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第4物語 不穏への入口

"選ばれた創造者(リビルト)は、各地の長を務める。"


 現在の目的を、ヴァラルフ王国へ向かうことに決定した千夜一行。

その道中で、千夜はあることを思いつく。


「あたし思ったんだけどさ、自分達から歩いて現地に赴くより……向こうから来てもらった方が楽でいいんじゃないかなって思うんだ」


 一時休憩ということで、近くの切り株に2人揃って一息つきながら、千夜が思いついたことを話す。


「確かに燃え盛ってた山が突然、炎が消えたともあれば様子を見に来る可能性は大いにあるわね。でも多分来ないわよ? これだけ徹底して攻撃を受けてるのだから、騎士だって生きてる保証はないわ」


 それに対して、納得ことすれど状況的に、生存者はいないものと考えた方が良いのではとヨリィーは冷静に話す。


「そんなの試してみないとわからないよ! "千夜一行が目指すヴァラルフ王国より、周辺領域を巡回している騎士が、あたし達2人のいるこの山へ調査しにくる"! 」


「全く……こんなことで乱用して欲しくないのだけど……」


 自分が楽をするために能力を使うのなんて理解に苦しむと思いながら、使ってしまったものは仕方ないので行く末を見守ることに。

 数分後、ガチャッガチャッと確かな金属音が聞こえてくる。


「ほらぁ! 来るって言ったでしょ?数は1人くらいかな……? 」


「……それにしては妙ね。確かに騎士なら鎧をまとっているから金属音はするけど、よく聞いて。モーター音のようなものも聞こえないかしら?」


「……えっ? 」


 そう言われて千夜が耳を傾けてみると、確かに金属音だけでなくヨリィーの言う通り機械が稼働するような音が聞こえる。


「嫌な予感がする、隠れなさい! 」


「はわわっ、ちょっと……!ひゃっ! 」


 ヨリィーがそう口にするよりも早く行動に移し、千夜の手を引っ張り近くの木陰に隠れた。

2人して隠れてすぐ、それは現れた。

全長3m程の大きさで、戦車の主砲のような装備が施されており……その割には足のようなそれは昆虫のように細く長い自立部が6本あり、全体的に丸みを帯びている。


「う、そ……」


「あれは自走式魔道戦車(オートパンツァー)、自動照準で標的を木っ端微塵にするわ。まさかよりによってレイヴェン諸国に鹵獲(ろかく)された後だったからこんな事に……」


「鹵獲……? てことは元々ヴァラルフ王国の? 」


「ええ、そんな所ね」


 隠れながらコソコソ話のように説明をしたり受けていた。

この時、ヨリィーはひとつ疑問を持った。


「(ウチってどうしてここまで細かいことを知っているの? 自分で導き手と自負したのはいいけど、どうしてか千夜の事も分かってしまう)」


 ついさっき会ったばかりの千夜のことを、どうして最初から知っていたかのような思考が頭の中を巡っていた。

それだけでなく、6億以上もの創造者(リビルド)と会っているのにも関わらわず、どうして彼らのことを思い出せないのかそれが分からないでいる。


「どうしたの?よーちゃん。もういなくなったよ? 」


なんてヨリィーが考え事をしている間に、自走式魔道戦車(オートパンツァー)がこの場を去ったと千夜が報告をする。


「えっ? あっ、あぁごめんなさいね。少し考え事をしていたわ。ある程度休んだことだしまた歩くわよ」


 千夜に言われ、ハッと思考をやめ先に歩みを進める。


「うんっ! 」


千夜もまた、それに続いて歩く。

ヨリィーは何を考えていたのだろうかと自身も少し考えつつ、ただひたすらに歩き続ける。


「それで、ヨリィーは道がわかるの? こうして歩いてるけど」


「さぁ、ウチこの山のこと詳しく知らないから……」


「?! 導き手ぇえー」


 ヨリィーからのまさかの発言に、ついヨリィーの頬をひとつずつ掴んで両手で左右に引っ張る。


「ぐぇえ、ひゃめなはい……はるかったって……」


 頬を引っ張られてまともに話せなくなりつつ、千夜は引っ張っていた手を離してやる。


「いてて……ウチが悪かったわよ。知らないのは事実なんだけど、なぜだかここを進めば目的の場所に進める気がしたのよ。それはウチにも分からない何かよ」


「まあ、仮にたどり着けなかったらその時は……力を使えばいいし……」


「またそうやって楽をしようとするっ! 無闇に乱用するなどさっき口にしたばっかりだから控えなさい」


「はぁあい……」


 ヨリィーとしてはこれ以上無駄に力を使われて世界の破滅が進んでしまっては、目も当てられない為に細心の注意を払えと言いたかったらしいが千夜には伝わっていない。


 なんて話し始めてから数十分、ついに目的地についた。

ただひとつ難点を言うのなら、「ようこそ!ヴァラルフ王国へ」と書かれたアーチが設置してあるだけである。


「あれ? ヨリィー? 間違いなくここ、なんだよね? アーチは出てるけど……」


「間違いないはずだけど、どうして? 」


 そう2人が困惑するのも無理は無い話。

なぜなら、アーチの先に街が見えないからである。

しかしその一方で、周辺には折れた剣先や血まみれの鎧が転がっている。

明らかに異様である。


「……間違いは無い……はず。でもどうしてこんな……」


「戦地故に、ここが墓場になっててもおかしくは無い。とはいえ、異様なのは事実ね」


 国王陛下は自身の身の保全のために、真言ノ刻(リフィクション)を使用し絶対安全なところに引きこもってるという話を自分でしたことを思い出す。

その事を考えると、街全体の姿が見えないのは防衛手段なのかもしれないと考えた。


 故に、この門を叩き中に入ることを……ヨリィーだけはためらってしまいそうになった。

きっと、中は地獄だ……そう思えてならないから。

名前:狭山千夜

2つ名:創造者(リビルド)

基礎能力:真言ノ刻(リフィクション)


強み:知識さえあれば、地の文(えいしょう)を使用して創造・改ざんが可能。

弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。


仲間:ヨリィー・ディメンション

仲間の愛称:よーちゃん

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