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王の誕生

「心配しましたわ……!」


 私は城に帰るなりメアリとシェアリに抱き着かれてそう言われる。


 今日あったことを簡単に伝える。

 本来は儀式で決めるべきことを勝手にしてしまった。


「それであれば問題はありませんわ」


 乙女は神の意思を実行しただけ。王を選ぶという約束は果たされた。

 喜ぶ国民こそいれど、怒る国民はいませんわ。


 そう二人が言う。


「それに、あの若き竜が王になるのであればこの明らかに見下していると言わんばかりの乙女の待遇も改善されるでしょうし」


 待遇についてはこの国の基準が分からないので私には何も口出しが出来ない。


「乙女に誰も挨拶に来ない。歓迎のパーティも開かれない。

挙句の果てに、この部屋とそれに面した庭にしか出れない。

食事も部屋でというのは貴賓を招く態度ではありませんわ!!」


 それにドレスもお仕着せばかりで乙女のために作られたものは何も無い。

 シェアリが悔しそうに言う。


 専属のメイドだって、本当はもっと何人もついていなければおかしいのです。


「でも、私は二人と過ごせて嬉しかったわ」


 私がそう言うと「「勿体ないお言葉です」」と二人の声がそろう。


 それからぐちゃぐちゃになってしまった髪の毛をシェアリに整えてもらう。


「プロポーズは必ずやり直しさせますから」


 もっと美しくしている時にちゃんと言ってもらいましょうね。シェアリに言われて恥ずかしくなって俯いてしまった。


◆ ◆ ◆


 翌朝一番に、面会したいと白き竜が伝えてきた。

 そうメアリに言われて、「会います」と私は答えた。


 テーブルに座って紅茶を飲む姿はどこか楽しそうだ。


「君は私を王に選ぶと思っていた」


 ニッコリと笑いながら白き竜が言った。


「私もそう思っていました」


 神の言葉を聞く王。それが私の国の形に近い気がしたから。


「でも、いいんじゃないかな。君が王妃になる未来も」


 結局は誰が王になったとしても約束は果たされる。


「それに私が一番大切に思うのは伴侶だからなあ」


 「その人を愛する人生の方がいい訳さわかるかい!!」と白き竜が言う。


「神官として王家に使える気持ちは無いのですか?」


 私が聞くと白き竜は「まあ、それが穏当だろうね」と言った。

 

「本当に誰でもよかったのですか?」


 もう決めてしまったのだ。今更撤回はできないのに私は思わず聞いてしまう。

 一国の王がそんな簡単に決まってしまっていいのだろうか。


「……本当は、彼が君の命を最初に救った瞬間すべてが決まったって言ったら信じるかい?」


 言われた言葉はにわかに信じられない。


「昔は、魔法使いが王を選んだらしいよ」


 それは私の国に伝わる言い伝えだった。

 あと、彼はきっといい王になるよ。


 そう言って白き竜は笑った。

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