第26物語 そこに秩序はあるのか
「おいみろよ! 地味な女がこっち向かってきてるぜ! アイツなら食べても文句言わんだろう? へへへ」
「お前は地味っ子程度で童貞を捨てるのか?? もっと上物にしとけよ……」
レイヴェン諸国へ歩みを進めるプルミエ。
だが、その入口付近に近づいた時男二人のそんなハレンチな会話が聞こえてくる。
明らかにプルミエ自身の話をしていることには本人も気づいている。
「(ほんとにここ国? これでどうして頭で勝ったなんて……)」
他国の長を多少軽蔑しながらも、入口で見える程度には中を見渡しておく。
辺りは血まみれで、酔いつぶれてるものもいれば、他人から金を巻き上げ逃げるもの、果ては女を襲い今にも服をやぶこうとする男などなど明らかに治安が崩壊している。
その雰囲気から既に察してはいたことだが、建物自体もかなり古びていて、屋根はトタン屋根で壁は土壁らしい。
「……あんまり長居はしたくないな……」
どう見ても一国のスラム街のような場所から入ってる気がしないでもないが、これが正門らしい……。
その証拠に、入口近くには受付のような場所がある。
「おやおや? お嬢さんレイヴェン諸国に何用で?
もしかしてお金に困って売春でも……? でしたらうってつけの場所が……」
「断じて違いますっ!! あたしはホープアイ王国の国王です!! レイヴェン諸国の長と話すためにここにひとりで来ると伝達書を出したはずですが」
受付の男があまりに嫌な勘違いをしてきたため、つい動揺して口を荒らげてしまった。
男はびっくりし怯むが言葉を続ける。
「あぁ、元ヴァラルフ王国の……確かに伝達書は届いておりますしその話を聞きましたよ。失礼を……。それでですね、王はこう仰っておりました」
「"ひとりで我が元に無事に逃げずにたどり着いたなら話を聞いてやる"といっておりました。故に出迎えなどはごさいません。ご覧の通りですが、我が国は秩序という概念が存在しません……引き返すなら今ですよ?」
「………大丈夫です。この程度で引き返すようならここまで来てませんから」
「そうですか……。じゃあせめてご無事を祈りますね」
どこか期待を全くしてなさそうな冷ややかな目でこちらを見てくる。
これだけ非力な見た目してりゃ当たり前かもしれない。
「では……」
受付の男に軽く一礼をしながらその入口の線を超える。
するとどうだろうか、先程ハレンチな会話をしていた男ふたり組の片割れの方がプルミエに絡んでくる。
容姿といえばまさに世紀末と言った具合に肩当はトゲトゲで、頭はオレンジのモヒカンでサングラスを付けててトゲトゲのベルトにダメージジーンズの半ズボンとまあやりたい放題である。
おあつらえ向きにこちらが女と分かってるからか、まるでこの場でおっぱじめてもいいんだぜと言いたげに社会の窓も解放しきっている。
「なぁ女。あんた国王らしいじゃん? それならさ、俺に抱かれて立派な王子を産んでみねーか??金は弾むぜ??」
「さっきの話を聞いてたのね……。目の前から消えないなら、最悪何をするかわからないよ?」
プルミエは怒りというよりもう半ば呆れ気味な対応をとる。
さっき受付の男と相手した時は敬語だったが、今はいつもの話し方である。
まあ今は軽蔑の眼差しだけ相手に向けるのだが。
「おうそうかよやってみろよ国王陛下とやら。殺せるもんならな!!」
挑発と勘違いして乗せられたのか、チンピラの如くプルミエの元へ拳が向かってくる。
「"プルミエの元に近寄る拳は、見えない壁に阻まれる"」
――――真言ノ刻
こんなことでぺー君の残りインクを使いたくないからぺー君は使ってないが、その地の文のとおり、見えない壁に阻まれ、男のパンチがまるで届かない。
「?!なっ殴れもしないし蹴れもしない。のっ能力者?!」
「……あなたに教えるまでもない。聞こえなかったの? 早くどいて欲しいの。割と急いでるのに」
さっきはまだ優しい方だったが、あまりにしつこいのでさすがにイラッときたようだ。
少し語気を強くして警告する。
「ひっ……わっわかったよ……」
プルミエの言葉に恐怖を感じたのか、その場から退いた。
正確には言葉と言うより語気の力だろうか?こればかりは能力では解決しにくいものだ。
「この国から色々話を聞くはずだったのに……。このままじゃ先が思いやられるなぁ……。早くたどり着かなきゃなのに……」
先程使った力を解除しておくと同時に、その歩みを確実に進める。
正直早く進むだけなら空を飛ぶか地上をものすごく早く走ればいいだけだが、他国の景観を崩す可能性があるのと、無闇に能力を行使しては未だ分からない能力使用時のデメリットが恐ろしくて仕方ない。
これだけ強い能力なのだ、代償があるはず……。
国を復興するだけの力はあるようだがら実はデメリットなんてないのでは?とすら思っている。
「それにしても、この世界は色々な要素が混ざってるなあ。申し訳程度だけど魔法はあるし剣もあるし機械もあるし……中世の要素ってどこにあるんだろう」
なんでこんなにも色々混ざってるんだ?この世界とものすごく疑問に思うことだらけだが、創造者のみんなの個性でこうなったと考えたらある意味自然なのだろうか……?と思うことにしてプルミエは思考放棄した。
「この国もこの国で、一体どういう思考をしてたらこんなおぞましい世紀末の舞台になるのやら……。作家の個性だから否定はしないけど……」
あくまで個性は否定しないと言う考えだけは独り言ながら口にしつつ、辺りを改めて見渡す。
耳に入るは銃声は悲鳴、視界に入るは血や人が倒れてること……鼻に入るはあの時の広場で臭ったような腐敗臭のみではなく、排泄物の匂いまでしてくる。
おかげで吐き気を催したが我慢した。
こんな雰囲気なのに、城だけはいかにも中世ですよーと良いだけなほどわかりやすい贅沢な城がたっていた。
「だぁもう、目移りしすぎだってこの国。これじゃ読者も読み疲れちゃうよ……」
まだ城には着いてないものの、視界にデカデカと入り込むその城は、とても目立つ。
まだ遠いはずなのに距離感が狂いそうになる程に……。
「もうすこし、だと思うから頑張って歩かなきゃ……」
少しでも楽をしたいという思考を何とか払いつつ、痛くなってきた足にむち打ち無理やり歩く。
果たしてたどり着くのだろうか?
―――"だいぶ無理してるねぇ……。可愛いし面白い。また会える時が楽しみだよ。
名前:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長
能力:騎士ノ傲慢
強み:自強化+武器変異系異能力。状況に応じて様々な形態に移行できる自強化装甲と、それに対応する為の武器変異を同時に行うだけあって、様々な状況に対して臨機応変に対応出来る万能性に優れている。
弱み:単純な能力相手には強いが、複雑な能力相手には無力で、死を超越することは不可能なため、死に直結する事象に対しては耐性をつけることは出来ない。