第2物語 創造者<リビルド>、死地にて立つ
"選ばれし創造者は、まず世界を自分色に染める"
現実世界から異世界へ転移することになってどれほど経過しただろうか。
流れゆく時間が分からないくらい、長い時が経過したような気がする。
千夜は今、よく分からない真っ暗な空間の中を移動している。
この選択でよかったのだろうかと思うが、少なくとも出来損ないのままでいるよりは自分の力が行かせる場所に行けたらいい……ただ単純な思いが千夜を動かしたのかもしれない。
「真っ暗闇……ここ、は……うっ」
ここが異世界なのだろうか?そう思ったが、突然周りが明るくなりモニターのようなものが展開されていく。
そこには何かの映像が流れていることがわかる。
それは、千夜の記憶だった。
過去の楽しかった思い出が綺麗にひとつずつ頭の中から抜けていくような感覚がする。
「なんだか知らないけど辛い。でも、大事なことを忘れていってる気がする」
なんて思ってると、目の前に1人の女性が現れる。自分と同じ服装で、あちこちが斬られていたり弾丸のようなものでもあたったのか、風穴が空いていて血だらけの満身創痍状態である。
「もっ、もう1人のあたし……?! だっ大丈夫?! 」
「……て、げて……あ……げて……」
「喋らないでっ! 手当するから……」
「………きぼ、う……託す………から」
もう1人の自分を支えて抱きしめつつ、手当しようとするがその手を止められ事切れてしまう。
「初めて抱くのがもう1人のあたしなんて……。え? 初めて? そんなはずは……」
もう冷たくなってしまって動かなくなったもう1人の千夜は、果てる前に光の塊のようなものを差し出していった。
「これが、あなたの思いなら……なんだか全く分からないけれど使うよ」
光を体内に取り込むように、優しく抱きしめる。
すると体に特に問題が出ることも無くすんなり入る。
それが終われば意識を失ってしまう。
"ようこそ幻想世界<ファンタズム・ワールド>へ。あなたで6億6666万6666人目の創造者様ね。"
次に目が覚めたとき、そこには地獄が広がっていた。
周りどこを見渡しても炎、炎、炎!。
山の中に転移させられたようで、周りには木々があるがその木や草が燃えている。
「なに……ここ。これじゃまるで戦争じゃない! 」
そう思うのも無理ないくらい、炎だけではなく武器も落ちていた。
その武器も拳銃などのものでは無く、剣や盾などである。
"ええそうね、まるでバカみたいな世界よね。"
頭の中で響く声で少し我にかえる。
異様な雰囲気に脳内からの声、普通ならまともな精神はなくなってもおかしくないのだが…。
「ここが異世界っ! 脳内から声が聞こえてきて明らかに普通じゃないこの場所こそ異世界っ! 小説のネタになるっ! 」
"はぁ……? そっそれは良かったわね創造者様?"
「創造者それは何? なんだかあたしが神様みたいな……」
"それを教えてあげたいけど、まずはウチを脳内から出してくれない?"
「だすってどうやって……?!そうか、もしかしたら……"脳内の女性は、手のひらサイズ程の小さな妖精で背中に昆虫の虫のような羽を2枚生やしたあたしそっくりの女性!"」
まるで地の文のような言葉を口にする。
するとどうだろう、目の前に自分と似た少女が現れた。
しかし、千夜の言うような子ではなく…小学校3年生くらいの女児で背中に2枚の天使の翼のようなものを生やしているどこか生意気そうな子供だ。
「……どうやら説明しなくても出せたらしいわね。さて、創造者のことだけど、さっきあんたが言ったように言わばこの世界にとっての神様のようなもの」
「その神様達はみな、基本能力として真言ノ刻を使えるわ。さっきあんたがやってみてウチを出したようなものね」
「真言ノ刻……まさに神の持つ力のようなものなのかな? 」
「まあそうね、神の力と言えばまさにその通り。でも、万物を作れる訳では無い。あんたの知識が無いものは作れないわ」
周りの状況と聞かされる話で頭が混乱になる前に、興奮が抑えられなそうな程にソワソワしている。
「知識……さいっこうじゃん! 制約があるのもらしいっ! 」
「………これまた随分と変な子を連れてきたわねあの方……」
「変じゃないもん! ね、ぺー君! 」
頭の羽根ペンをひとつ取りだして話しかけている。
「ぺー君? その羽根ペンの名前……??ねっネーミングセンス……」
「へへ、可愛いでしょ? そういえば、あたしは狭山千夜って言うんだけど貴女は? 」
「ウチの名前は創造者様が決めるのよ。とはいえ、あんたの場合はろくな名前には……」
"よーちゃん!"
そう呼ばれた少女は片手を顔を覆うようにして隠して呆れている。
「そんな気がしたわよ。その名前は却下ね」
「むうっ! 決めていいって言うから決めたのに……。仕方ないなぁ、ヨリィー・ディメンションでどうかな……?」
「次元……まぁいいわ間違ってないし……よーちゃんも愛称ということにしてあげるわ」
「わーい! よろしくねよーちゃん! 」
「……よろしく、千夜」
ヨリィーは少し気疲れしそうになりつつも、挨拶だけでも丁寧にする。
仲間が増え、ヨリィーと千夜の2人での立て直しが始まる。