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0円自販機

作者: 朝原シュン

 出張先は田舎だった。その弊害で、店という店は無く、殆ど遠くの隣町まで歩くか、ろくに物が揃っていないおばあさんがやっている店で買うしか無かった。

 だが、驚く物を3日前に発見した。自販機だ。俺は酒は飲めないから、いつもこの田舎ではおばあさんの店にある少し渋いお茶か、ぶどうジュースしか無かった。他のものは遠くの隣町まで行くしか、手に入れる方法はなかった。

 その自販機は、コーラもコーヒーもリンゴジュースもあった。早速リンゴジュースを買おうとすると、不思議なものに気付いた。飲み物の値段が、全て0円だった。俺は何となく、コーラを押してみた。普通にコーラが落ちてきた。そして、自販機のスロットが回って、外れた。飲んでみたら、普通にコーラの味がした。僕は不思議なこともあるもんだな、と思ってリンゴジュースを押して、持って帰った。スロットはまた外れた。

 次の日、会社の先輩に、この事を話すと笑いながらこう言った。

「あれは、チャリティー自販機だな。」

「チャリティー自販機?。なんですか、それ。」

「ほら、昔のテレビとかでさ、他の人が代わりに払ってくれているから、自分のご飯のお金はかからない、みたいなのがあっただろ。」

「あー、ありましたね。そういう物。」

「アレの自販機バージョンだな。」

「え?。それ潰れませんか?。」

「それに関しては大丈夫だぞ。あれ一本買うと、スロットが回るんだ。それが全部揃ったら、前払った時から、今まで、全部自分が負担することになる。」

「それチャリティーの欠片もないじゃないですか。ただのギャンブル自販機ですよ。」

「考えてみろ?。ほぼ自販機のもう一本当たる確率とほぼ同じだぞ?。当たるわけ無いだろ。」

「あー、確かにそうですね。」

「まあ、俺は計80900円払ってるけどな。」

「めっちゃ負けてるじゃないですか。」

「ま、5000円くらい払わないといけないかなー。今くらいだったら。」

「あ、前払ったんですね。」

「じゃあ、行ってみるか。」

「え?。会社はどうするんですか。」

「うちはホワイトだから大丈夫だ。じゃあ、皆頼んだぞ。」

そう皆に行った。そのうち一人の女性社員が、

「ちょっと先輩、どこに行くんですか。」

と言ってきた。僕は自販機と言った。

「ほどほどにして、すぐに戻ってきてくださいね。」

そう言って、椅子に座った。有名な所のようだった。

 「さてさて、やってみようか。」

先輩は早速コーヒーのボタンを押した。スロットは外れ、先輩はガッツポーズした。余程当たってたんだな、そう思って、僕は三ツ矢サイダーのボタンを押した。スロットが当たってしまった。

「これは、7980円だな。」

「え?そんな高いんですか?。」

「そもそも当たることが稀だからな。ほら、7980って。」

「本当ですね。え~、払えるけども。最悪っすね。」

「ま、ここから10本ほどは無料だから好きに引いとけ。」

「あ~、まあ、そうですね。」

そう言って、僕は適当に12本ほどジュースとかのボタンを押して、会社に帰った。

 次の日、会社帰りの僕は、何となく自販機に立ち寄った。夕日の中、買おうとするとおばあさんが一人いた。

「のう、お前さん。今から3本ほどは無料だぞ。」

そう言って、僕に押すように言ってきた。僕は何となく、リンゴジュースを3本買った。すると、全て、外れてしまった。

「あの、おばあさん。なんで無料ってわかったんですか?。」

「5時間ほど前に、当たったものがいたからじゃ。」

おばあさんの話によると、赤ちゃんを背負った女性が飲料水を買ったときに、当たったそうだった。ただ、問題はここからだった。その女性は4670円払うことになったのだが、持っていなかった。おばあさんはここで居ておくから、家から持ってくるように言ったらしい。だが、家にもないと言ってきた女性に対して、おばあさんは、警察に自首するように言ったそうだ。そして、その女性は自首をして逮捕されたとも言った。

「貴方が代わりに払ってあげたら良かったんじゃないですか?。」

恐る恐る僕は尋ねた。

「その思いはあった。じゃが、規約違反なんじゃ。」

そう言って、自販機の右隣を指さした。そこにはない様々な規約が書かれていた。

「これ、チャリティーでもなんでもないじゃないですか。」

僕はそう言った。おばあさんはこう言った。

「この自販機は、チャリティーではない。誰かが代理で先払いしているだけじゃ。実際に警官がその後お茶を買って、払っていた。」

この自販機は、ただ見知らぬ誰かがお金を入れて、そのお金で僕らが飲み物を買っているだけだった。

「そんな事、当たり前のことじゃろう。もしも世界一の運を持っている人が現れたら赤字間違いなしじゃろう。ただタイミングを合わせることだけが重要だったんじゃ。」

そう言って、おばあさんはお茶を買って、自販機の斜向かいの家に入っていった。僕は、リンゴジュースを持ったまま、家に帰った。5分ほど歩いた所で、先輩の声が聞こえてきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] とても考えさせられるお話でした。 誰かが得をして良い思いをしているとき、誰かが損をしているかもしれない。 私たちが何気なく過ごしていられるのも、顔も知らない誰かが重い負担を背負ってくれている…
[一言] 逆転の発想ですね。誰かが当たれば(この作品の場合ははずれれば)、誰かがそのツケを払う。 自販機を題材にしたストーリーが新鮮でした。 ギャンブル、全然やらないので、この自販機で買う自信がないで…
[良い点] 面白いルールの自販機でした。 払わなかったらどうなるんだろう?という疑問に対する答えも明示されておりスッキリしました。
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