第27物語 想定外の再会
「そういえば、レイヴェン諸国に兵器取られてるんだっけ……。別にいらないからいいけど、話は聞いてみようかな……」
レイヴェン諸国に入国してから10分ほど経過した。
現在街の中心地付近にいて、そろそろお城に近づこうとしている。
そんな時、どこからか見覚えのある人物が遠くから歩み寄ってくる。
「おやや? プルミエちゃんじゃないかぁ。元気そうでなによりだよ」
「あなたは……リピートさん……」
眼前に現れたのはなんと、以前アルヒェと手合わせしていたリピートだった。
だが、どこか特別な雰囲気を放っていた。
あの時には感じなかったものだった。
まるで眩しく、しかしどこか温かさを感じる独特のオーラを放っている。
服装もどことなく王族のような服を纏っている。
「いやねー? 待っててもぜーーんぜん来ないからどっかでへばってんじゃないのー? と思って様子を見に来たんだけど、ちゃんと生きてたのねえらいえらい」
「……あんまりあたしをバカにしないで欲しいなリピートさん。それで、その服装はどういうことなの?」
「どうも何も、あたしがこのレイヴェン諸国の国王陛下だからこの服を着てるんだよ? あんまりこう言う宝石まみれの服は着たくないんだけどね……」
リピートの言う通り、確かにキラキラ輝く宝石がまあ大量にあしらわれていることが分かる。
王族らしい服といっても、下半身はミニスカートを二重に履いてるようなデザインで、上半身は黄色い少し大きめなリボンを胸付近に付けててフリルが沢山あしらわれた、なんとも国王陛下というにはいくつかツッコミが必要な服装である。
「えぇぇええ?!!」
まさかの事態にプルミエも驚いた。
自分の足で城まで来いって言ってた国王陛下の顔を拝んでやろうかと思ってたが、まさかリピートがレイヴェン諸国の国王陛下だとは思わなかったのだ。
創造者とは違う神様のような存在なのだろうか?と勝手に思ってただけにかなり予想の斜め上をいっている。
「驚くのも無理は無い。気持ちはわかるよ。世界の傍観者とか大層な呼ばれ方をしておいて自分で国ひとつ面倒見てるんだから」
「ともかく、お外で話すのも嫌でしょう? 城内にいらっしゃいな」
「えぇまぁ……」
プルミエはこの時理解した。
あぁ、リピートさんって気分屋なんだなぁと。
それとも、心配性なのだろうか??
―――――1時間前
「残基0075:レイヴェン諸国に到着したが、リピートの元にたどり着く前に大量のチンピラに絡まれてたらい回しにされた後刺殺」
「全く、男ってのは性欲の塊でしか動いていないのだろうか。ちっとは筋書き通りに動いて欲しいものだけど……」
リピートはその手にいつものまだら模様の本をもち、ページをめくり文を口にする。
まるでいつも通りだが、今回ばかりはリピートも呆れてしまっている。
そして、一通り口にしたあとで本を閉じるのだ。
「残基記録はあたしの残基物語と対となる能力……。とはいえ、そろそろ面白いエンドを迎えてくれてもいいじゃない。どうして話が進めば進むほど過激になっていくのか。やっぱりプルミエ、あなたは異質ね……」
本を本棚へともどし、己の玉座へと座る。
今は異境の空間ではなく、下界に値する場所にいる。
まるで大統領室のような部屋であり、気が引き締まりそうな独特な雰囲気がある。
「でもそろそろハッピーエンドも見てみたいな……」
リピートは密かに呟いた。まるでバットエンドしか見て来なかったような言い方だ。
そうして、プルミエが来るのをひたすら待っていた。
―――そして現在
「ここが、我がレイヴェン諸国の城内にしてあたしのお部屋」
あれから少し話をして、城内まで結局2人して歩いていってリピートの玉座まで来たのだった。
「なんというか、まるでアメリカの大統領と話に来たみたい……」
「そんな国ほど立派じゃない。でも、ありがとう」
「……それで? 伝達書の記載によれば契約のこととか色々聞きたいことがあるらしいけど……」
玉座に足を揃えて座ったかと思うと、突然真剣な眼差しを向けて話してくる。
「っとと、とりあえず近くのソファーでも腰掛けな」
うっかりしてたーと言いたげに頭を軽くかく。
「あっはい……」
リピートに言われた場所に向かうと、たしかにそこには立派なソファーがおいてあった。
自国に置いてあるものよりは少なくとも高そうである。
「お話というのは、そちらの書類に書いてある通りではあるけど……ヴァラルフ王国として機能していたころの我が国とかわしてた契約の詳細と、あなたが良ければだけど……関係修復して貿易とか再会出来たらいいなーなんて」
「なるほど。とりあえずまずは契約の話をするね。長ったらしい説明は眠気を誘うだけだから端的に分かりやすく言うと……」
―――貴国は我が国に一切の干渉をすることを拒否する。
「と言ったところかな……。理由なんてものは特にない。ただあの国王がまあ大のロリコンでねぇ……。時々あたしにも手を出そうとしてくる愚か者だったので、近寄るな! って警鐘をならしたってわけ」
「聞いてみたらなんともアホくさい話でしょ?」
「……一国の主がそんな……。まぁその事はわかった」
「で、後者については……。プルミエが国王陛下になり、街も名前も一新して、果ては仲間を連れてくることなくあたしと対話をしている。あなたの事は観察対象にしているのもあるから、少なくともそっちから喧嘩売ってこない限りは友好的に接するつもり。もう既に貿易や交易などの手筈は済ませてある」
「! よかった……」
リピートの対応を聞いてひとつ安堵するプルミエ。
しかし、こんなにスムーズに話が進んでいいのだろうか?
「ただし、1つ条件はある。あたしと手合わせしなさい。それと事前に言っておくけど、あたしは創造者ではないということだけは伝えておくね」
「てっ手合わせ……」
プルミエは先程の安堵が吹き飛ぶ勢いで一気に戦慄した。
あの時アルヒェと戦ってた時は、アルヒェも戦闘力があり機転が効いたから勝てたようなもの。
では自分はどうなのか?アルヒェの時でさえ手を抜いていたように感じるくらい余力を隠しているとんでもない存在。
そんな相手に果たして勝てるのだろうか。
そう思うとプルミエは手が震えて仕方がなかった。
「怖がることは無いよ。間違っても殺すことはしないし痛みつけることもしない。ただ、前任のヴァラルフ王国国王陛下には個人的な恨みがあるので、それの憂さ晴らしをさせてくれってだけ」
「……わかった。受けますよ」
リピートは、過去に何度も何度も色目使われ自分の体を好きなだけ弄られ触られた記憶がある。
それもこれもあのヴァラルフ王国の国王陛下がしたこと……そう思っている。
プルミエよりは幼く見える容姿だからこそなのだろうか?自分と近いからか不思議と親近感が湧く。
そう思ってるうちにプルミエは、剣を抜いていた。
「さぁおいでプルミエちゃん。あたしもちょっと遊んであげるよ」
ふふっとやや不気味に微笑みながらも……いや、どこか不敵な笑みのように見えるその顔をチラつかせながら、この狭い場所で2人はバトルを繰り広げるのだ。
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長
能力:騎士ノ傲慢
強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。
弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。