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第34物語 世界の抜け穴 後編

「きしゃぁぁあ!!」


 オオカミのような外見の魔物は、咆哮しプルミエに襲いかかる。

鋭利な爪で斬り掛かろうとするその姿は、本能のままに侵入者を狩ろうとしている。

または、食べ物にありつけたと思っているのだろうか。


「ふぇえ……こんな所で、死んでたまるかって!」


 複数に囲まれ絶体絶命かと思われたが、何もしないで死ぬくらいなら抗おうと、剣を握り直し応戦することにした。

自身の能力なんて使う間もないくらい、連続した攻撃が襲いかかる。

ひとつの攻撃を防いだところで、多対1の状況を覆すのは困難なことはプルミエも理解していた。

故に、逃げるべきなのだが……この状況では逃げることも厳しい。


"あなたはあたしより苦労しなきゃだめ。さもなくば死を待つのみ"


 唐突に響く声。

その声の主は、101巡目のプルミエ。

102巡目のプルミエの脳内に語りかけるように声を響かせ、訴える。


「あたしの、声? くっ、苦悩しなきゃ死ぬのみなんて……話が見えないっ!」


 声の主は間違いなく自分である。

その事実から目を背けるように、攻撃を仕掛けてくる魔物を一体ずつ薙ぎ払っていく。

アルヒェから教わった剣術と、剣道で学んだ技術でいなすしかない。


「くぅっ、1度はらってもしつこいくらい起き上がって攻撃してくる。あたしを倒すか追い払うまで続けるつもりなの……?」


 魔物からの攻撃に、防戦一方のプルミエ。

思えばあの時、なぜ大型の魔物を倒せたのかが分からなかった。

自分がどんな方法で倒したのかすら何も分からなかった。

ただ勝手に体が動き、戦った記憶すら残ってなかった。

せめて、あの時の感覚がもう一度甦れば……!

そう願望を願った時、脳内に別の声が響いた。


――――"LINK:reality world照合確認。マザーからの認証許可。code:Dreamlandとのリンク完了。ユーザー名「chiyo」、操作開始。


 まるで機械の起動音声のような響き。

その刹那、プルミエはまた動けなくなり意識が遠のきそうになった。

しかし、先程と違い完全には意識が無くなっておらず、ただ目の前で何が起こっているかだけを認識するだけの意思としてしか残されていなかった。

 先程まで苦戦していた魔物たちも、自分の知らない強力な力により一刀両断して見せた。

それは異能力を用いたからではない、確かな剣術だった。

アルヒェ同等、もしくはそれ以上の力があることを、認識した。

だがしかし、まるで誰かに操られてるかのような感覚が気味悪くて落ち着かない。


「なに、なによこれ! あたしどうしたのよ!」


「あなたは残基(リピート)においてイレギュラーな存在と認定された。これにより、幻想をうたったこの世界はただの夢想へと退化してしまった。そんなあなたへ、現実世界からの足枷を渡すと同時に、この力……」


―――自動文体(マリオネット・シュブリ)を使いこなしなさい。それが、貴方に課せられたデメリットです。


 全く訳が分からなかった。

いや、理解なんてできるものでもなかった。

何故かと言われれば説明は簡単で、基礎能力と応用能力のふたつしか能力は無いと思っていたのに、何故か3つめが目覚めたこと。

それだけでなく、自分に課せられ足枷とデメリットがなんなのかまるで分からないのだ。

この異能力が指す意味が、話の繋がりがまるで見えず、何も分からない。

 後にも先にも、聞こえてきたあの声は誰だったのか何も分からないし、言ってることも何もかも訳が分からない。

ただ言えることは、この能力のおかげで魔物はみな倒され、自分は無傷ですんだということ。

しかし、自分の体には異変が起きていた。


「なにこの身体! 見た目! いやぁぁぁあ!!」


 プルミエは大きな叫び声を上げた。

外見が大きく変動し、自身の胸元や股間部に食い込むようにしてなにかがくっつく感覚があり、着衣していた装備がアルヒェのように変形し体全体が機械で覆われたような外見に変わってしまった。

目元にはバイザーがあり、そこから覗く瞳は青色の光を放っていた。


「落ち着いてください。こちらはBK-9999です。あなたは、データオーバーフローの根幹になってます。それにより世界中にバグをもたらしています。これ以上この世界を廃れさせないでください」


「まってよ! BK-9999ってなに! まずあなたは誰!?

世界のバグとか言われても、ゲームの世界じゃあるまいし」


「いいえ、当世界は既にサービスを終了したソーシャルゲームの成れの果てです。しかし、マザーはまだ諦めておりません。物語が終わるまで、あなたは抗う必要があります」


「うそ、でしょ……? 小説の世界なんかじゃなく、ゲームの世界のなかだったなんて……」


 唐突な事実発表にプルミエは、言葉を失った。

そして、泣いた。

なぜだか知らないが、涙が出た。


「あたしは、救えもしない……この世界を救うために、転移させられただけなの……?無駄な時間を浪費しただけっていうの……?」


「あたしが小説家志望だってのを活かしてこの世界を救うんじゃなかったの……? どうして………」


 それは答えてくれなかった。

無慈悲なる機械音声は、苦しむプルミエに何も答えなかった。

ただ目の前のバイザーのモニターに、自身のヒットポイントバーとマジックポイントバー、そして能力一覧とまさにゲームの画面のようなユーザーインターフェイスが開かれている。

これではVRMMOとあんまり変わらないことにプルミエは気づいたが、自分ではどうすることも出来ないために今は諦めるしか無かった。


―――――あなたは、この世界にとっての抜け穴。バグによって生まれた特別なプルミエ・エール。この世界を救うまでは、消滅なんてさせないわ。


 どこかの誰かが独り言のように呟いた。

年相応に老けた姿をした老婆。

ひとつの羽根ペンを手に持ちながら、机に向かいなにか書いている。

その姿もまた、プルミエに…いいや、狭山千夜にそっくりだった。

名前:狭山千夜

新たな名前:プルミエ・エール

2つ名:創造者(リビルド)

基礎能力:真言ノ刻(リフィクション)


強み:知識さえあれば、地の文(えいしょう)を使用して創造・改ざんが可能。

弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。


応用能力:華癒ノ陣(ブロッサムキュア)


強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。


弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。

既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。

また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。


???:自動文体(マリオネット・シュブリ)

説明:未知の力。デメリット・足枷として身についた。

詳細な能力は不明で、ただ何者かに操られているかのような感覚が襲う。


仲間:ヨリィー・ディメンション

仲間の愛称:よーちゃん


ヨリィーの能力:物語添削(リバーストーリー)


強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。


弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。

相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。

サポート特化なのに添削元に力を与えれない。


仲間:アルヒェ・ハイリヒ


役職:幻想の方舟/騎士団長


能力:騎士ノ傲慢(ナインツプライドニア)


強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。


弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。


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