで攻撃を防ぐ度に刃こぼれを起こしてしまう。
これではジリ貧な戦いが繰り広げられるだけだ。
しかもボタンを押す隙を与えてくれる気配もない。
そう考えた時、多少の自身へのダメージは構わないとして、プルミエの腹部に思い切り蹴りを一発入れる。
「っ! がっ……!」
「今だ!」
腹部のみぞおちにクリーンヒットし、プルミエがよろけたその瞬間に、ボタンのひとつを押した。
「おおっとヨリィー選手、まず1つ目のボタンを何とか押したぁ! さぁなにが起きるのか!」
ボタンを押したのが確認できると、即座に仕掛けが発動した。
それは、プルミエの足元から小さな魔法陣が連続して現れ、そこから氷柱が飛び出してくる。
殺傷能力はないとのことだが、出てくる速度は遅くは無いし、なんならとがってるので直撃すれば普通に死にかねない。
高さも圧巻で、だいたい2m程の高さなものが消えては出てきてを繰り返すのだ。
「地面よりそびえる氷柱地獄! これでは足場をろくに確保できませんし回避に専念するのが関の山だぁ!」
アルヒェの司会もハキハキと熱量が入っており、それに合わせて観客も盛り上がっている。
「このトラップ、どういなす……」
それに対して、異能力に振り回されてばかりのプルミエは、ヨリィーが氷柱の間をすり抜けて自身に攻撃を仕掛けてくる巧みな動きに翻弄され確実にダメージを負っていく。
そうして、どうしたものかと思考している間に……
「プルミエ、あんたの負けよ」
――――戦闘継続不可能と判断。戦闘モードを解除します。
気づけばプルミエの手にしていた剣がボロボロになり、ヨリィーの片足で剣を踏まれた状態で首元にかぎ爪を突き立てられていた。
「まけちゃっ……た」
プルミエは何となくこうなる気がしていたのを理解していた。
どうして自分は今までらくしてばかりだったのだろう、どうして努力してこなかったのだろうと今になって後悔の念が心の中でうごめくからだ。
「試合終了です! 勝者! ヨリィー・ディメンション!」
観客からの声援が送られる中でも、ヨリィーはかぎ爪をプルミエに向けるのを辞めない。
「戦士は自分の力を過信してはならない。自分という壁を越え、乗り越えなければ……何もなせない。覚えておくのよ」
そう告げた後で、ヨリィーは能力を解除しその場を去った。
まるで調子に乗ってるような、煽るような発言に聞こえるが、ヨリィーなりの励ましなのかもしれない。
なぜならプルミエは……泣いていたからだ。
「やっぱりあたしは出来損ないなんだ……。努力から逃げすぎたんだ。これでは国王陛下失格だよ……」
そうひとりで呟きながら、その場で仰向けになった状態でしばらく居た。
以降、プルミエは必死の思いで努力をした。
ヨリィーにいつか勝てるようにと、素振りをしたりこの新たな能力を使いこなせるようにと何度も何度も誰にも見えないところで鍛錬を重ねた。
――もう努力からは逃げない。
そう誓いながら……。
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
修正能力:自動文体
説明:デバックモード。デメリット・足枷として身についた。
神のツールと呼ぶにふさわしいこの異能力は、状況に応じてリーズナブルに装備を切り替えたり異能力を自由に操ったりできる、アルヒェと似た能力。
複数のモード変更を行えるが、その全ては自分の意思で発動することは出来ず、システムの判断に左右されるため完全ランダムである。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長
能力:騎士ノ傲慢
強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。
弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。




