第36物語 解決策は応用能力?
プルミエが、調査のためにひとりで外出してから半日が経過した。
アルヒェやヨリィーが、謎のうごめく黒い火傷のような跡を見ている時、プルミエが帰ってきた。
「ただいまー! お待たせ。なんの話ししてたの?」
「あっプルミエさん。おかえりなさいです……? ってその姿はなんです?」
「遅いじゃないプルミエ。それとそのゴテゴテした格好はどういうことよ」
なんということか、自動文体の効果で変わった外見はそのまま引き継いでいるのだ。
どうも意図して戻せないらしい。
「あっははは……、一種の呪いなのかも」
「呪い……。ウチ、そんな話初めて聞いたわよ」
「ボクも聞いたことないですね……」
「それよりもさ、2人の皮膚に見えるその黒いの何?」
「あぁ、これのことをプルミエにも話しておこうとおもって待ってたのよ……」
プルミエから乾いた笑みがこぼれた後に、たまたま二人の姿を見て気づいた。
いつもは各々ソファーに腰掛けてたり、王室というなの現代風の部屋にあるキッチンに向かいおでんを作ったりしているのだが、今は二人が心配していたこともあり2人揃って立っている。
ほんとは自分達から言い出すつもりだったが、プルミエ本人から聞いてきたので、特別警察としていた話の流れを説明する。
「全国民に被害が……? それは大問題だよ。見てる感じ、どうみたって病気ではないし……またあたしにだけないし……」
「そういえばプルミエにはないわね。なんだか不可解ね……」
「違和感を感じることもプルミエさんだけなかったわけですし……」
「その違和感なんだけど、あたしも感じた。それで、あたしの場合はだけど……その違和感のあと気づいたらこんな姿になってた」
厳密には、オオカミ型魔物の群れに絡まれてピンチだった時に発現したものだが、その前にも不可思議なことが起きていたがために、どう説明しようか悩んだ結果こうなった。
「プルミエだけなのかしらね……。別にウチらはこれがあるからって今のところなんも問題も起きてないし。案外気にしなくていいものかもしれない」
「でも気味悪いじゃん。なんていうか……エイリアンみたいなのが体内にいるかもって思えて」
「ひぃいい!! おっそろしいこと言わないでよバカ!」
「あら、ヨリィーさん怖いの苦手なんですね。可愛いですよ」
「うるさいうるさい! 2人揃ってウチを虐めるなっ」
プルミエの感性が斜め45度傾いてそうなこと以外は、シリアスな話が一気にほんわかした空気に変わってしまった。
とはいえ、ただ黒い跡があるだけならいざ知れず、なぜそれがうごめいているのかは気になって仕方なかった。
でもそれは、アルヒェがヨリィーの頬を両手でむにむに引っ張って遊んでるのを見て、なんか直ぐにどうでもよく感じてしまった。
「ていうかさ、あたしの華癒ノ陣で治せたりしない?」
「「その発想はなかった」」
どういう原理で、なぜそれが起きたのかが全く分からないから真言ノ刻で治せないだろうというのは予想しているが、応用能力が治癒である以上、もしかしたら治せるのでは?と思っている
そしてその考えは、2人揃って考えてなかったらしい。
だからか、息ぴったりに思ったことを口にした。
「試して見たらいいとおもうわ。案外なんとでもなるかも」
「わかった。」
――――"華癒ノ陣!"
この応用能力を使ったのもどれくらい久しぶりなのだろうか。
初めてアルヒェと会い、その後アルヒェとの話の際に目覚めて使えたきりだった気がすると内心思いながらそれは発動された。
プルミエを中心とし、綺麗なジャスミンの花が床一面に咲き誇る。
その特有の匂いで部屋が包まれる中で、アルヒェ達についた黒い跡は………消えなかった。
どうも都合よくは進まないらしい。
「あはは、だめみたいだね。まあ怪我には見えないし無理もない、か……」
「ということは、別に治す方法があるんですかね」
「ウチには心当たりは無いわね……。まあしばらく様子見でいいんじゃない?」
「そうしようっか」
大して問題じゃないだろうと判断したヨリィーは、不安こそあれどあまり重要視しないことにした。
一時的なもので、すぐ治るかもしれないと思いながら……。
「データ破損の確認。グラフィックに異常が発生してます」
「……え?」
またもプルミエの中に声が響いた。
あの時聞いた機械音声は、唐突にそう呟いたのだ。
なお、2人には聞こえてないらしい。
「どうしたんです? プルミエさん」
「ううん、なんでもない」
「(グラフィックに異常……? もしかしてバグか何かでキャラグラフィックが歪んでると言いたいのかな……)」
プルミエ自体ゲームの知識はそこまでなく、基礎知識くらいしかないものの、自分なりに思考することにした。
もし本当にこの世界がゲームで、今この世界でバグが起きてるのだとしたら……その干渉を受けていない自分だったら直せるかもしれない、そう思いながら……。
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
???:自動文体
説明:未知の力。デメリット・足枷として身についた。
詳細な能力は不明で、ただ何者かに操られているかのような感覚が襲う。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長
能力:騎士ノ傲慢
強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。
弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。