第33物語 世界の抜け穴 前編
遠出する。以前のプルミエでは考えもしないことだろう。
若干引きこもり気味で、働き先すら探すのをやめてたあの頃に比べれば、変わってしまったなと自分でも考える。
「例え収穫がなくても、探索する価値はあると信じて……」
プルミエは自国を出て、今回の異変を直々に調査する。
徒歩で向かうにはちょうどいい距離に、小高い山がありそこでは山菜がよく採れる。
この山から調査しようと現地に向かうべく、歩みを進めている。
「はぁ、はぁ……着いた」
約30分ほど歩き到着したこの山で、探索を開始する。
元々体力に自信が無いのもあって、このくらいの距離でもすぐ息が上がってしまう。
しかし、アルヒェ達と鍛錬したことがきっかけで昔よりは体力が付いたのだろう、息を整えるために少し屈んで休憩しただけで上体を起こしまた歩き出す。
「しかし、調査するといっても宛も何も無く来ちゃったな……」
山に到着して少し歩いたところで、辺りを見渡してすぐ独り言を漏らした。
あくまで国民から聞いた言葉だけですぐ来てしまった故に、手がかりもしれたものである。
だが、すぐに異常は起きた。
「っ?! なっなに?! 」
キーンとけたたましく鳴り響く耳鳴りのような異音。
まるで金縛りにあったようなほど身動きひとつ取れない筋肉のこわばり。
空が、景色が全て電子的に、砂嵐のように乱れてるように見える。
明らかに異常事態と捉えることが出来るだろう。
「ぐ、うぅ……。この変な感覚、みんなが言ってることはこのことだったんだ」
身体の自由が効かず、自分の意思と関係なく足が動く。
その足がどこに向かっているのか、そもそも自分の足が動いていることすら認識していない。
そうして次に意思が戻り、体の自由が聞くようになったときには、目の前にイノシシのような図体で体より大きく長い。
それだけでなく、ずっしりと重厚感バッチリで肉厚なその体は、食料としても重宝される魔物が横たわっているのだ。
「どう、して? あたし、なんで勝手に……」
魔物を知らぬ間に倒していただけでなく、いつの間にか剣を抜いていた事にも驚いていた。
真言ノ刻を使った記憶も無いし、自身の応用能力すらも使った形跡は無い。
あまりに一瞬の出来事だった。
「この世界がおかしいのか、あたしがおかしいのか……。分からないよ……。一体何が起きてると言うの?」
まるで理解できない状況に、ただ困惑している。
どうして体は勝手に動くのか、どうして急に意識が無くなるのか。
有り得ることとしたら、やはりひとつ……
「あたしたちは、"操られている"。でも何にかは分からないし原因も不明。今から徹底的に探る……?!」
そう決心し、もう既に死んでいる魔物を歩いてよけ別の道に向かう。
しかし、その行く手を阻むように数10頭のオオカミのような獰猛な姿の魔物に道を塞がれている。
現在はもう夕方の18;00頃で、ギリギリ陽の光が確保出来ているだけで、けもの道らしき場所に気づいたら移動していたようだ。
そしてこの場所は、彼らの縄張りなのだろうか。
プルミエが対処しようとする前に一斉に襲いかかり、前足に付いた鋭い爪で切り裂かんと襲いかかってくる。
「あたしは、あぁあたしはっ……! こんな所で死にはしないっ!」
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長
能力:騎士ノ傲慢
強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。
弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。