第20物語 王の最後
ヴァラルフ王国の国王陛下は倒されることなく、プルミエの真言ノ刻により鍵穴を壊され、しかも地中に埋められるというあっけない倒され方をした。
その事にすぐ気づいた国王陛下は……
「ワシの応用能力を利用して攻撃してくるとは……。解除して脱出すればいいだけじゃが、今解除してしまうと土に埋もれる……。潔く諦めるかの」
抗うことは出来るが、下手に足掻くとその分悲惨な最後を迎えることを理解したからか、もはや何もしないと決めたようだ。
地中から抜け出す為のものを創造するだとか、そもそも地中へ持ち上げるだとかいろいろ考えたが……自身の応用能力監獄の鳥は、発動者が死ぬまで抜け出すことは出来ないまさに監獄地帯。
侵入も容易ではないのだが、それゆえ南京錠が破壊されれば真言ノ刻で直すのもほぼ不可能といえる。
発動者本人ですら鍵の構造を知らないからだ。
「能力無効化できるものでもいないかぎりここから出ることは出来ない……。ワシの最後が餓死とは……、いいやワシは国王じゃ! 諦めてなるものか!」
能力を解除せずに、自身の能力を破ろうとしているのか、見えない斬撃を何度も放つ。
「……自分で生み出した能力に苦しめられるなんて、これが運命というやつなんかの……」
「じゃが、若い子に未来を託すのも悪くは無いかもしれんの。なぁリピートよ、お前もきっとそうおもっとるじゃろ? ワシはお前にも敗れた弱い王じゃ、自分のした過ちを償うのにこんな最後を迎えるだなんて……ある意味お前の言う通りだったのかもしれないな」
――――なにをいってるのぉ? あんさんの犯した罪はこの程度じゃないよぉ?
国王陛下の脳内に女性の声が響いた。
それはリピートのものだった。
しかし、どこを見渡してもリピートの姿はない。
「リピートぉぉ!! ワシは、ワシは! 民が苦しんだのと同じ目にあえということなのか! リピート!!」
―――さぁどうだかねぇー。死ぬとこになったらわかるよ。
すると声が急に消えた。まるで今まで聞いてたそれが幻覚だったかのように周りには何も無いさっき見たばかりの光景だった。
結界型鉄格子に守られたこの空間は少し異様だが、罪を償うだけならぴったりなのかもしれない。
「死ぬことになったらわかる……。死んでから分かるということかの? まぁ良いどちらでも……」
国王を討ち取った?とは言えない状況だが、プルミエ達が国王陛下を倒してから月日が少し経つまでの間に、国王陛下は栄養失調及び空腹により餓死と確認された。
土木作業をしていたドワーフが土の中からみつけたのだという。
「あれから半年か……。とりあえず広場は綺麗にしたし、街並みもまだ更地だけど……少なくとも悪臭や血などは消せたけど……まだやることはあるや」
「種族だけ新たに顕現れさせ、それを利用してコツコツ再生するとは…… 思いつかなかったわプルミエ」
あの後、プルミエはねながら今後のことを考えた。
どう復興したものかと試行錯誤を脳内でしていた。
で、結果は小規模な村のような状態からスタートしたのだ。
隣国からの信頼を取り戻すなんてことは、今はおそらく不可能だろうことは何となく予想している。
でも、いずれレイヴェン諸国に向けて旅立つことにしようとプルミエは心に決めた。
「アルヒェ、どうする? あたし、近いうちにレイヴェン諸国に行くつもりなんだけど……ついてくる?」
「もちろんですよ! 仲間としてついてくって決めたんですから」
「なら、今やってる作業をぱぱっと済ませていこか!」
今やってる仕事、それは広場の整備だった。
国の顔とも言える場所を優先しているのだ。
ずっと血だらけでは見栄えも何もいいもんじゃないとおもったからだろう。
建材を持ち合わせては近くの建物の立て直し及び補強をしている。
いつ仕事が終わるかは分からないが、これなら近いうちに終わるだろうと睨んでいるのだ。
「全く、計画的なのか無計画なのか……ウチも分からないわ……」
相も変わらずヨリィーはプルミエに振り回され続けているが、ヨリィー自体は呆れているだけで徐々に慣れているようだ。
このまま順調に国の復興を進め、次の目的に向けて動き出すまではそう遠くないだろう。
:狭山千夜
新たな名前:プルミエ・エール
2つ名:創造者
基礎能力:真言ノ刻
強み:知識さえあれば、地の文を使用して創造・改ざんが可能。
弱み:使用者の知識が壊滅的だと意味をなさない。仮に知識があっても世界の都合のいいように"添削"される。
応用能力:華癒ノ陣
強み:死亡以外ならあらゆる生命をジャスミンの花の香りで治癒出来てしまう。例え部位が欠損しようと、痛みを伴ってもその痛みすら忘れ失った部位が再生する。
弱み:半径300m圏内でしか効果がなく、怪我人を範囲内に連れていくかその範囲内で怪我をするかしないと発動しない。
既にこの世から魂がはなれた死体は蘇生できない。
また、範囲内なら死んでさえ居なければ敵味方問わないため利敵行為として利用されやすい。
仲間:ヨリィー・ディメンション
仲間の愛称:よーちゃん
ヨリィーの能力:物語添削
強み:対象の添削可能範囲を見つけ、それを添削し自分の力として創造・改善出来る。
弱み:サポート特化故に、攻撃用として能力を行使するのは実質不可能。
相手の方が技量を上回れば添削は行えないため能力は使えない。
サポート特化なのに添削元に力を与えれない。
仲間:アルヒェ・ハイリヒ
役職:幻想の方舟/騎士団長